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閑話

駄文、蛇足、補足にもならない文章の羅列。

そう思ってもらって構わない。まさしくその通りなのだから、それで正解だ。

これは僕が、もうわかっていることをだらだらと喋るだけの話。

どうにもならないことを、どうでもいいと語るだけの話。

どこにでもあって、どこにもない場所。

ここに無理やり名前を付けるとしたら、そんなところだろうね。

どうせすぐ忘れてしまうだろうから、特に名乗ったりはしないよ、カルクトゥス=アルクェス=アインクルス=エバーエンド。

なるほど、確かに継ぎ接ぎだらけの名前だ。それを隠すことすらしていない、本当に継いで接いだだけの名前だね。

真名は捨てたのか、失ったのか、置いてきたのか、どれにしても、もう取り戻す気は無いのだろうけどね?


僕が誰か、なんて、君が誰なのか以上にどうでも良いことだと思うよ、君にとっては。

それでも名乗れというのなら、そうだな、『傍観者』とでも呼んでくれていい。なんなら『観客』でも構わない。どちらかといえば後者が近いかもしれないね。

これは僕の独り言というか、日記というか、自己満足というか、とにかく、君には何の関係もない出来事だ。だから、記憶に残ることはないし、何の干渉もできない。今は君が僕の『観客』であると、そういってもいいかもしれないね。


これが小説であれば読み飛ばしても良いような文章だし、映画であれば休憩にトイレに立ってもいい。見たい人だけ見ればいい、聞きたい人だけ聞けばいいような話だよ、まあ、ここには君しかいないし、厳密には君もいないのだけれど。


君は特異点という言葉を知っているかい?ああ、もちろん知っているだろうね、とは言ってもこの表現の仕方には些か間違いがあることも否めないのだけど、簡単に、簡潔に、適当に当てはめて表現すると、特異点ということになる。

特異点、つまりは君のような代替の効かない存在のことを指す。

君の代わりは居ない。どの世界を探しても、君と同じ『価値』を内包した存在はいない。人は必ず代替が効くようにできているんだ、実はね。どんな人物でも、どんな生き物でも、どんな神だろうと悪魔だろうと、必ず同じ価値を持った存在がどこかの世界にはいるものなんだ。

必ずというと語弊があるね、君のような特異点、『世界が意図していないイレギュラー』とでも言ったほうが本当は良いのかもしれないが、そういう存在以外には、必ず代替が存在する。


僕が認識している特異点は君を含めてもそうは居ない、そう簡単に現れるものでは無いからね。しかし、だからこそ興味が尽きない。世界が意図しなかった存在は、世界が意図した存在たちにどう影響を与え、どう輪廻を歪めるのか、楽しみでしょうがないんだ。僕のような裏側の存在は、認識の外に居るせいで全く現実世界に干渉できなくてね。例外は存在するけど、僕は『傍観者』の席しか与えられていない、まったく、退屈だったよ、ああ、君たち特異点が現れるまではね。


何周したか分からない、幾つもの世界が始まって、終わる。その繰り返しをひたすら眺めてきた。開闢と終焉、白と黒がただ繰り返すのをずっと、ずっと。

世界はループしている。それはもう当たり前の事だった。生き物は根底でそれを理解しているし、誰もが根源的には知っていて当然の事だった。

そういうシステムを構築したんだ。全ての生き物を、神を、悪魔、世界を創造した最初の存在『ゼロ』はね。

しかしそのシステムは、狂った。

幾度も幾度も幾度もループし続けた世界は、システムは摩耗した。

わずかな綻びができ始めた。そうした綻びがやがて小さな裂け目となり、そこから生まれたのが君たち『特異点』だ。


特異点が生まれれば、もう世界は同じ結果で終わらない。

始まりは同じでも、終わりは違ってくる。

それから先は無限に結果が創造されることになる。

楽しそうだろう?無限に紡がれる物語を無限に観られるんだ、『傍観者』として存在できて良かったと思える瞬間だったよ。


しかし、ループから脱却したと思われた世界に問題が起き始めた。

システムの創造者であり、管理者でもある最初の存在『ゼロ』の一部が目覚め、狂った世界をリセットしようと動き出したんだ。

世界をあるべき姿に戻す。

やっていることは正しいのだろうけど、僕のような『傍観者』にとっても、数多の世界に暮らす生き物にとっても、歓迎できることではないよね?

その影響はもう既に幾つもの世界に波及し始めているけど、一度管理者の手を離れた世界は、創造者であってもそれを認めることは無い。

親の手を離れた子供が、親を疎ましく思うのと同じことさ。そしてそれが自分の存在を脅かす存在であるのならば尚更だよね。


今世界は、創造者に対して戦いを挑もうとしている。

それは誰も気づいていないけれど、誰もが気づいていることだ。

それをそれと認識していなくてお、自ずとそうなっていく、そういうものだ。

決して優勢とはいえない。何せ相手は創造者だ、その力は言葉で表せるようなものではないからね。

そんな絶対的な力に抗うためのカードの一つは、『進化』だ。

ループから逃れ、一人で歩き出した世界が新たに獲得した『力』

つまり君たち『特異点』だよ、無論それだけではないけれどね。


だからといって、僕達は君達に何も望んではいない。

僕たちはただ『傍観』し、『観測』するだけだ。『干渉』することはできない、さっきも言ったけど、例外は存在するけれどね。

だからまあ、この話に意味なんてないんだ。僕の独り言に意味なんて無い。

どうせ君達は当たり前のように創造者と相対する事になる。

そしてそれが運命であるかのように失い、獲得し、進化し続けていく。

それでいい、それでいいんだ。それだけで僕たちは構わない。

どうなろうと構わない、世界が、君達が、僕達がどうなろうと構わない。



ただそこに、物語があれば、それでいい。



例えば、一つの世界を救えなかった男が、一人の少女を救うための物語、



とかね。

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