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砂塵舞う荒野での出会い

ィィンッ!



それはまるで、空気を射抜くような音だった。


貫かれた大気が音と共に爆散し、周囲に土埃を伴った圧の壁が駆けた。

赤茶けた大地の表面が捲れながら砕け、衝撃が風となり粉塵を空へと巻き上げる。


それを、私は渦中から眺めていた。

荒れ狂う砂塵の中、ほのかに光る壁のようなものが周囲を覆っている。

私の隣には、背の高い黒衣の青年が一人。


身体が分解されるほどの衝撃から私を守ってくれたらしい青年は、服と同じ、黒いマフラーで隠れた口から平坦な調子で言葉を紡ぐ。


「対軍用高出力インパルスレーザーカノン、か。運用コストが高額すぎて『軍』では採用されなかったが、廃棄処分となる前に裏組織に回収された、と。なるほど、使い捨てならばコストがいくらかかろうと問題は無いな。 」


「 そ、そそそそんなもので狙われたの今ぁっ⁉︎」


「相手も本気みたいだな。こちらの戦力を見誤っていない、良い指揮官がいるんだろう。この距離で直撃したのは運だろうな、牽制のつもりだったんだろうが。」


「っていうか、そんな物で狙われたのに何で生きてるの私ーっ⁉︎ 」


「あの程度の威力ならこの『六神封壁』で何とでもなる、とはいえ、本家と違って回数制限はあるからな、物量で来られると厄介だ、さっさと移動しよう。 」


何を言っているのこの人…

っていうか何が起こってるの今…。

ここは何処で、この人は誰で、私は何故こんなところにいるのか…

…何もわからない。記憶がやけに断片的だ。

へたり込む私に、彼は手を差し伸べる。


「戦場に転移してくるとは不運だったな。だが安心してくれ、これも何かの縁かもしれん、俺が責任を持って君を送り届けよう。」


そう言って彼は真っ直ぐ私の瞳を見つめた。

真っ黒な、宝石のような瞳だった。


「 お、送り届けるって、どこへ⁉︎」


「そうだな…まあ特に考えてはいなかった。とにかく安全な場所だ。 」


「そこはちゃんと考えてからカッコつけてよー⁉︎ 」


「ともあれ移動だ。次のカードを切る、つかまっていろ。 」


「移動って…?」


さっきのすごいのを防いだこの壁みたいなの…他にも何か出せるの?


「空を飛ぶ…とか?」


「いや?走る。」


「なんでそこだけ普通なのーっ⁉︎ 」


「普通ではないと思うが。まあいい、こういう場合空中を移動した方が的になりやすいんだ、目立つしな。じゃあ行くぞ、『レストゥムフェレスの靴』、良いカードだ。」


黒衣の青年は上着の胸ポケットから抜きはなったカードを空高く放り投げる。カードは光り輝き、回転しながら光の粒子を振りまいて弾けた。


瞬間、青年が蒼い光に包まれる。


「このカードに封じられた力は『レストゥムフェレスの靴』 異世界の神具だ。時間という概念をスキップするように飛び越えられる。干渉されない長距離移動法としては最上だ。対象に触れていれば一緒に移動できる。さあ、手を取れ。」


「意味わかんないけど…ちゃんと後で説明してもらうから…!」


私は青年の手を握る。それは大きくて、温かくて、少しだけ、ほんの少しだけ安心した。


「もちろんだ、じゃあ行くぞ。」


安心したその次の瞬間、目の前の景色があり得ない速度で切り替わった。

それは例えるなら、長いフィルムを断片的に切り取って、切り取ったフィルムだけを並べたような、場面転換の連続。



「後で、と言ってたが、とりあえず軽く伝えておこう。」


景色は目まぐるしく切り替わり、知覚を狂わせていく中、不思議と青年の声はハッキリと聞こえていた。


「 俺の名前はカルクトゥス=アルクェス=アインクルス=エバーエンド。」


とりあえず名前長くない!?


叫んだつもりだったが、声にならなかった。


「まあ、カルクでいい。どうせ継ぎ接ぎだらけの名前だ。持っている力は、異世界の力を召喚、使役できるこのカードデッキ『偽典オリジンアーカイバ』 、そしてこの眼、『偽眼レコードシーカー』。この世界の全ての物に関する知識を、『俺が認識した物』のみ無条件で得ることができる。それと、俺はこの世界の人間じゃない。数日前にこの世界に転移してきた。君よりは少しだけ先輩というわけだ。」


え、いや、なんか色々意味わかんないよー!


またしてもそれは声にならなかった。


「そろそろ力が切れる頃だ。恐らく急激な時間跳躍の反動がくる。君は気絶するだろうが、後は俺に任せておけ。 」


ちょっと待ってーっ⁉︎


直後、視覚を遥かに超越した光の奔流と、世界が急に高速回転したかのような衝撃が脳を走り抜け、



名乗ることもできないまま私の意識は暗闇へと墜ちていった。




●対軍用高出力インパルスレーザーカノン

正確には対『軍』用。

当時最高の科学力をもって製造されたが、あまりにもエネルギー効率が悪かった為すぐに生産中止になった兵器。

威力は申し分無かったが、『軍』が有する『フィールド』に対しては無力であり、結果的に対『群』用兵器となった感は否めない。



●レストゥムフェレスの靴

異世界の神が有する神具。

時間という概念をすっ飛ばして存在できるという能力を持つ。

通常、人が60分間そこに存在するのに対し、例えば1分毎、1秒間しかその場に存在していないという状態を作り出す。

その状態で移動することで、高速で瞬間移動しているような感じになる。

ちなみに、これをずっと使用することで自らの存在時間を節約しながら絶対時間を一気に進める事ができる。ある意味呪いのアイテムでもあるのかもしれない。

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