表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とこまとそう  作者: マサキ
四  階段の踊り場
8/16

四  階段の踊り場 2


「なにが起きてるの? もしかして学校の七不思議? 今何個目?」

 動く青春の像、寒い玄関、理科室の女の子、踊り場の生徒、歌うポスター。五つ。やだ、まだあと二つもあるってこと?


「木津くん、うちの学校ってそんなに古かったっけ? 創立何年?」

「たしか六十年は過ぎてるはず。でももしかしたら学校というより、土地に関係があるのかもしれない」

 厳しい表情のまま言う。いつのまにか木津くんのほうが、手が冷たくなってる。向かい合ったまま、立ち尽くす。

 木津くんは窓の外のグラウンドを見やった。夜のなかだと、まるで大きな穴のような錯覚がした。


砂嶺しゃれ町の由来は知ってる?」

「入学式のときに聞いた話なら。仙人が魔法で山を消してくれたって言うの」

「……魔法じゃなくて、仙術だからな。その仙人は、もとは数の千人なんだ。人足にんそくを千人集めて、山の土を運ばせた。ここには、その人足たちが埋められてるんだって。だから、町の名前の〝しゃれ〟は〝髑髏頭しゃれこうべ〟の意味でもあるんだよ」


 学校の下に、千人の死体。  


「この学校、呪われてるの?」

「まあ今の様子だと、な」

 うわあ。背中のなかに、足がいっぱいある虫を放り込まれた気分。

「……知らないほうが良かった。木津くんはそんな話、どこで聞いたの?」

「ザッケンだから。土壌とかも調べるんだ」

「まさか、変な反応があったりとか」

「そこまで本格的じゃない。だいいち、この話自体、ものすごく昔のことだし」

 そんな昔の呪いがかかってるかもしれないなんて。お腹が痛くなってきた。くぅぅぅ、と……あれ?


「お腹すいてるのか?」

「晩ご飯は食べたよ? でもやっぱり動きまわると、ちょっと小腹が減るというかっ」

 恥ずかしい。こんなときに鳴るなんて。怖くてたまらないのに、わたしのお腹は気楽そうにしている。

「ちょっと待って。俺、いいもの持ってる」

 木津くんはポケットからしわくちゃの紙包みを取り出した。開くと、なにかの残骸が姿をあらわした。

「今日の喰い放題のクッキー、美味しかったからこっそり包んだんだけど……」

 少し決まり悪そうに言う。あれだけ走りまわったりしたんだから、クッキーも無事じゃないよね。

「食べてもいい?」

「ん? ああ、どうぞ」

 比較的おおきめのかたまりをつまんだ。卵とバターの風味と、ナッツの香ばしさが口のなかに広がった。

「わ、おいしい」

「だろ? ここの喰い放題、デザートがすごい凝ってるんだよ。プリンとかも、ちょっとふつうじゃ食べられない味でさ。チョコフォンデュもあって、マシュマロつけて食べたらこれがまたうまいんだ」

 木津くんもクッキーを口にほうりこんで嬉しそうにした。

「木津くん、甘いの好きなの?」

「甘いのも辛いのも、どっちも。ああ、俺もお腹減ってきた。学校出たらラーメン食べにいかないか?」

「ラーメン? こんな遅くに、お店やってるとこあるの?」

「深夜から朝方くらいまでしか開いてないところがあるんだよ。正門出て、ちょっとわき道にそれたところにある店だから、知ってるやつは少ないんだけどね。でもうまいんだよ。煮干ダシの醤油ラーメンでさ。ネギをたっぷり入れて、半熟煮卵を割って細麺とからめながら食べるんだ」

 聞いてたら、つばが出てきた。

「行く。食べたい」

「そうと決まれば、さっさと出よう。それでラーメンだ」


 お腹がすこしふくれたおかげで元気も出た。もう一度手をつなぎなおす。

 なんだかんだ言って、もうすぐコの字の曲がり角。廊下をまっすぐ行って、四階への階段をのぼれば、外はすぐそこ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ