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彼岸花

秋彼岸ホラー企画のために初ホラー作品を書きました。是非読んでください

 季節は9月、彼岸の時期である。

 大分過ごしやすくなってきており、空席が目立つ朝の教室に心地よい風を運んでくる

「ねぇ、卓巳、起きてよ」

 明るい女の子の声に俺は机の上から顔を上げる。

「ん? なんだ?」

 俺は気楽に返事をした。

 それと言うのも、声を掛けてきたのは、黒髪のシャギーカットが似合う幼馴染のうちの一人、結城加代ゆうきかよだからである。

「もう彼岸の時期だなあ、って思って」

「なんだ、そんなことかよ」

「そんなことって、彼岸花綺麗だよ!」

 必死に反論する加代

「まあまあ、そんな喧嘩するなよ二人とも、そういえば、彼岸花と言えば、こんな噂があるぜ」

 隣にいた、眼鏡をかけて、髪をワックスで整えており、顔立ちの整った男、こいつも俺の幼馴染で、名前は柿田真尋かきたまひろである。

 ともあれ、噂とは何のことだろうか?

「卓巳は知らないだろうけど、何でも俺達の高校の後ろの山の頂上に一本だけ不自然なほど真っ赤な彼岸花が咲いているんだってさ」

「ふーん、彼岸花ねぇ……」

 俺が彼岸花に着いて考えていると。

「あれ? 彼岸花って群生するものじゃないの?」

 加代が真尋に問いかけてくる。

「いや、その彼岸花は幸運の彼岸花らしくて、その彼岸花の前でお祈りすると、何でも、好きな願いが何でも一つ叶うらしい」

 その言葉に俺はどきりとした。

 何でもひとつ? 

「へぇ、そんなこと知っているなんて、やっぱり真尋はすごいなぁ!」

 加代は向日葵のような笑顔で真尋に笑う。

 真尋は照れたように笑っていた。

 俺はそんな二人に漂う空気に耐えきれず

「まあ、そんな彼岸花、本当にあるわけないのにね」

「まあ、噂だしな」

 真尋は答えた。

 ちょうどそのとき先生が来て、少ないクラスに呼びかけるのであった。


「じゃあね、卓巳」

 放課後の帰り道で、加代と、真尋とはここで道が分かれるのでお別れだ。

「じゃあな」

俺は曲がり角を曲がった。

 ふと、明日の宿題を聞こうと来た道を折り返す。

「おーい、まひ……ろ」

 そこには、手を繋いで仲が良さそうな、真尋と加代の姿があった。

 俺に気付いた二人は慌てて手を離す。

「お、おう、卓巳、何か用か?」

 俺は認めたくなくて思わず学校の方へ走り出していた。

「おい、待て、卓巳」

 真尋の制止の声を聞かず、追ってきているかどうかも確かめず、学校の方へ走り出した。


 俺は学校まで来ていた。

 加代と真尋は……

 泣き出しそうだった。

 そこで俺はあの噂を思い出していた。

 何でも一つ願いが叶う。

 気が付くと、俺は裏山に駆け上っていた。


「あった、本当だったんだ」

 十分ほど登った先の頂上に、血のように赤い彼岸花がぽつん、と咲いていた。

 俺は躊躇った。願い事をして大丈夫なのだろうかと

 しかし、俺は手を合わせて叫んだ。

「結城佳代に俺に好意を抱かせてください」

 …………………………………………………

 何も起こった気配がない、あるのは吸い込まれように赤い彼岸花だけだ。

「何だ……嘘か……」

 俺はがっかりして下山した。

 学校の門の所に真尋が立っていた。

「あれ? 真尋? どうした?」

 すると、真尋は振り返り

「ん? お前誰だ?」

 と、言った。

「はっ? 俺だよ、原田卓巳だよ、何寝ぼけてるんだよ」

「そんなやつは知らないし、勝手に下の名前で呼ぶな、俺はあいつを待ってる……ん? 誰を待っていたんだっけ?」

 真尋は首を傾げていた。

 俺は呆然としていた。

「そもそもお前見たことないけどこの学校の生徒か? もしくは新入生とか?」

 真尋の顔は本気の顔だった。

 俺は怖くなり、家に帰った。

 家に入ろうとすると、家には鍵が掛かっていてはいれなかった。

 そのとき、俺の母親が出てきた。

「あら? どちら様?」

 母さんまで俺をからかってるのか。

 しかし俺は表札の所を見て、自分の名前が無いことに気付いた。

 俺はその場に立ち尽くしていた。

 どういうことだ、俺の存在が消えた。

 でも、どうして、まさか、彼岸花のせいか? というか、それ以外考えられなかった。

「あの……何もないなら出て行ってもらえますか?」

 と、迷惑そうな顔で言う母さん。

 俺は逃げ出した。


 俺は公園のベンチで佇んでいた。

 何で、こうなったんだろう。

 でも、重要なことに気が付く。

 願いが叶ったんなら加代は!

 俺は走り出していた。

 加代の家に着き、呼び鈴を鳴らす。

「はぁい」

 加代がドアから顔を覗かして出てきた。

「加代……」

「!?」

「好きだ! 付き合ってくれ!」

 頬を赤く染めると

「私もよ、大好きよ」

 俺は涙が出そうになった。

 良かった、加代だけは……

「でも、あなたの名前は?」

 加代が好きなのは俺であって俺ではなかった。


ホラーは難しいですね、オチが付けづらくて困りました

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― 新着の感想 ―
[一言] 秋らしいモチーフですね。 冒頭では、のどかな学校生活と放課後が思い浮かびました。 そこからの急転も良かったと思います。 急転後がもう少し詳しかったら良かったのにと思いました。 秋彼岸ホラー…
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