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6話

少年は、たくさん、楽しみました。


少年のために、ぶたとおおかみが小さな小屋を作ってくれました。


うさぎはたぬきと一緒に森や川のことを教えてくれました。


きつねといぬは少年と一緒におどりを教えてくれました。


くまと果物を取りに行き、はちに追いかけられたりもしました。


少年にとってはすべてが新しく、初めてのことばかりです。


そんな楽しい時間を過ごしていた、そんなある時。


少年はふと、気づいてしまいました。


「僕、お家に帰らなきゃ。お母さんが心配してる」


近くにいた犬にぽつりとこぼしました。


いぬは不思議そうにたずねます。


「ふむ、楽しいところはつまらなくなったかい?」


「ううん。ここはとっても楽しいよ」


「じゃあ、ずっとここにいればいいじゃないか」


いぬは得意げにそう言いますが、少年は悲しそうに答えました。


「でも、お母さんが…」


少年がそう口にした時でした。


「ここにいればいいだろう!」


突然、いぬが大きく叫びます。


びっくりした少年の目に初めて見る怖いいぬがうつりました。


「楽しいところにいれば良いじゃないか! 外なんてつまらないところだろう」


「代わり映えもしなけりゃ、楽しい事なんてなぁんにもない」


「そのくせ、大事なことはどんどん忘れていってそのことに気づきもしない」


「何でそんなところに帰ろうとするんだ」


「ひつようないだろう。そんな場所」


そう言い切ると、今度はひどく優しい顔でこう言います。


「お前は、ずっと、ここにいるんだ」


いぬはそう、言いました。


大きな騒ぎに、あたりがしんと静まりかえりました。


他の動物も、少年の言葉に耳を傾けています。


そんな中、少年はぽつりと言葉をはき出しました。


「…いやだ」


いぬはさらに怖い顔になって少年をにらみます。


「何だと?」


負けじと、少年もにらみ返し、


「いやだ。ぼくは、お母さんのところに帰るんだ」




そう言った直後のことでした。


いつでも明るかったこの場所が、一瞬にして薄暗くなり、ごうっとした風があたりにふきあれました。


驚いた少年はあたりを見回します。


たくさんの動物たちはもうまわりにはいません。


果物や飲み物があったところは風で吹き飛ばされて、めちゃくちゃになっています。


恐ろしくなった少年にいぬの声が聞こえます。


「帰るだと。これほど言って帰るというのか!?」


「ならば帰れば良い、人間。だが、ただで帰れると思うなよ」


「お前の大事なモノを食ろうてやる」


「あとで後悔するがいい」


「お前は、ここには二度と来れんわ!!」


「わはははははは」といぬは笑い出しました。


少年は背中にその声を聞きながら、


逃げるように来た道を駆け戻ります。


来るときに見えた楽しげな道も今の少年にはただ恐ろしいだけです。


脇目もふらず、逃げるように走って、走りました。


「わはははははは」といぬの声がいつまでも少年のすぐ後ろから聞こえていました。

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