3話
白い霧の中、少年が近づいていくとれんがの門がはっきりと見えてきます。
小さいながらも、まるでお話の中にあるようなりっぱな門でした。
不思議に思いながら少年が門に近づいていくと、
小さなひそひそ声が聞こえてきました。
「やや、門のまえに小さな子供が近づいてくるぞ」
「本当だ。どうやってこんなところに来たのだろう」
小さな声でしたが、少年にはよく聞こえました。
門の向こう側に二つのかげが見えました。
長い耳を持つかげと、小さな耳にしっぽを持ったかげでした。
どうやらその二人が話し合っているようです。
少年が中をのぞき込むようにすると、かげは白い霧の中に消えていきました。
少年が門の前から少し離れると、また声が聞こえてきます。
「どうしようか、うさぎどん」
「どうするも、放っておけば良いさ。僕たちが開けないと門は開かないのだから」
「それもそうだ」
そう言ったきり、声は聞こえなくなりました。
門をのぞき込んだり、たたいてみてもなんの反応もありません。
少年は勇気を出して呼びかけました。
「あの、お犬さんを見なかった?」
「白くてとっても綺麗なお犬さんを追いかけて来たんだけど、いなくなっちゃって」
「どこに行ったのか知らない?」
少しすると、また小さな声が聞こえてきました。
「おい、うさぎどん。小さな子供に話しかけられたぞ」
「まさか、僕たち動物だよ。聞こえるわけないさ」
「それもそうだ」
そう言ってまた静かになりました。
少年はまた呼びかけます。
「聞こえてるよ」「ぼく、動物と話せるんだ」
そう言うと、今度はすぐに声が聞こえてきます。
「おい、うさぎどん。やっぱり話しかけられてるぞ」
「そうだね。それに白い犬ってあいつのことなんじゃないかな」
「…あいつって、少し前に通っていった犬かい、うさぎどん」
「そうだよ。確か…そうだ。今日だった。外のお客さんを呼ぶ日」
そうして、ごそごそという音がしたかと思うと、ぎいっとした音とともに
小さな門がゆっくりと開いていきました。
開いた門を少年がくぐると、びっくりする姿が目に飛び込んできました。
白い霧の中から、少年と同じくらいの大きさのたぬきとうさぎが、
立ったままおじぎをしていたからです。
「ようこそ、人間のお客さん」
「あなたのいう犬は、この門からまっすぐ先へ進んでいったよ」
「まっすぐ進んでいくんだぞ」
「まっすぐ行けば追いつくのさ、道なりにまっすぐさ」
それだけ言うと2匹はまっすぐ駆けていき、すぐに白い霧で見えなくなりました。
おどろいたままの少年は、はっとなって追いかけていきました。
そうして、誰もいなくなった門はまた見えなくなりました。




