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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

地下牢の二人

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/11

「よう、おとなりさん。オメーなにやらかしたんだ?」


うっすらと湿ってひやりとした石材の床。すえた匂いと淀んで息苦しい空気。

ここは重犯罪者とされる者達が放り込まれる王城内の地下牢。

今いるのはこの二人だけである。


「何も」


新しく隣牢に入ってきた男に問いかけたものの、返事は期待していなかったが、

『新人』は一言だが答えてきた。


「何も、ってンな訳ねぇだろ。知ってっか?

 ここはお貴族様襲撃とか無差別連続殺人とか、

 そんなのやらかしたヤツしか入れねえんだぞ?」


『古株』の言う通り、今までの「おとなりさん」はそうした者ばかりだった。

古株と言ってもここに収監されて二ヶ月と少し。隣人は数度入れ替わっている。

ちなみにこの男は、貴族令嬢に対する複数の強姦事件で捕縛されていた。


家と被害者の名誉に関わるため、まだ犯行の全貌を特定出来ておらず、

刑罰が止められている状態である。多分処刑は免れないだろうが。


「知っている。まだ何もやっていない」


「ハッ、とぼけるんならいいけどよ。

 オレの場合はたまたま襲った女どもがお貴族様でさ。まあ全員じゃねぇが。

 最後の最後にしくじって憲兵サマに見つかっちまった。

 あともう一人で記念すべき十人目だったのによ」


「ひどいやつだな」


「ケッ、ここに入ってるオメーがそう言うのかよ?

 似たようなんなんだろ?オメーがやらかしたことも」


「まだ何もやっていない」


「あー、イヤだねぇ、ウソツキは。

 憲兵サンたちは許さねぇんだぞ、そういうの」


『古株』は自分の発言に受けたのか、ひゃっひゃっひゃっ、と笑う。

興が乗ったのか『古株』はひとり犯罪自慢を続ける。


「女で楽しんだ後は、金目のモン奪ってうまいもん飲み食いしたり、

 娼館で『おかわり』したりしてたけどよ。目立ちすぎちまったな。

 髪飾りとか指輪とかじゃ、売っ払うと簡単にアシが付くんだな。

 いや、勉強になったわ」


「…貴族のご令嬢は、そのうちどんな相手が何人いたんだ」


唐突に『新人』が聞いた。


「ん?興味ねぇのかと思ってたぞ。

 確か…それっぽい美人のは三人か?栗毛二人に赤毛のが一人いたな。

 あとは多分野暮ったかったから平民とかじゃねぇか?」


「そうか。それを聞けば充分だ」


隣の牢の扉が開いた。『新人』は牢から出て『古株』の牢の前に立つ。

なるほど確かに『新人』は犯罪者には見えない。容姿も服装も。


鉄柵の間から突き入れた手が『古株』の首を掴んだ。

『古株』はとっさの事で避けることもできず掴まれたままもがくが、

とてつもない腕力でどうやっても離れない。


「三日前、ある赤毛の貴族令嬢が心を閉ざしたまま自ら命を絶った。

 お忍びで街に出ていたが、見るに堪えぬ姿で路地裏で発見された。

 婚約者から送られた指輪が奪われていた。

 年の離れた私の妹だ。


 自己紹介がまだだったな。私は死刑執行官をやっている。

 お前の証言は有効。妹の件もお前の犯行だとたった今確定した。

 処分は私に一任されている。処刑方法もな。


 刑を執行する。すぐ楽になれると思うな。

 まず恨み辛みも言えぬように喉を潰す。その後股間を叩き潰す。

 腕を折り、目を潰し、汚らわしい両手の指を一本一本引きちぎる。

 後悔しながら死んでいけ」


『古株』の喉が鈍い音を立てて潰された。

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