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ようこそ異世界転移課へ  作者: 聖音ユニア


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飲みニケーション

「ありがとうございます。エンドールさん」

「いや、こちらこそ身内が申し訳ありませんでした。怪我はありませんか、皆さん」


 他の人たちのことも気にしてくれながらぐるっと見渡すエンドールさんに、皆視線を泳がせて合わないように徹していた。

 どう足掻いても、彼は転移者だ。転移者が暴れれば、止めることができるのは転移者しかいない。機嫌を損なえない恐怖が、そこには薄くだが確かにあった。


「後輩が失礼しました。セナ・カロ―シアです。改めてお礼を」

「ああ、いや。ここには丁度用事があって。ですよね、コルネさん」


 彼の後ろにいたのは、黒髪ロングのメガネの女性。目の鋭さはカロ―シアさんに匹敵しそうなものだが、やる気がなさそうなカロ―シアさんと違って覇気がある。黒い制服は何物にも染まらない強い意志が見て取れる。

 彼女が着ているのは法を司るバランスの制服で、肩には天秤の刺繍が施されていた。

 何度か見たことがある模様には三本線が入っており、彼女が高官であることを意味していた。俺も、いずれはこのギルドの紋様である盾に剣の紋様に線を入れたいものだ。


「レンヤ・スカイ。会うのは二度目ですね」


 俺は努めて笑顔で一礼した。

 彼女の名前はアイネ・コルネ。バランスの高官で、俺をこの田舎に幽閉した張本人。


「あれから何か思い出したことはありますか?」

「全てお話ししたはずです。本日はどういったご用件で?」

「異世界転移課に用事がありまして。ついでにあなたの素行も確認しに来ましたが……その分では当分戻せそうにありませんね」

「それはどうも」

「では、何か思い出したら教えてください。ダンジョン唯一の生き残りさん」


 嫌味がないつもりなのだろうが、俺に突き刺さる言葉を放り投げて、彼女は奥の課長の元へ向かった。

 課長は見たこともない位綺麗に身なりを整えてぺこぺこ頭を下げていた。「今日もお綺麗ですね」は完全に何かのハラスメント規定に抵触しそうだな。

 それにしても、バランスの偉い人と、円卓会議の偉い人が何の用でこんなところに。


「おい、新人」

「え、なんすか、カロ―シア先輩」

「今日の仕事終わり、時間あるか? 今日くらい残業なしで帰らしてくれるだろうさ」

「あるっすけど、え、本当になんすか、めっちゃ怖いんですけど」

「黙れ。先輩には従え」


 絶対に何らかのハラスメント規定に抵触しそうな脅しを受けつつ、俺たちは残りの時間の仕事を片付けて、終業した瞬間にカウンターを受付終了させた。一応、夜勤はある。と言うのも、クエストは24時間受注することが可能だからだ。クエストの内容によっては何度も報告や探検が必要だったりするし。


「上がりだ。行くぞ、後輩」

「だから、どこ行くか教えて下さいよ」


 仕事終わりの一服の中、俺が黙って横で待ってると、臭いが移るから風上に行けと手ではけられた。本当に何の時間か分からない。俺も煙草を始めるべきかもしれないな。

 一本吸い終わった後、満足そうな表情でまたちょいちょいと指で呼ばれて、向かった先は近場の飲み屋だった。

 既に店内は仕事終わりの住民でごった返していてまさに喧噪の渦中だった。店員さんも樽ジョッキ片手に食器の乗ったお盆を魔法で浮かせて大忙しだ。

 店内は風魔法を循環させるため羽のついた緑色の宝石が天井でくるくる回っていた。炎魔法の灯も伴ってどこか楽しくなる雰囲気だ。


「予約のカロ―シアです」

「はい、カロ―シア様……2名様ですね、ええとコースのお料理のご予約でよろしかったですかね」

「あー、じゃあそれで」


 本当は違ったんだろうけど面倒くさかったんだろうな。先輩らしい。

 奥の席に案内されると、席について早々に煙草に火が付いた。本当に何のために殺気一服したんだ。あと、炎魔法の使い方が上手い。指先で僅かに発動させるのは暦年の何かを感じる。


「すみません、最初ドリンクは何致しましょうっ」

「ビール、ジョッキ。お前は」

「お茶で」

「かっしこまりましたー」

「え、ここって……」

「奢りだ。好きなもん食え」

「あざっす。いただきます!」


 田舎に飛ばされて以来、そこそこ質素な生活だから人の金で食う飯のありがたみは無限大だ。良い先輩だな。気難しいし、一か月前からずっと不機嫌だし、教え方雑だけど。


「仕事は慣れたか?」

「ああまあ、やってることは変わらないっすからね。人が多いのに人手が足りないところくらいですかね」

「はい、お飲み物お持ちしましたー。それとお通しと、最初の一品ですー、ごゆっくりどうぞー」


 魚料理が得意な店らしく、刺身の盛り合わせが届いて心がウキウキする。

 新鮮だし、調理も上手い。見てこれ脂が乗ってて光ってる。


「うまいです先輩。ヤバいっす。前の職場だとこういうとこ連れて行ってくれる人いなかったんで」

「あ? 同期とかは」

「俺、出世のことしか考えてなくて、同期も先輩も部下もいなかったっすよ。休みは特権で帝立図書館に行って勉強したりとか。まだ特権残ってるんで最近も行ってます」

「……なんでそんなに上に行きたい」

「……ダンジョンを攻略できるのって、転移者だけじゃないっすか。だから俺、転移者にもっといい生活してほしいなって」


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