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ペンドラゴンの騎士  作者: 内海郁


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4/5

0章ー4

 今度示されたのは、ロンドンの大通りに店を構える魔書修繕店。

 底で働く人々の胸には騎士の証が輝いている。


「修繕騎士団。

 ここはロンドンの中心街に修繕店を出す有名な専門店だ。

 知っている者も多いだろう。

 彼等は主に戦いや経年劣化で破損した魔書など、使えない状態となった魔書を、使える状態まで再度仕立て上げる作業だ。

 こちらにも多岐にわたる技法があり、その都度魔書にあった技法で修繕を行う。

 ひとたび間違えれば魔書本来の力を損ないかねない、重要な仕事だ」


 そして次。投影されたのは、製図を行なう騎士や部品の形成切断を行なう騎士たち。

 彼らが作り上げるのは、騎士団の使う武器や、特殊車両、技師など。

 顔を汚しながら研磨の工程を行なう騎士の表情は、汗ばみながらも実に充実しているようだった。


「街行く魔術道具や重機械。

 これらを一手に引き受けるのは機械騎士団。

 新技術の研究意外にも、英国の交通網管理にも一役買っている。

 専業革命以降引き継がれる最先端の技術と、常に上書きされ続ける常識。

 挑戦する胃知る者は、是非向かうといいよ。

 伝統の歓迎が待っていル筈だ――というのも」


 グレースはくたりと表情を緩めると、困ったように言う。


「万年人手不足なんだ。皆さんご存じ、例の革命から久しく、科学技術の成長は著しい。

 その上、他国との技術競争もある。

 今技術が無くとも構わない。

 どんな者が訪れても、彼等は受け入れ役目を与えてくれる筈だ。

 勿論、科学系の大学卒業者も大歓迎だろう」


 続いて映し出されたのは、遺跡調査を行なう騎士たち。

 そして隣には同時に、無数のメモの中考え込む騎士の姿があった。

 生徒たちは一目でその騎士団の名を理解する。

 そう、『探索騎士団』。


「この騎士団には二つの側面が存在する。

 古き導きに基づいた冒険譚の創造者、そして砂漠で砂粒を探すような地道な調査記録を遺す者。

 だが両者の目指す場所は同じだ。

 『真実』それを見つけんとする者に、この騎士団は向いているだろう」


「はい」


「質問ですか? どうぞ」


 挙手をする生徒が1人。

 彼はMr.ホームズの本を抱えている。


「あに、シャーロック・ホームズもいるとお聞きしましたが」


 シャーロック・ホームズ。その言葉に会場はざわめく。


「ああ、確かに彼らはMr.シャーロック・ホームズとの調査を行なうこともある。

 ああ、ご存じのない方のために説明すると」


 そう言って映し出されたのは、シャーロック・ホームズとその助手ワトスンの映像だった。

 途端に彼らの熱狂的ファンと思しき生徒たちから「おお!」と歓声が上がる。


「彼らはMr.ホームズ、Mr.ワトスン。ベーカー通りに住む、騎士団顧問探偵です。

 Mr.ワトスンはこちらの医療騎士団に所属する騎士でありますが、Mr.ホームズは騎士ではない。

 特例中の特例、一般人でありながら騎士団の調査に参加する彼らの活躍については、今回は割愛しましょう。

 詳しく知りたいと言う者はワトスン卿の著書を読むか、お近くの〈シャーロキアン〉に話を聞くといいですよ。

 私の知る限り本を読むよりも早かったりしますからね」


 瞬間、どっとざわめき始める講堂にグレースは二度軽く手を叩く。


「こらこら、次に行きますよ次に」


 コン、と杖を床に軽くつくと、新たな映像が浮かび上がる。

 『錬金術騎士団』、そして『魔術騎士団』の活動する様子だった。

 必然的に飛び出す魔術の数々。

 先ほどまでざわめいていた生徒たちも、次から次へと繰り出される高度な魔術に好奇心のまなざしが向けられる。


「魔術、それは我々人類が手にした生来の技術。

 己の限界を超え、更なる高みを目指し人間の可能性を底上げする。

 例えば発動器官、獣の病、魔術の仕組みに。 

 人間に与えられた祝福を心より享受し、昇華させる者を求める。

 ならば錬金術は? 一帯魔術とはどんな違いがあるのか? 

 それは、英国ではこう定義されている。『真なる科学への接触』だ。

 この世界の限界という名の壁を越える意志ある者は、是非門を叩くといいでしょう」


 ちらりとグレースは手元のメモを見ると、後頭部を掻く。


「……というのが向こうから押しつけられた台詞なんだけど。

 両者とも『魔術文明・文化の向上』を理念としているが、魔術騎士団は人間の内部から、錬金術騎士団が外部環境からそれぞれアプローチを試みている、といったところでしょうか。

 何にせよ、人類の歴史を紐解く重要な研究です。

 そういったものに惹かれる貴方は、きっと素質があるでしょう」


 場面は移り変わり、簡素な事務室のような場所が浮かび上がる。

 先ほどの魔術や錬金術の演出に比べ、やや見劣りはする。

 だが投影された人々の表情は真剣そのものだ。


「力で守れぬ者もある。ある作家は言った『剣はペンより強し』と。

 この世には理想の数だけ規範がある。

 それを頭にたたき込み、草の中に隠された道を開く。

 紙とペンで戦う、勇敢な騎士です……ああ、彼らを敵に回すととても怖いですよ。

 なんせ、王国の全ての規律法律、はたまた裁判履歴まで熟知して居ますから。

 簡単に論破できるなどとは思ってはいけませんよ」


 その一言を最後に、一端光像の演出はとまり、講堂は静まり帰った。



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