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放課後のエンタングルメント  作者: 五五五 五
第三章 冬の果てに
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第127話 疾風怒濤

 瞼を閉じていた藤咲は知るよしもなかったが、朋子は藤咲の危機を目にして、金色の大金槌(ロングハンマー)に乗って文字どおり空を飛んできたのだ。

 彼女の武器にはロケットのように後部から魔力を噴射する能力があり、長い柄を操縦桿のように握ることで、短時間なら飛行すら可能だった。

 地表を覆い尽くす雪を蹴散らすように着地した朋子は、暴風のように金色の大金槌(ロングハンマー)を振り回して、藤咲を狙っていた落ち武者をまとめて粉砕してみせたのだ。


「旭人くん、大丈夫!?」


 朋子が名を呼ぶと、藤咲はよろめきながらも雪の上から身を起こした。


「すんません、先輩。俺、勝手についてきたのに足手まといで……」

「ううん、そんなことはないよ。君はじゅうぶん役に立ってる!」


 世辞ではない。彼がいなければ、その分の落ち武者が仲間の誰かに大きな負担をかけていただろう。

 太陽のような笑みで答えると、朋子は再び金色の大金槌(ロングハンマー)を手に周囲に鋭い視線を向けた。

 雪の下から、さらなる落ち武者が這い出そうとしている。

 奴らは単体ではさほど脅威にならないが、何しろ数が多い。もしこれが強敵と相対している仲間の元に雪崩れ込めば、厄介なことになるのは目に見えていた。


「しつこいなぁ、キミたち」


 ぼやくように口にするが、その顔には不敵な笑みが浮かんだままだ。


「しょうがない。わたしには役不足だけど、まとめて相手してあげるわ」


 朋子は金色の大金槌(ロングハンマー)を両手で構えると敵の群れの真っ只中に飛び込んだ。

 重量感のある武器を手にコマのように身体を回転させ、そこから生じた魔力の衝撃波で広範囲の敵をまとめて粉砕する。だが、武器の重さに振り回されている感じはない。その動きは無駄がなく正確無比だった。

 撃ち砕かれたマリスの破片が宙に舞い、アイテールに還元されるより早く、真っ白な雪の上に瓦礫のように積み上げられていく。まさしく疾風怒濤の戦いぶりだ。


「すげえ……」


 疲れ切った藤咲は、その声も弱々しかったが、それでも彼は剣を支えにして再び立ち上がった。

 やはりその動きは精彩を欠くが、無理に敵を倒そうとはせず、他の仲間の元へと向かおうとする敵を牽制し始めた。


「ナイスガッツだよ!」


 賞賛しつつ朋子はさらなる敵を薙ぎ倒していく。

 朋子には希美のような絶大な破壊力も、エイダのようなスピードとテクニックもないが、スタミナだけは仲間の誰にも引けを取らないと自負している。

 実際、これだけ戦い続けても、彼女はまだ、まったく息を切らせていなかった。

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