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放課後のエンタングルメント  作者: 五五五 五
第三章 冬の果てに
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第126話 エイダの戦い

 藤咲の窮地を見て取ったエイダは、彼の救援を朋子に任せて二体のセラフモドキをひとりで引きつけていた。

 だが、途中で一体が方向を転じて、壁際で戦う仲間の方へと向かい始めるのを見て、やむを得ず武器を手に馬から飛び降りた。

 後方から迫りつつあるセラフモドキが自分と(エクウス)のどちらを追いかけるかは賭けだったが、幸いにもそいつは(エクウス)を追って吹雪の壁の中へと消えていく。


(アレが戻ってくる前に一体だけでも倒さなければジリ貧です)


 覚悟を決めて雪の上を滑るように疾走すると、聖剣ブライトスターを抜き放ち、背中を向けた敵に斬りかかった。

 金属がこすれ合うような耳障りな音を響かせながら、背中の装甲に刃の痕を刻むが大したダメージになった様子はない。

 かつて師から聞かされた話では、真に最強の剣士は、硬度など無視していかなる存在をも斬り裂いたとの話だが、今のエイダには、とうてい真似のできることではない。

 それでもセラフモドキの背中から飛び出してきた銛のようなトゲの何本かは切り落とし、かわしきれない分は左手の金色の円盾(ラウンドシールド)で打ち払った。

 さすがは金色の武具(アースセーバー)のひとつだけあって、その防御性能は桁違いだ。傷一つ付かないのはもちろんのこと、衝撃を軽減する能力まであるらしく、セラフモドキのトゲをまとめて受け止めても質量差を無視して踏み留まることが可能だった。

 冷静に攻撃を捌きながら敵を観察したエイダは、一度切り落としたトゲが再生しないのを見て取ると、狙いを敵のトゲに切り替えて片っ端から切り落としていく。


(まずは丸坊主にしてやります)


 鞭のようにしなりながら変幻自在に襲い来る鋭いトゲは、左右はもちろん頭上からも仕掛けてくる。一歩間違えれば一瞬で串刺しにされそうだが、臆することなく間合いを詰めて、まとわりつくようにしながら剣を振るう。

 無数のトゲが迫り、それを無数の斬撃で迎撃する。確実に切り落とせるわけではないが、繰り返し打ち払う中で、トゲの数は確実に減少していく。短時間の間に凄まじい攻防が繰り返され、ついにセラフモドキが怯んだように後ろに傾いた。


(行ける!)


 確信とともに追い打ちをかけようとするエイダだが、その瞬間鋭い声が響いた。


「ダメ!」


 それが朱里の声だと理解する前に、エイダは反射的に後ろに跳んだ。

 視線の先、エイダが踏み込もうとしていた雪に覆われた大地から無数のトゲが飛び出している。


(こいつ、最初から狙っていた――!)


 背中が粟立つのを感じる。敵はエイダの注意を前方と上に引きつけておいて、足下から本命を叩き込むつもりだったのだ。ゆっくりと体勢を整えるセラフモドキを見据えて唇を噛む。

 朱里の警告がなければ、今頃エイダの身体は足下から飛び出したトゲで串刺しにされていただろう。

 ひとまず礼を口にしようと声の方向へと視線を向けるが、突っ走ってきた朱里はそのままスピードを緩めることなく、セラフモドキへと肉薄していく。


「ええ!?」


 慌ててエイダも前に出るが、当然ながらその時にはセラフモドキが、迎撃のトゲを朱里めがけて繰り出していた。

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