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第4話 梨花

森里もりさと 梨花りか14歳


梨花の楽しみは武術の時間だった。

足が速いので狼拳では有利だった。

しかし、体重が軽いのでどうして攻撃が弱い。

その点だけが悩みだった。


そんな悩みを抱えて裏庭を見ていると誰かが走る練習をしていた。

近づいて見てみると真弓様だった。

憧れの教師の一人だ。

真弓様といえば最近友人の一人が真弓様と会って急に元気になっていた。

梅花という娘だ。

真弓様に指導を受けたと言うのだ。

その言葉を思い出して私も出来たら指導してもらおうかと考えたのだ。

そのため、堂々と近づいていった。

するとそれに気づいた真弓。

練習を中断して話しかけ始めた。

「どうしたの」

「いえ、なんでもないです。真弓様の練習を見たくて」

いざ声を掛けられると自分の悩みを言うのが恥ずかしくなった。

「でも、これ狼拳の練習よ。あなたと同じでしょう」

「え、私のこと覚えているのですか」

「当然でしょう、梨花は狼拳の星なんだから」

梨花は顔を真っ赤にしている。

憧れの先生に名前まで覚えられていて星とまで言われたのだ。

「星だなんて、いいすぎですよ先生」

「でも、みんな期待してるわよ」

「そんな・・・」

「それで、なにか行き詰ってるわね。なに?」

いきなり核心に触れられてしまった。

「威力が弱い・・」

恥ずかしいから言えないのだ。

まして、別の道場の人だ。

「梨花、知ってる?基本が出来ないと奥義は教えないの」

「?どういう意味ですか」

「基本ができるまでは、同じことの繰り返しなの」

「ええ、それはわかってます」

「まだ梨花は14歳でしょう」

「はい」

「今は威力より形を覚えることが大事なの」

「でも威力がない」

「狼拳は気功武術なの」

「なんですか、それ」

「気を伴って本当の威力がでるの」

「気というのは」

「あなたにはまだ早いの」

「そうですか」

がっかりした表情でうなだれる。

「焦ること無いわよ」

「でも・・・」

そう言ってその場を離れる。

その時は完全に油断していた。

いつもそんな油断なんて絶対にしてない。

だから、雅雄様に抱きつかれたことのないことが自慢でもあった。

それなのに、抱きつかれるまで知らなかった。

思わず悲鳴をあげてしゃがみこんでしまった。


雅雄様はさすがに悪いと思って手を離して話しかけてきた。

「梨花ちゃんはなにを悩んでるのかな」

名前を呼ばれたことで驚いた。

雅雄様もしっていたのだ。

「いえ、わざの威力が弱いのでどうにかならないかと」

「ふーん、強くなりたいの」

「体重が軽いからなんとかならないかと」

「後悔しないかい?」

「しませんよ」

「そうかな」

それだけ言うと雅雄様は離れていった。

まるで武術など興味がないような感じだった。

梨花はそこをはなれいつもの練習道場に向かった。



道場で、いつものように練習をした。

相変わらずダミーの人形は小揺るぎもしない。

同じ狼拳を練習している娘が入ってきた。

その娘は速度は遅いが威力があるのだ。

いつも挑戦的で半分けんか腰だ。

ライバル意識がむき出しなのだ。

ついついこちらも敵意をだしてしまう。

話がいつのまにか実戦練習になってしまった。

言葉の上からの成り行きだった。

相手が早くても威力が無くては意味が無いといったからだ。

威力があっても当たらなかったら意味が無いといってしまった。

それなら実際にやってみましょうとなった。


正対して気を整えた。

いつもより気が入ったような。

相手がタオルを投げた。

それが地上に着いたら始まりだ。

いつもよりふわふわと落ちるタオル。

じれったく感じる。

地上に着いた。

攻撃を開始する。

まるで、相手が動いてないように感じる。

一気に詰め寄り威力は小さいが速さだけの拳を出す。

隙だらけなのでいたずら心に胸を叩こうとした。

さすがにまともには決まらない、かわそうとしたので目標が少しずれた。

胸の間に入ってしまったのだ。

胸先をつつくつもりだったので指先をつぼめていた。

それがまともに肋骨に入るのでは痛いからと思い、思わず指先に力を込めた。

それが覚えていた最後だった。

そのまま指先が彼女の中に刺さっていく。

これはなにと疑問に思った。

気づけば彼女は血まみれになって倒れていた。

抱き上げたが心臓を貫かれて生きているわけがなかった。

そこで初めて自分も悲鳴をあげたのだ。

これは夢だと思いたかった。

そして頭を抱えてしゃがみこんだ。



「おいおい、ちょっと抱きついただけで」

何を言われてるのかわからず周りを見渡した。

そこは、裏庭だった。

そして、そこに居たのは雅雄様だった。

悲鳴をあげたせいか真弓様までこちらに向かっている。

「どうしたの」

真弓様だ。

雅雄様はおろおろとしている。

「いえ、雅雄様に抱きつかれて驚いたので」

真弓様は雅雄様を睨みつけている。

「真弓、悪気はないんだ。あんまり隙だらけだったから・・・」

そう言ってこそこそと逃げ出した。

「大丈夫、驚いたでしょう」

そういって、優しく抱き起こしてくれた。

「ええ、大丈夫です。思わず夢を見ていたみたいで」

「夢?」

「同僚の女の子の胸を突きぬいた夢です」

「なんなのそれは」

「はい、技の威力が増して練習中に胸を突き抜けてしまった。夢ですよね」

真弓様は真剣な顔で笑わなかった。

「はっきり言うけど、あなたの夢、将来の現実かもしれないわよ」

「え、どういう意味ですか」

「あなたの力、それぐらいは可能なの」

「まさか」

真弓は雅雄の方を見て答えた。

「あなたの潜在力から夢を見せてくれたのでしょうね」

「そんな威力があるわけないじゃないですか」

「あなたにはあるのよ。だから焦らないこと、いつ発現するかわからないから

 注意することね」

「はい、わかりました。人間相手の時は万が一発現してもいいようにします」

夢を見る前なら笑い飛ばしていただろう。

でもあの光景が夢で良かったと思った。

「そうそう、それが正解よ。でもねその時のイメージを覚えている」

「はい、なんとなく」

「それを大事にするといいわよ」

そういわれてあの瞬間を思い出していた。

あの指先に力を集めた一瞬だ。

指の形が槍の穂先に似てるな感じた。

その瞬間、槍をイメージしていた。

そのことを思い出した。


練習場に顔を出す。

やはり誰もいない。

人形を相手に練習だ。

夢と同じで小揺るぎもしなかった。

そこで今度は夢と同じように槍を考えて突きを行った。

やはり夢のようにいかなかった。

でもあれが夢でよかったと思う。

まだまだ、発展途上の私だ。

将来は夢のようなことが出来るかもしれない。

でも夢のようなことにはしたくないから安全に気をつけようと思った。

そう考えてるうちに例の彼女が入ってきた。

夢と同じせりふだったので思わず笑ってしまう。

夢と違うのは私の対応だった。

彼女に早く動く要領を教えていた。

驚いたような彼女の顔。

その後、彼女は態度を改めいつのまにか親友になっていた。



梨花は卒業後、狼拳の師範として学校で指導することになる。





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