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第3話 梅花

谷原たにはら 梅花うめか14歳


梅花は舞踊拳を習っていた。

結構水があってたのか師範に誉められていた。

それでうまくいってたのだ。

あの鋭い動きが好きだった。

いかにも戦うぞという攻撃的なところがいいのだ。


ところが、ある日突然だった。

今までの師範が首になってしまったのだ。

代わりの師範は小百合先生だった。

そして、あの鋭い動きは消えてしまった。

小百合先生の教えは他のみんなには好評だった。

でもあれでは踊りだった。

実際、強いかもしれないけど私がやりたいものではなかった。

でも小百合先生は魅力的だった。

先生の許で我慢するか、他を見つけるか迷っていたのだ。


そんなとき、後ろから抱きつかれてしまった。

まったくの無警戒だったから。

「きゃーーー!」

大声で悲鳴をあげてしまった。

周りは一瞬振り返ったが、笑うだけで元に戻った。

振り返ると雅雄様だった。


あらかじめ、入学のとき警告を受けていた。

外にいるときは誰が見ているかわからない。

侍女たるもの常に気を張っていなければならない。

だから、油断してぼんやりしてはいけないと。

そして、ぼんやりしているものは私が抱きついて警告するという。

みんなは、笑いながら雅雄様の助平だといっていた。

お互い油断しないようにしようと話していた。


現実に何人かが被害にあった。

それでお互い協定をかわしたのだ。

雅雄様が近くに来たときは大きな声で挨拶をして教え合うことにした。

それで、結構防いでいたはずなのだ。

でも、今回は誰も声を出さなかった。

だから油断していた。

抱きつかれて初めて気づいたのだ。

だから、大きな悲鳴をあげてしまった。

周りの人は、油断してるから悪いという顔だ。


「雅雄様、すみません。もう油断しないから離してくださいませんか」

「だめだな、そんな顔をしていては信じられない」

「そんなーー、どうしたら信用してくれるのですか」

「そうだな、真弓にでも聞いたらいいかな」

「はい、そうしますからもう勘弁してください」

そう言うと、あっさり放してくれた。

でも抱きつかれても、思ったほど助平な雰囲気ではなかったのが意外だった。

雅雄様にお辞儀をして急いでその場を離れる。

周りの人が見ているから恥ずかしかった。


離れて落ち着いた。

そういえば、真弓先生に相談しろと言われたことを思い出した。

でも、なにを?

首をかしげながら真弓先生を探した。

先生は姉貴と言った感じでみんな頼りにしている先生だ。

探したら笑拳武道所に向かう途中だった。

呼び止めて相談した。

初めは何を聞くのかわからなかった。

挨拶をしてもじもじしていたら先生の方から聞いてきたのだ。

そして、ここに来たいきさつを話していた。

雅雄様に言われてきたことを説明しただけだった。

それを言ったとたん先生のほうが質問してきた。


「あなた、武術のことで悩んでない?」

誰にも話したことのない悩みを見抜かれていた。

それで、舞踊拳のことを話したのだ。

先生は何も言わず聞いてくれた。

話し終わったとき、少し考えて武道場に誘われた。

中に人がいないことを確認すると鍵を閉めたのだ。


「これで誰もはいってこないわ」

なにが始まるのかと思った。

「あなたの練武を見せてもらえるかしら」

そう言って、練武を見せろという。

鍵をかけた意味がわかった。

他の道場で練武を見せてはいけないと言われていたからだ。

それを内緒で見せろという意味だった。

そこまでされては断ることは出来なかった。

相談したのはこちらだ。

一通り練武を見せた。

真弓様はじっと見ていた。

そして終わったところで声をかけてきた。

「あなた、蠍拳を習っていたの?」

訳のわからないことを言う。

「舞踊拳ですよ、蠍拳なんて知りません」

真弓様、少し考えるようにしていた。

そして、しばらくして動き出した。

私を部屋の隅まで追い払うと演舞をみせてくれた。


すごく魅力的な動きだった。

舞踊拳の踊りとは違う鋭い動きが豊富に入っていた。

舞踊拳の中の鋭い動きを抜き出して作った斬新な踊りだった。

終わったとき思わず拍手をしていた。

「どう、今の踊りは」

「はい、まさに私のやりたかった踊りです」

「あなたは蠍拳演舞を見なかったの?」

入所式のとき先輩が披露してくれた演舞のことだ。

4つの演舞を見せてくれた。

蠍拳は鋭い攻撃を中心に組んでいた。そのため攻撃ばかりが目立って敬遠したのだ。

舞踊拳は優雅な中に鋭さを入れたものだったので選んだのだ。

でも今見せられた演舞はしなやかな中に攻撃を入れていた。

あのときの演舞と違うものだった。

「見ましたけど、今の演舞とは全然違うものでした」

入所式に見せる演舞は時間がないので特徴的なところを集めた簡略版だった。

さらに、舞踊拳が鋭い動きを強調した。

そのため蠍拳師範は対比のため不必要に鋭さを強調しなくてはいけなかった。

舞踊拳の乱れが他の拳の演舞にまで悪影響を及ぼしていたのだ。

真弓の目からは誤差のぎりぎりだから許容した。

しかし、梅花の目は敬遠に繋がったようだ。

それぞれが、許容範囲で鋭い方向に変化していたのだ。

「今見せたのが蠍拳の正式の演舞なの」

驚くことを言われた梅花に言葉はでなかった。

「・・・・」

「あなたがやりたかったのはこちらなのかな?」

そういった後また踊りだした。

今度は小百合様が見せた舞踊拳演舞だった。

踊り終わった後話が続く。

「あなたが見せてくれた踊りは今の二つの踊りが合わさってたの」

驚くことを言われた。

思い出してみると確かに言われたとおりだった。

「でも、武術大会で優勝した人ですよ」

「そうね、私もこの前初めて知ったから、舞踊拳の本部に行って来たの」

小百合様だけでなく真弓様も舞踊拳をやっていたということだった。

梅花はその意味がとっさにわからなかった。

しばらくしてようやく意味が通じた。

「真弓様は蠍拳も出来るのですか」

「ええ、知っているわ。だからあなたの踊りがわかるの」

蠍拳を踊っていたのだから知っているのは当たり前だった。

梅花の頭の中が混乱していたのだ。

その一つでも習得が難しい拳法を二つ知っているだけでも凄いことなのだ。

「それで、あなたがその気なら蠍拳に移った方がいいのではない?」

梅花はその言葉に首を縦に振っていた。


その後、梅花は正式な手続きで蠍拳に移籍した。

ただ、移籍後梅花は師範の踊りを見て思った。

真弓様の踊りの方がはるかに優美で力強いと。

まさか真弓の方が上位師範とは考えてもいなかった。

移籍したことにより生き生きと練習に励んだ。

そんな梅花を見て友人はうらやましがっていた。




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