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第14話 小百合

白井しろい 小百合さゆり


2歳のとき、誘拐されて刺青を入れられた少女は何も教えられないまま10歳

まで育てられた。

鏡は見せられなかったが妹の顔を見れば変なのはわかっていた。

自分達だけ人に合わせてもらえないのだ。

子供心に刺青が異状なのはわかった。

父親に文句を言ってもただ顔を伏せて何も言わない。


そんな生活が変ったのは雅雄様とあってからだ。

体から絵の具を落とすように刺青が消えていった。

わずか6日で消えてしまったのだ。

なぜ、今まで消してくれなかったのか疑問に思った。

ただ父親が涙を流して喜んでいたのが印象的だった。


治療の代わり交換条件を言われた。

雅雄様の仕事を手伝うようにとのことだ。

父親も同じことを言ったのでこれは治療の代償だとわかった。

でも、やることは?

まず学校に行くことだった。

それははっきりいえば、うれしかった。

今まで同世代の子供どころか誰とも会っていなかったからだ。


突然大勢の人たちと会うことになってしまった。

不思議なことはそこにいた子供の顔も名前も全員知っていたことだ。

疎外されるどころか、たちまちリーダーとして存在していた。

みんなの仲介役として活躍したのだ。

妹もおなじだった。

学校の成績は問題なくトップだった。

なぜか、先生が言うことがみんなわかるのだ、不思議だった。

でもおかげで学校とは楽しいものだと思った。


10歳の女の子はやがて16歳になっていた。

雅雄様に連れられて世界を回った。

馬車の旅は辛そうに思えたのだが雅雄様の馬車は揺れなかった。

家にある高級馬車でもあの快適さは出せなかったのだから不思議だった。

馬車なのにトイレは付いてお風呂まで入れたのだ。

食事も簡易のものなのにお菓子のようでおいしかった。

なにもかも、信じられなかった。

家の馬車につけるように帰ってから言ったのだが一笑にふされてしまった。

そんなこと出来るわけ無いということだった。

雅雄様の馬車は特殊だと知ったのは後からだった。

そのときはそんなものだと思って馬車の旅を2人で満喫した。

妹も旅を楽しんでいた。

旅の間に雅雄様は系統的に武術を教えてくれた。

教え方がうまいのでたちまちうまくなっていく。

武術と言うのは楽しいものだと教えられた。


黒国の町で買い物をしていたら2人とはぐれてしまった。

集合場所は決まっていたのでそこへいけばいいのだ。

ただ自分の位置がどこなのかわからないだけだ。

そんなとき、やさしい男の人が親切に案内してくれた。

自分は熊拳道場のものだからと素性をはっきり名乗っていたので不安はなかった。

町をいろいろ教えながら目的地に案内してくれたのだ。

雅雄様とは違い人間らしさに魅かれるものがあった。

そして、雅雄様に会って目的地を聞かされた。

熊拳道場だった。

本来ならくじで引き当てた真弓の番だが親切に譲ってくれた。

そして、あの方に再会したのだ。




小百合は恋する女の子になっていた。

相手はたまたま修行の都合で立ち寄った熊拳道場の次男だった。

予想外の恋愛ごとにいきなり計画を挫折するかと思った。

人間の恋愛感情を計算してなかった。

雅雄自身に魅かれないよう注意はしていた。

里美から散々言われたからだ。

相手はすぐにわかった。

熊拳の次男だった、そして相思相愛だった。

年齢的にもお似合いなので反対はしない。

やむ終えず25歳までの約束で待ってもらうことにした。

治療をしてもらった恩返しをかねて協力を約束してくれたのだ。

相手の男が、まさか学校の道場に顔を出すほどとは思わなかった。

その結果が真弓まで刺激してしまった。

旅が終わったところで真弓も恋していた。

真弓の恋愛の相手は・・・・・。

こちらも問題はなかった。

こうして雅雄は学校を運営する準備は着々とすすめていった。



小百合は雅雄という人外の者に出会って常識をくつがえされていた。

学生時代のわずか1年の活動で回った道場、そこで奇蹟を体験してきた。

各道場の正式師範免許をとってきたのだ。

普通の人がその一つを一生かかっても取れないものを3つだ。

妹の真弓も同じものを別の道場でとらされた。

こちらは4つだ。

一応秘密と言うことにしたので順位を割り込む形にはならなかった。

だから持っている順位と同じものがもう一つあることになる。

なんとなく裏技を使ったようで申し訳なく思っていた。

相手の師範は小百合が見せた割符で全面的に信用してくれた。

ただ、割符は一枚だったので順位は交替でとった。

しかし、技そのものは2人とも同じ強さなのだ。

雅雄様がくれた割符は神の使いの証明のようだ。

ただ正式師範免許が有効になる条件は単独の武術のみだという。

だから、小百合のように複数持っているいる場合無効になると教えられた。

雅雄様はその辺をしっていたに違いない。

だから、複数を取らせたようだ。

熊拳師範代と将来は一緒にと約束してきた。

素敵な人で思わず返事をしていた。

小百合の一目ぼれだった。

初めての町で右も左もわからないとき親切にしてくれたのが縁だった。

別れ際に婚約してきたのだ。

もちろん父親には内緒だった。

雅雄様の仕事の手伝いで25歳まで待ってもらうことになった。

彼も修行を兼ねて結婚は遅いほうがいいと言ってくれたので問題はなかった。

その間に父親を説得すればいいのだ。

しばらく会えないと思っていたらいきなり再会だった。

まさか、学校の道場に臨時の師範として白国に来るとは思っていなかった。

わざわざ来てくれたのはうれしかったが妹に見せ付けるようで気が引けた。

雅雄様の仕事は学校の先生だった。

きつかった。

でも楽しかった。

いろいろな生徒とのふれあいは夢のように楽しかった。

しかし、大人の思惑には苦しめられた小百合だった。



雅雄には各道場の思惑は手に取るようにわかっていた。

小百合が舞踊拳総師範になったことだ。

そして、生徒の卒業直後の師範承認だった。

後は各個人が幸せに生きて欲しいと思うだけだった。



小百合は梓が成長して学校の師範を任せられるようになったところで結婚した。

その頃には他の武術道場も生徒が師範をやっていた。

そして、一時的に黒国に居を移して熊拳総師範代行をおこなうことにしたのだ。

小百合の知識と実力で、熊拳を本来の剛健に戻す尽力をした。

各地に在籍していた正式師範たちは呼び出されて再修業だ。

そのときの様子は鬼よりこわい小百合師範と恐れられていた。

そして、一郎と仁を鍛え上げ白国大会参加者を総師範にすると宣言したのだ。


白国大会予選の熾烈な熊拳代表争いは有名だった。

熊拳関係者がシード外で8人参加したのだ。

シード枠は2人なので決まっていた。

しかし、それ以外の熊拳関係者が同じ予選枠に入れられたのだ。

剛拳同士の戦いに観客は選手しかいなかったが釘付けだ。

特に目の肥えた者達だからなおさらだった。

レベルの高い格闘を目の前で展開されたのだ。

そのため、他の試合がかすんで見えたぐらいだ。

大会そのものは兄一郎が優勝した。


負けた仁は兄一郎に代わって白国熊拳総代に就任する。

小百合は仁が白国に就任したので、それにともない熊拳も引退して子育てに尽力した。

熊拳以外のNoについては結婚時にすべて返上していた。

それは真弓も同じだった。

ただ、熊拳の勢いに他の拳の関係者はくやしがっていた。

なぜ最初のとき、双子を怖がらずに自分のところに引き込まなかったのかと。

2人の実力に気付き、それに近いことは舞踊拳総師範も行ったのだが時は遅かったのだ。

すでに2人とも婚約に近い状態だったからだ。

その後、蠍拳、舞踊拳、猪拳、狼拳については生徒達が実績を積んでいく。

そしてその師範がそれぞれの本家に乗り込んでいったのは有名なことだった。

女性に乗っ取られたシード拳という話だ。

雅学校の名前がことさら有名になった逸話だった。




次回、最終回です

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