第13話 双子
双子
小百合と真弓は白国左大臣の娘だ。
双子としてこの世に生を得た。
普通なら何の問題も無くお姫様になるはずだった。
母親は2人の子供の出産のとき亡くなっていた。
それでも、乳母もつけられ何の不自由もなく育てられていくはずだった。
事件は、乳母のちょとした油断に犯人がつけこんだ。
いや終始狙っていたのだからいつかは襲われたのだろう。
左大臣に恨みを持つ犯人に散歩中誘拐されたのだ。
乳母は必死に抵抗したのだが殺された。
犯人は2人を誘拐して殺すのが目的ではなかった。
左大臣への復讐だからだ。
政争に敗れた一族の恨みだった。
身代金さえ要求しなかったのだ。
大臣に対して殺すより悲惨なことを仕掛けた。
2歳の2人を誘拐して行ったのは女の子に残酷な仕打ちだった。
体中に刺青をして帰したのだ。
顔にまで入れられた刺青。
書かれた卑猥な言葉。
乳母は殺されて幸せだったかもしれない。
帰って来た子供を見なくて済んだのだから。
父親の左大臣はそのあまりの仕打ちに非常線を張って犯人を追求した。
しかし、犯人は2人を帰したあとすでに自殺していた。
大臣が怒り狂っているのを想像してか、笑って死んでいたのだ。
こうして、表向きの誘拐事件は解決した。
だが、2人はの娘にとって事件は生きている限り続くものだった。
左大臣は医者を探して刺青を消そうとした。
そのため自分の腕に刺青をして試したのだ。
だが、どの医者も大臣の刺青を見ただけで断った。
中には金創薬を使い治そうとしたものもいた。
劇薬で傷を作り皮膚を除去する手段だった。
痛みに顔をしかめる左大臣、その時点で子供には無理な治療だ。
たしかに、刺青は消えた。
ただ、刺青が消えただけだった。
そこには醜く焼け爛れた痕がのこった。
娘の治療に使えるものではなかった。
こうして大臣は治療をあきらめた。
この心労がたたり大臣は政治の表から姿をけした。
王は引きとめたのだが大臣の考えを変えることはできなかった。
良識派の大臣の引退は悪の台頭を促した。
王の力は弱まり政治は乱れ始めたのだ。
そして、雅雄のもとに連絡がはいった。
雅雄は里美の死後迷いの森に篭っていた。
その世界にいる限り2重存在の矛盾がないからだ。
何かあったときに自由に動くための処置だった。
そのため、奥義書の持ち主達の実力もおちていた。
雅雄の巡回がなくなったからだ。
そして、今回の端末からの連絡だった。
重い腰を上げた。
大きく乱れていた白国の治安を回復させるためあらわれたのだ。
里美と生きた経験から過激な対応を好まなくなっていた。
そして、別の方面から対策をとることにした。
それが雅学校を餌にする方法だった。
その実行準備にあたり8年の年月を要した。
まず学校そのものを作ることから始めた。
前身の侍女養成所を雅王女(当時8歳)侍女養成所に名前を変えた。
そして、一般市民を募集したのだ。
そして、冒頭に述べたように雅学校を中心に白国の治安は回復することが出来た。
回復する途上において気づいたことがあった。
左大臣の自宅に2人の娘がいながら世間に公表しないことに不審な目をむけた。
年を調べれば二人の娘は10歳だという。
そこで、調査に忍び込んだ結果、やはり10歳の娘2人だった。
左大臣の身分で娘を隠す理由がすぐにわかった。
2人の顔を見れば隠すのは当然だった。
そこでで王を介して左大臣を引っ張り出すことにした。
2人の治療を条件に学校経営をてつだわせることと復職を説得したのだ。
大臣は反対していた。
信じられないからだ、刺青を消せる技術は当時にはないから当然だった。
そこで、別室に呼び出して大臣の手を治療した。
大臣自らそこに刺青をほどこして、自らもいろいろ試していたのだ。
中には火傷の跡さえあった。
皮膚がえぐれているところもあった。
雅雄は大臣に口止めをして、麻酔をかけそれらをすべて直した。
その信じられない結果に大臣はようやく信用してくれた。
2人の娘を風呂に誘い確認した結果は悲惨なものだった。
雅雄の腕を持ってしても一人3日かかったのだ。
その間に不本意だが2人の器は結構大きなものになってしまった。
将来、2人には、学校を協力してもらうつもりだったので。
その点は都合がよかった。
助手として活動してもらうように知識は送り込んだ。
そして学校に通わせた。
そして、学校というものを肌で覚えてもらった。
その準備期間が8年だった。
2人は仕込まれていた知識もあることから順調に進学していく。
そして2人が16歳になった。
雅雄は2人を連れて世界中をまわった。
奥義書の道場を回るためだ。
一年近くかかったが、想像以上のひどさだった。
さすがに総師範を更迭させるわけにいかない。
そこで、2人に正式師範免許を取らせるのみに留めた。
総師範達も抵抗した。
そこで和解案として二人に例外的な順位だけを出すように指示をした。
総師範を侵さない代わりに他の師範へ指示を出せる権限を得るためだ。
総師範たちはその案にしぶしぶ承諾した。
逆らえば、乗っ取られるのは目に見えていたからだ。
双子の強さに恐怖をかんじたのだ。
もっともこの時点で雅雄の存在を知っていれば対応は違ったのかもしれない。
道場には2人しか行かなかったからだ。
こうして、異例とも言える極秘の正式師範免許が発行された。
極秘といっても一般にと言う意味だ。
関係者には通達された。
本来なら順位が下がる者達はその処置に不満はなかった。
順位さえ変らなければ雲の上の話だと思っていたからだ。
そして、その権限で近場の4つの道場支部が学校内に開設された。
上位師範の指示だ逆らうことは許されない。
総師範側も負けてばかりで癪なので最強メンバーを送り込んだ。
最近行われた白国大会の上位メンバーだ。
そして、雅雄はそれら道場からあぶれる娘をすべて引き受ける笑拳を立ち上げた。
さらに、学校内で自由に動けるように王子という立場をてにいれた。
王は雅雄の手腕に感謝していたので継承権のない王子として立場をみとめた。
王も王妃も雅雄には出会いから世話になったいきさつがあるからだ。
そのため、子供には雅巳と雅とつけたのだ。
政治の乱れは左大臣復帰で完全に消えていた。
治安は枠を褒賞にという名目で道場から最初は無理やり出させたのだ。
作戦は成功して他の道場からも競って出すことに繋がった。