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第12話 梓

熊野くまの あずさ16歳


梓は熊拳の本家の娘だ。

兄が雅学校に就任するからくっついてきたのだった。

兄は熊野くまの ひとしといって熊拳No5の名目だが実質No6だった。

それが、兄がここへ来た理由でもあった。

もっとも、長男の一郎が師範としてすでに就任して来ていた。

一郎兄さんは結婚していて子供もいた。

奥さんは城下に家を借りて子供と一緒だ。

仁はそこに間借りしていた。

梓は他の生徒と一緒で寮生活だ。

しかし、師範の妹ということで兄を使い買い物を頼んでいた。

そのため、他の仲間からはうらやましがられ買い物をよく頼まれていた。

兄の仁は梓の買い物係りとしてこき使われていた。



梓は、特例で12歳で入学が認められた。

しかし、授業の内容が厳しく付いていくのがやっとだった。

どうにか最近ペースを掴みなんとか余裕ができたところだ。

同じ組の者にはずいぶん助けられたものだ。

そのかわりという訳ではないが、武術の方でお返しをしていた。

それと、特権を利用しての買い物だ。

みんなには重宝されていた。


なんといっても熊拳本家の娘だ。

幼い頃から熊拳をたしなんでいたので実力はそこそこのものだった。

といっても、ここの学生よりましというレベルだったのだが。

身内の特権を使い兄をこきつかっていた。

そんな、梓だが兄の思い人、小百合に興味深々で笑拳の道場に顔を出すことも

たびたびだった。

本来は許されないのだが、友人につきあってという裏技で潜り込んでいた。

友人たちは気軽に梓の頼みを聞いて行動していた。

だが、悪事はついに発見され雅雄の洗礼を浴びてしまったのだ。


もっとも、雅雄にすればあれだけ堂々と見学にくるのだ。

最初からわかっていたことだ。

本人は隠していても廊下を足音を立てて歩く子供のようなものだ。

内緒のつもりでも宣伝して歩いているのだから秘密もなにもない。

おまけに人垣に隠れてこっそり覗いているからいたずらで抱きついただけだ。

「きゃー、」

心地よい悲鳴だ。

最近みんな警戒しているせいか反応が今ひとつだったので気分が良い。

「覗き見、現行犯だぞ。どうしようか?」

観念したのか、素直になる梓。

武術の稽古で覗き見は絶対の厳禁なのは教えられているのだ。

「・・・・」

「さて、小百合どう処分しよう」

小百合は雅雄のいたずら心を知っているので悪乗りする。

「稽古の標的で良いのではないでしょうか」

雅雄は我が意得たりとその案に乗る。

そして、標的の人形に縛り付けてしまう。

焦ったのは梓だ。

道場で標的人形が、どのように扱われるか良く知っている。

しかし、それ以上に梓の仲間があせっていた。

なんとか、許してもらおうと必死だ。

友人達は武術の覗きがそんな厳しいものと知らなかったのだ。

だから軽い気持ちで引き受けていたのだ。


雅雄も笑って、許してやる。

そのかわり、熊拳の練習を見せることを約束させた。

梓は他の道場で技を見せるのは禁止されてるだけに拒否しようとする。

雅雄は練習が済んだので、彼女の仲間を帰す。

そして、初めて事情を明かした。


小百合が熊拳No2だということを。

梓は順位のことは知っていたがNo2は一番上の兄だとばかり思っていた。

だから信じない。

おまけに噂では小百合先生は舞踊拳の師範と聞いているからだ。

小百合は熊拳演舞を見せた。

梓は、目の前で熊拳を実演されれば信じるしかなかった。

小百合も妹のような梓に親しみをもっていた。

だから、雅雄のからかいに乗ったのだ。

2人はたちまち実の姉妹のように打ち解けた。

実際、4年後小百合が熊拳を継いだ。

その時、梓は義妹になるのだ。


しかし、この時点で小百合はまだ梓の正体を知らなかった。

単に雅雄が親しくしていたから仲良くなっただけだった。

こうして、梓も小百合の弟子になって笑拳に移籍となった。

梓は小百合がNo2という言葉を信じて兄一郎に移籍のことを言わなかった。

小百合の弟子になって兄達を見返してやろうと考えていた。

梓自身は総師範の弟子で兄達を兄弟子と思っていた。

実際はその時点では誰の弟子でもなく単に家族だった。

だから、誰かの弟子入りするなら保護者に相談と報告するのは当然だった。

もっとも、弟子入りの師匠がそれなりの人物なら文句をいうことではないのだが。

一郎は仁が追いかけた小百合は学校の講師の一人と思っていた。

噂の舞踊拳総師範のことだ。

まさか、笑拳師範代とは知らなかった。

舞踊拳総師範が師範代をしてるとは普通は考えない。

だから、笑拳というおかしな拳法の弟子になると誤解したのだ。

誤解に誤解が重なって一郎が怒ってしまったのだ。

笑拳が引抜きをしたと思ってしまった。

そして、挑戦状を送ってしまった。

雅雄相手に。


挑戦を受けた雅雄、誤解があるのは承知だ。

引き抜いたのは小百合なのだから雅雄は関係ない。

小百合なら一郎も知っているので文句を言わないはずだった。

そして、一郎は笑拳における小百合の存在を知らないと読んだ。

雅雄は道場に乗り込んだ。

そして新作、ケン拳で相手をする。

片足を上げて戦う拳法だ。

雅雄は今では冗談も使えるようになっていた。

本気になるのも馬鹿らしいからだ。


名前と構えを見て完全に怒る一郎。

梓が止めるのも聞かず雅雄に襲い掛かる。

梓は師匠、小百合を呼びに行く。

完膚なきまでにやられる一郎。

ようやく、小百合が梓に呼ばれて登場となる。

小百合に散々叱られる雅雄。

どちらが師範かわからない光景だ。

そして、小百合からこっそり教えられる一郎。

雅雄がNo0だということを。

誤解は解けて平謝りの一郎。

梓は自分の態度が事件を起こしたことを反省する。

小百合はようやく梓が仁の妹と知ったのだ。

学校内ではほとんど名前で呼んでいるので知らなかったのだ。

梓が中途入学で小百合の授業を一度も受けなかったのも理由だった。

当然、熊拳の道場の時は梓は出入り禁止なので会っていない。

見習いが入れる状態ではなかったからだ。


その後、梓は小百合の指導のもとぐんぐん力をつけていく。

そして、小百合が抜けたあと、学校での熊拳の師範をすることになる。

小百合は梓が師範になったのを機会に教師を引退して仁の下に嫁に行った。

梓が師範になると他の道場の師範は歓迎してくれた。

これで学校の師範は5人とも生徒になったからだ。

そしてみんなひそかに本家乗っ取りを約束したが梓だけは勘弁してもらった。

熊拳が剛拳もあるが小百合様が本家につくのだあきらめるしかなかった。

結局、最終的にはNo3をとるところで落ち着いた。




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