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事の始まりはアラン・ロシュフォール伯爵様からの手紙を受け取った時に遡る。


「大変だ! 今から家族会議を開く! 全員応接室に集まるように!」



使用人のいないルブラン男爵邸に、父であるリチャード・ルブラン男爵の声が響く。



「フィオ姉様、起きてる?お父様が呼んでいるわ」


隣室の扉をノックして、中にいるはずのフィオ姉様に呼びかける


「おはよう、クリスティナ。早いのね。お父様が? 今度は何をやらかしたのかしら?」


「これ以上のトラブルは勘弁してほしいですね」


そう、この邸になぜ使用人がいないのかというと、ズバリ貧乏だから。


私達家族は皆おそらく楽観主義者だ。


物事を深く考えない。そうなった原因はお父様ではないかと思っている。 


お父様はよく言えば人が良い━━のかな?


母が生きていた頃は商会を経営していた。 母は計算が得意だった。 父は人当たりがいい。

二人で協力して商会はそれなりに潤っていた。


母が亡くなってから、徐々に貧乏になっていった。



父は計算が苦手だ。 細かい数字があっていなくても気にしない。

 

そんなどんぶり勘定では経営などできるはずもない。 細かい数字があっていなくても気づかない父に目をつけ、従業員が横領していたことが発覚。


その従業員をクビにしたら、別の従業員が商会のお金を持ち逃げ。


その他トラブルが重なって立ち行かなくなり、結局商会は手放すはめに……


今後の見通しもたっていないのに、知人に頼まれたからと連帯保証人をひきうける。

案の定、知人が逃亡して借金を背負いこむはめに。



またある時には、どうみても何の効果もなさそうな怪しげな壺を、訪問販売の人の泣き落としにあい高額で購入。


使用人への給金が払えなくなったので、徐々に人が減っていった。

最後まで残ってくれていた執事のセバスチャンも、高齢のためつい先日退職したばかり。


なので、私達は名ばかりの貧乏貴族だ。


だが、以前経営していた商会の商品が王室御用達の候補に上がったこともある。


父の人柄も周知されている。

その辺りのことも考慮されて。

人徳なのか文官の補佐の補佐、


という正規職員ではない、よく分からないポジションのお仕事に就いている。



我が家の貴重な収入源なので、父にはなんとか続けてもらいたいというのが家族の願いだ。


そんな父からの呼び出しなので、不安が募る。


「おぉ、来たか、フィオ、ティナ。 

フィオ、お前に縁談の話が来た。というか、結婚の申し入れがあった。

というか、我が家の現状は知っているな? 


すまん、フィオ! なのでお前の気持ちがどうであれ、断れない!


不甲斐ない父を許してくれーーーー!」


自分の言いたいことだけ言い残して、父は逃げるように走り去った。


「は?」

「ちょっと、お父様待ってください」


残された私達は顔を見合わせる


「フィオ姉さま?」


どこか思い詰めた表情のフィオーリは、父が置いて行った手紙に素早く目を通すと、クリスティナの肩を掴む。



「クリスティナ!」



「なんでしょう? フィオ姉さま」


「お相手はロシュフォール伯爵様だそうよ」


「ロシュフォール伯爵様といえば、社交界に行かない私達の耳にも届く程の大貴族ではないですか! すごいですフィオ姉様! いったいどこでお知り合いに?」



「会ったことないわ。だから、クリスティナ、よく聞いて。

結婚式の1ヶ月前には邸に引越してほしいそうよ」



「式の前にですか? ふふふ、フィオ姉様と早く一緒に住みたいのでしょうね」


「だから、クリスティナ、いいこと、1ヶ月私に成りすましてちょうだい。」



「は⁉︎ フィオ姉様、なんの冗談ですか?」


「絶対にバレないから大丈夫! じゃ、そういうことでお願いね? あ、髪色は染めてね」



「いえいえいえ、フィオ姉様、ちょっと、どういうことですかーーー?」


フィオ姉様の走り去る姿が父と重なって見えて、やはり親子だなとほっこりした気持ちになる。


って、そうではなくて、お二人共ちょっと身勝手すぎます。


仕方なくフィオ姉様の残していった手紙を拝見する。


1ヶ月前ってこれ今日ではないですか⁉︎

お父様、言い出せなくて黙っていたのですね⁉︎


いやいやいや、もはや自分で染めるしかないですね。


染料が思いの外高かったので、1ヶ月だけ色が持てばいいかなと安い染料で金色に染め上げた。


そして、到着早々ロシュフォール伯爵様からは意味不明の宣言をされた。


結婚するのだからと、心の中で旦那様と呼んだのがいけなかったのでしょうか………








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