7、二人の外出
「じゃあ、悪いけど、俺たち外に出てくるよ」
あれから玲奈ちゃんと仲良くなると、急に篤人さんが言い出した。
玲奈ちゃんと一緒にお絵描きをしていた手を止める。
目を上げれば、二人とも外行きの動きやすい服装になっていた。
坂堂さんが手に車の鍵を持っているので、車で出掛けるつもりだろう。
車であれば、万が一何かあっても籠城することができる。
家を離れる二人に、なぜ携帯が使えないのかと歯噛みした。
「・・・因みにどこに行くのか聞いても良い?」
「厳密には決まってないけど、夕方には帰れる距離だよ。玲奈、栄志も連れていくから、紗羅と二人でお留守番できる?」
「うん、出来るよ。さらちゃん私が居るから大丈夫だからね!」
「あ、ありがとう。玲奈ちゃん」
小学2年生に心配される私。余程不安そうにしていたのか。
私が確りしないと。
「紗羅には悪いけど、外に出るのは禁止で、ご飯の準備とかは中のキッチンを使ってほしい。電気の使用量は気にしなくて良いから」
「分かった。・・・無茶はしないでね」
道中に何があるか分からない。
篤人さんのことだから、私が考えていることよりももっと色々と考えているだろうけど、心配で堪らない。
「うん。そこの安全マージンは十分にとるよ。せめてこの状況がいつまで続くのか。それを見極められたら良いんだけどね」
「・・・篤人さんも坂堂さんも、本当に気をつけて」
二人が行くのは、今後のためだ。
この分断された状況下。
それでも、他の所と連絡が取れているのか、いないのか。
食料の状態はどうなのか。
人の行動はどうなっているのか。
集団から離れて暮らしている以上は、こちらからこっそりと伺っていないといけない。
それに、他の場所と分断されるほどのこんな地震が本当に起こるのか。
色々な疑問が降って湧いてくる。
今は考えても仕方がないと、頭から疑問を追い出す。
「もし、チャイムが鳴っても絶対に出なくて良いから」
篤人さんの真剣な目に頷く。
「玲奈も大人しくしてろよ。お前結構お転婆だからなぁ。ちゃぁんと中川さんの言うことを聞くんだぞ」
「栄志くんうるさい!それくらい分かってるよ!」
坂堂さんがからかうように玲奈ちゃんの頭を撫でる。
玲奈ちゃんが坂堂さんの足をベシベシと叩いている。
二人のやり取りを見ていると、坂堂さんの視線が私に向けられる。
その鋭い視線に、玲奈ちゃんのことを頼まれたのが分かった。
坂堂さんが一番私を警戒していた。
篤人さんよりも冷たく鋭く私を見ていたことも知っている。
あまり私に話しかけないのも、情を移さないためだろう。篤人さんの監視よりも徹底しているように感じた。
誰よりも篤人さんと玲奈ちゃんを大事に思っている人。
二人で外出するのだから、少しは信用して貰えたのだろうか。
そうだと嬉しい。
「それじゃあ、いってきます」
「いってくるわ」
「「いってらっしゃい」」
玄関口に出て見送ると、直ぐにドアを閉める。
インターホン越しにそれを見た二人が車のところに向かうのを見た。
二人が行く前に、徹底的に戸締まりを確認している。
きっと大丈夫。
車が出ていった後、門が確りと閉まったのも目視で確認している。
篤人さんから聞いているセキュリティが全て動いたのを見ると、漸く安心できた。
「お兄ちゃんと栄志くん行っちゃった」
「寂しい?」
「さみしくないよ。さらちゃんも居てくれるしね」
モニターをジッと見ていた玲奈ちゃんの頭を撫でる。
口ではそんなことを言っても、顔には寂しがっている気持ちが出ていた。
「玲奈ちゃん、今日はおやつプリンにするつもりなんだけど手伝ってくれる?」
「プリン!」
玲奈ちゃんがプリンの一言でご機嫌になる。
そんな玲奈ちゃんを守らなければ。
そんな決意を固めてモニターをチラリと見ると、玲奈ちゃんに促されてキッチンに向かう。
女と子どもだけで居るとバレれば、危険だ。
一応の緊急避難場所も聞いている。
二人が居ない間は、玲奈ちゃんの側から離れないようにしないとね。
気を引き締めた。




