日常2
「ま…間に合った……」
「先輩がんばりましたね」
ゼエゼエと息を切らせながら集合場所に着いた。
褒めて欲しい。水蓮抱えながらここまで……300mくらいか、その距離をダッシュだぜ?普通無理だろ。……なんで出来たんだろ?
息を整えていると、入場の指示が出る。
体育館に入ると、周りのみんなが感嘆の声を上げていた。
「しかし、俺たちはさっき来たから」
「驚きません」
喋っていたら怒られた。
説教にはならないが厳重注意。イエローカード一歩手前だな。
校長の話が長い……わけなかった。めちゃくちゃな人だからな。
けど……落とし穴があったんだ。そう、奴だ。ふつうは奴の話はそんなに長くないはずなんだ。
「………であるからして、今年度の…」
現在、話し始めてから20分が経過している。
理事長さん、話が長いよ。校長を見習えよ。“若者よ、青春しろ!”の1言だけだったじゃん。いや、それもどうかと思ったけどさ。教育者として。
その後、10分。合計30分で話しが終わった。
「次は在校生挨拶。生徒会長、石鳴幽さんお願いします」
あ、この人って特待生の1人の完璧人間だ。
「はい」
その姿が壇上に上ったとき、黄色い歓声が上がった。
それはそうだろう。ルックスは最高にクール。陸上インハイベスト8の運動神経。全国1位の学力。
何をとってもマイナスなところがない。おまけに、性格はクールだがなんだかんだ困ってる人を助ける。
これだけあれば有名に決まっている。この辺では石鳴を知らない人は居ない。アイドルみたいなもんだな。実際全国レベルで有名だし。
「……以上です。」
つっかえることもなく、完璧に読み終える。それによりさらに黄色い歓声が……上がらないで皆感動して泣いている。
「すごい声援ですね。」
隣で水蓮が言う。……これ声援か?泣き声も交じってるぞ?
「あれ?お前はキャーキャー言わないの?」
会長の姿を見たら女子は大体黄色い悲鳴を上げるだろう。それくらいイケ面なんだ。リア充なんだ。パーフェクト超人類的な人なんだ。
「言ったら嫉妬してくれます?」
「馬鹿いうな。俺が会長に嫉妬したら殺されるから。おもに追っかけとかに」
実際そうなるだろうから怖い。背筋が凍りつく。
「アハハハハ。それもそうですね」
何処からともなく笑う。幸せだ。
それに、俺はもう目立ちたくないんだ。地味に幸せに暮らせればいいんだよ。
そりゃ、小さい頃はヒーローにもあこがれたし、それを目指した。
でも……救うためには犠牲が必要だって知ったから……俺は…。
「どうしました?難しい顔していますけど」
そんなことを考えていたからか、水蓮が心配そうに覗き込んでいた。
「いや、ちょっと変なことを考えてただけだ。気にするな」
それを言うと水蓮は安心したように顔を綻ばせた。
「そうですよ。先輩は私の―――」
そこから先は放送と被って聞こえなかった。
「ん?何言ったか?」
「別に何でもないです。」
そういった水蓮の顔は笑顔で、輝いているように見えた。
「では新入生の皆さんは教室に移動してください。」
指示に従い、教室を目指す。