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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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不敬罪 ①

「ことが起きたのは君たちが到着する十数分前のことだ、まずはこの映像を確認してほしい」


 私たちを連れて会議室に移動したキューさんは、すでに用意されていたノートパソコンを起動する。

 待機画面も待たずして表示されたのは、大理石で作られた荘厳な建物の一室だ。

 高級そうな絨毯が敷かれ、壁には値段が分からぬ絵画たちが並べられている。


 ただ最も目を引くのは、そんな部屋の中央で縛られたまま銃口を突きつけられている男性の姿だろう。


「王子、この人物に見覚えは?」


「……現現ヴァルソニア国王、ヴァルド・ヴァルソニア。 僕のお父さんデス」


「やはりか、映像に加工の痕跡がないことは確認している。 これで正真正銘、現ヴァルソニア国王が捕まっていることがわかった」


「キューさん、この映像はどこから?」


「王子が来日を知らせた時と同じ回線を用いて送られてきた、詳細は王子の方が詳しいと思うぜ」


「王族専用のシークレットチャンネル、デス……その通信はヴァルソニアの宮殿からしか行えない」


「つまり王子の実家が押さえられてるっちゅうことやな、かなりヤバいんとちゃうか?」


 ウカさんの言う通り、敵の目論見がクーデターならもはや詰み寸前の状況だ。

 あとは引き金ひとつで王は落ちる、その様を国民に見せつければヴァルソニアという国は終わりだ。

 ただ1つ、王子がこの場にいるのは唯一の救いか。


「ねー王子サマ、この人たちずっと何か喋ってるけどなんて言ってるの?」


「それは……」


「王子へ向けて“王の命が惜しければ素直に投降せよ”というところでしょうか」


「……おかきさん、ヴァルソニア語がわかるのデスか?」


「状況が状況ですから犯人の考えはなんとなくわかります。 すぐに王を処刑しないのはまだ利用価値があるからです、王子を釣るための餌として」


 パソコンの画面では口周りに髭を生やした高圧的な雰囲気の男が口角泡を飛ばしながら何かを訴えている。

 ヒゲでボリュームを誤魔化しているが、こけた頬に眉根を寄せた不機嫌な目つき。 無理をして威厳を保とうとするその振る舞いは、ウカさんたちの証言と一致する。


「2人とも、この映像の男に見覚えは?」


「大ありや、うちらがまんまと逃がしてもうたさかい」


「うん、間違いないよ。 ボクらをビルごと落っことした奴」


「……イオルド、クーデターの主犯デス」


 王子は仇敵のように画面を睨みつけながら応える。

 いや、このままでは仇敵どころか親の仇になりかねない相手。 睨みつけるだけならむしろ可愛いものかもしれない。


「翻訳ツールを通したところ、“明日の5:00に指定された空港で王子の身柄を引き渡せ”と言っている。 そのほかは取るに足らないプロパガンダだ、話の9割は蛇足と思ってくれ」


「うちの理事長の朝礼みたいだね」


「さすがに失礼よ、理事長なら10割蛇足だわ」


「脱線はそこまでにしとき、キューちゃん、相手さんの要求はこれだけか?」


「そうだよ、身代金や日本への要求はとくにない。 王子の命が取れればそれでいいのかもね」


「命だけと言われましてもね……」


 当然SICKとしては看過できない。

 王子の身に何かあればヴァルソニアが大規模な過去改変を引き起こす可能性がある、そうなれば現在への影響は計り知れない。

 だがこのまま指を咥えて王が殺されてしまえば同じこと、最良は両名を救いながらイオルドを拘束することだ。


「お嬢、悪いけど王子を食堂へ連れて行ってくれないかい? 顔色も悪いし今日は休んだ方がいい」


「わかったわ、一緒にパンナコッタ食べましょう王子」


「で、デスけど……」


 父親の危機に後ろ髪をひかれながらも、強引な甘音さんによって王子は連行されていく。

 こういう時の甘音さんは頼りになる、今の王子には傍に立ってメンタルケアしてくれる人が必要だ。


「……さて、おいらたちのやるべきことは1つ。 ヴァルソニア王国の特性を鑑み、異常性の発動を阻止すること」


「そのためにはこのムカつくヒゲ面をぶっ飛ばす必要があるわけやな、わかりやすくてええわ」


「目的はシンプルですがそこに至る過程が問題ですね、何より厄介なのが敵が使いこなしている過去改変特性」


「受け渡しに空港を指定しているのもそのままトンズラこくつもりだよね、ボクなら“味方の飛行機が用意してありました”って改変しちゃうな」


「本当厄介だな、過去への介入は防げない。 今から空港全体に改変阻止の処置を施すのは不可能だぞ」


「これまでの体験から改変も万能ではないと思います、せめて異常性の起点でもわかれば……」


「「本だね(やな)」」


 ウカさんと忍愛さんが声をそろえる。

 イオルドという男と直接接触した2人には、何らかの確信があるようだ。


「あいつずっと本を手放さなかったんだよ、ボクが脅してる最中でもさ」


「辞典みたいな分厚い革表紙の本や、開いたり書き込んだりっちゅう素振りは見てへんけどきな臭いやろ?」


「なるほど、それは有力な情報だ。 でかしたぜ2人とも」


「では作戦の指針は決まりましたね」


「ああ、敵の改変を防いで国王を救出する――――使える手札と切るべきカードの確認だ、くだらんクーデターなんてちゃっちゃと解決しようぜぃ」

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― 新着の感想 ―
>「さすがに失礼よ、理事長なら10割蛇足だわ」 酷い言われよう。
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