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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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真相は白日の下に ④

「キューさん、どういうことですか? 太陽ができるって……」


「言葉通りだよ、今山田っちのいる座標を遠隔で観測しているけどとんでもない熱エネルギーが刻一刻と膨張している!」


「膨張ってどのくらいなの?」


「うちの優秀な演算機がはじき出した最大サイズと温度は太陽そのものだ、地球表面にそんなものが現れたらどうなると思う?」


「……考えるまでもなく一巻の終わりですね」


「そうね、とりあえずコーヒー淹れたけど飲む?」


「いやあ落ち着いてるね君たちさぁ、ミルクと角砂糖たっぷりでよろしく」


「角砂糖は2つまでよ。 話聞いた限り今から焦ったってしょうがないじゃない」


「地球の裏に逃げても無駄ですよね、こんがり焼かれるだけです」


「焼かれるどころの騒ぎじゃないけどね、ともかく山田っちにはその心臓をあと5分以内に何とかしてもらいたい。 でなきゃそこら一帯はもはや近づくこともままならない灼熱に包まれるぞ」


『無茶言ってくれるなぁ!?』


 ─――――――――――――℡―――z___℡_____________


「クッソー! やるだけやってはみるけど……さっ!」


 文句を言いながらも行動は早く、忍愛は袖から滑り落としたクナイを上空の心臓目掛けて投擲する。

 しかしその切っ先が心臓へ突き刺さるより先に、あっという間に赤熱したクナイは空中で融解し、目標へ届くことなく蒸発してしまった。


「キューちゃーん、今の見た!? 無理だってあれ!」


『心臓へ近づくほど指数関数的に熱量が増加してるのかぁ? だったら地表はとっくに……現実が歪んでるのか……? ならアンカーで固定して……』


「考察は後回しで対処法だけ教えて! すでにもうサウナより熱いよォ!」


『ごめんごめん、まず接近戦は遠慮したほうがいい。 こっちで観測してる心臓の温度はすでに5000度超えてらぁ』


「だからって飛び道具は御覧の通りの有様だけど!?」


 忍愛も続けて手持ちの手裏剣や煙玉、果ては水筒なども投げつけ見るが、やはりどれも心臓表面に掠りもせず蒸発していく。

 文字通り焼け石に水、どころか太陽に水鉄砲ぐらい熱のスケールが違う。


「せ、先輩! 僕だって何か手伝……」


「素人が手ぇ出せるやつじゃないから大人しくボクに抱えられてな! 陀断丸はどう? いけそう?」


『たとえこの身朽ちようとも相打つ所存!!』


「よーしダメそうだなOK詰んだ! 逃げていい!?」


『もうちょい踏ん張ってくれ、対策しようにも時間がなさすぎる! ターゲットの様子は今どうだ?』


「どうって……ずっとドクンドクンしながらだんだん大きくなってるけど」


『どうにも勝手に鎮静化してくれる様子はないか、そもそもなんでいきなりこんなことになったんだ? そこんとこ何か知らないかい怪盗君』


「らしいけど、君あの心臓になにかした?」


「し、知らない! 僕はただ盗んだだけで……でもなんかほんのり生温かいなって思ったけど」


『おそらく長いこと休眠状態だったんだろう、そこを何らかの要因で覚醒……そうか、館長の心臓』


「君、館長のこと殺した?」


「へぁ!? か、怪盗は人殺しなんてしない!」


『忍愛さん、アステカでは新鮮な心臓を捧げることで太陽の消滅を先送りするという終末信仰が行われていました。 もし空に浮かんだオブジェクトに館長の心臓が捧げられたとしたら……』


「吐き出させたら止まるかもしれないってことだね! サンキュー新人ちゃん、それでボクはどうすればいい!?」


『…………』


「ボクはどうしたらいい!?!?」


「あちちあちち! 先輩、マント燃えてきた! 逃げないと危ないんじゃないか!?」


「逃げ場なんてないんだよォー! チックショーなんかないかなんかないか!?」


「呼ばれて飛び出てなんか来たでぇ! 目つぶって耳塞いで口開けとけ山田ァ!!」


 いよいよ周囲の自然物が発火し始める中、日の光より眩しい閃光が忍愛の真横をすり抜ける。

 そのまま駆け上った稲光は空に浮かぶ心臓へ直撃し、その脈動と巨体を大きく揺るがした。


「っしゃあ! 心臓に電気はよう効くやろ、これ以上デカくなる前に仕留めるで山田!」


『ウカっち、間に合ったか!』


「ぱ、ぱ、パイセ~ン!! ありがとうだけど山田言うな!」


「言うとる場合か! そっちのガキンチョが例の名無し怪盗か、下手に逃げるより掴まっとる方が安全やさかい、山田にくっついとき!」


「は、はい!」


「うちはもう一発溜めるのに時間かかる、その間は頼むで山田!」


「頼むって何を……」


「反撃に決まっとるやろ、自分の腹が何で抉られたか忘れたか?」


 ウカが二発目の電撃を充電しはじめたその矢先、忍愛は周囲の気温がひときわ高まる気配を肌で感じとった。

 両手でウカと正太郎を抱え、心臓から大きく距離を取る忍愛の軌跡を追いかけるように無数の熱戦が地面を焦がす。

 初撃よりも高温で高速な熱線は地面を深く抉り、着弾した箇所はドロドロに溶解して溶岩のように変質。 直撃すれば今度こそ無事で済まないのは一目瞭然だった。


「あっぶねぇ! 反撃してくるってことは生きてるんだあいつ!?」


「しかもうちの攻撃を脅威と感じてくれとるわけや、吉報ってことにしとこか!」


「あ、あの……先輩たち……」


「なんや、悪いけど今忙しいから手短に頼むで!」


「いえ、その……自分の勘違いならいいんですけど……()()()()()()()()()()? あの心臓」


「――――はっ?」

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トラブルメイカーな後輩
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