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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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卓上談義 ③

「あー……そんなのもあったわね、オリエンテーション」


「甘音さん、私初耳なのですが」


「電子手帳を開いてホーム画面からセレクト押したまま↑↑↓↓←→←→BAと入力すればイベントページにアクセスできるわよ」


「どうして催しごとの確認に隠しコマンドが必要なんですか!」


「理事長が狂ってるからよ」


 文句を言いながらもおかきは電子手帳を開き、手早くイベントページへのアクセスを済ませる。

 そのままざっと流し読みした文章を噛み砕くと、「新入生と在校生を繋ぐ交流の機会を設ける」というものだ。


「しかし具体的には何をやるんですか?」


「それは不明、毎年理事長の思い付きでコロコロ変わるわ」


「嫌な予感しかしないんですけど」


「いい勘してんじゃねえか、去年は学業エリア1区画まるごと使った脱出ゲームやらされたな」


「初等部学生を狙う小山内先生から逃げろってコンセプトでね。 逃げ切ると報酬があるけど失敗するとAP没収されたわ」


「それはちょっと困りますね……」


 ここ最近は探偵業に協力する猫たちへのお礼などの出費が重なり、おかきの手元に残ってる学園通貨(AP)は心もとない額しかない。

 節制を心がければ日々獲得できるAPで黒字にはなるが、逆に言えばペナルティを貰えば由々しき事態といえる。

 もし今年のオリエンテーションも成否によってAPの増減が発生するなら、おかきには死活問題だ。


「ハッハッハ! 心配せずとも君なら大丈夫、理事長はユニークだが無理難題は出さない人さ! 新入生と力と合わせれば必ず乗り越えられるとも!」


「さすが宝華先輩ですわ~~~!!」 


「ほんま相性ええんやなこの2人」


「ボクの同室っ子もこれぐらい年上を敬ってくれたらなあ」


「ともかくオリエンテーションのことは分かりましたが、できることはあまりに少ないですね」


 卓上にカードを置きながら、おかきはため息を零す。

 AP減少のリスクは無視できないが、イベントの内容が理事長の胸三寸で決まるなら事前にできる対策はほぼなにもない。

 

「心配せんでもええって、ロスコの言う通りそんな無茶な難易度にはならんて」


「ちなみに前回はおおよそ5割が脱落したらしいよ、ボクは新入生抱えて逃げ切ったけど」


「無いとは思うけど今年も小山内先生が出張ったら……おかきは100%狙われるわね」


「カモがネギとセットで鍋抱えてやってくるようなもんだからな」


「すでに気が重くなってきました……あっ、忍愛さんそのカードは召喚ゲージが足りないので出せませんよ」


「クソッ、バレた。 落ち込んでる時でも抜け目ないな新人ちゃん」


「ちなみにヒントぐらいなら知ってるぜ俺」


「えっ」


 一人だけ卓を囲まず隣のテーブルでトランプタワーを作っていた悪花に全員の注目が集まる。


「おお、さすが学園一の情報屋。 すでに理事長の腹の内も君の手の中という事か!」


「気持ち悪ィ言い回しするな劇団ひとり、あのイカレシルクハットの頭ン中なんざ金積まれたって覗きたくねえよ。 俺が知ってんのはヒントだけだっつうの」


「もったいぶらずにチャキチャキ吐きなさいよ、あんた悪い笑顔してるわよ」


「そりゃまあ話せっつったら話すけどよぉ、タダってわけには……」


「あっか」


「……なんだよアリス」


 犬歯を見せる笑みを浮かべて皮算用をはじく悪花の眼前にアリスが詰め寄る。

 背丈が足りないため見上げるような形だが、ただただじっと自分を見つめるその眼力は悪花もたじろぐほどだ。


「はなす」


「話聞いてたか? 俺だって対価もなしじゃ割に……」


「いじわる」


「いや、あのなぁ……」


「はなす」


「…………チッ」


「すごい、悪花様が折れた」


「子どもには勝てないわね」


「勘違いすんなよ! おかきにゃ礼があるからな、その釣りを今返すってだけだ!!」


「礼……お釣り……? うっ、頭が……」


「まずいわ悪花、記憶の蓋が外れそうよ」


「おかき、俺の話に集中しろ。 いいか? おそらくだがレクリエーションの内容は……」


――――――――…………

――――……

――…


「はーい、それじゃ理事長の思い付きで始まるレクリエーションの時間でぇす。 今日は皆さんに初等部の生徒を連れて山を登ってもらいます」


「Boooooo!!!!」


「素人に装備もなしで山登らせるなー!!」


「山を無礼なめるなよ!!」


「新入生たちに酒カス教師の姿を見せるんじゃねえ!!」


「小山内先生も隠せ隠せ! ヤバい学園と思われるだろ!」


「ヤバい学園だよ!!」 


「阿鼻叫喚ですね」


「準備しとって正解やったなぁ」


 後日。 晴天に恵まれたお日様の下、ウイスキーボンボン(ボンボン抜き)を加えた飯酒盃いさはいがレクリエーションの開始を宣言する。

 彼女の装備は足元は安全靴で固め、手にはトレッキングポール、背中には登山用の大型リュックも備えて万全の構えだ。 なおリュックの中身はほとんどは酒で埋められている。


「大丈夫大丈夫、今日登るのは初心者用ピクニックコースでーす。 途中には登山部とデスサバイバル部と教師陣が待ってるので安全性もバッチリ!」


「デスサバイバル部か……」


「まあデスサバいるなら安全か」


「ウカさん、ここまで生徒に信用されるデスサバ部とはいったい」


「ススリガミ相手に生徒連れて生存する連中や」


「はーいそこ私語厳禁、今からオリエンテーションのルールを説明するのでよく聞いてくださいねぇ」


 酒の補充とマイクチェックを済ませた飯酒盃が集まった生徒たちへ呼びかける。

 その横で準備を手伝う小山内が台車に載せて運んできたのは、商店街の服日で使うような年季の入った抽選機ガラポンだった。


「……ここまでは想定通りですね」


「せやな、あとは悪花の“予想”がどこまで当たっているか……」


「はーい準備できたんで説明しまーす! これから皆さんにはグループを作ってもらいまぁす」


「「「「ヴッ」」」」


 そして笑顔の飯酒盃が話を続ける中、一部2人組を作って(トラウマ)を刺激された不特定多数の生徒からうめき声が漏れた。

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