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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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ウラに隠れたワル ②

「やっほ、悪花様! 今どういう状況!?」


「来たか、遅ぇぞ山田ァ! かくかくしかじかでチェイス続行!」


「山田言うな! でも了解、一般車両との事故だけは気を付けてよホント!」


「忍愛さんがバイクと並走してる件にはもはや誰も突っ込まないんですね……」


「おかき、しかも重り(うち)を背負ってるんやで」


 透明バイクとの追跡を決断した悪花の背中から、遅れて追いかけてきた忍愛が合流する。

 幻術で身を隠すためその背にウカを背負ってなお、大型バイクに追いつく脚力についてはもはや誰も気にしない。


「それと魔女集会の子から通達、SICKが検問敷こうとしてるってさ! このまま暴走バイク突っ込んだらどっちか大怪我するよ!」


「いや、あいつらがそこんとこ頭回さず無理やり止めるとは思えねえ。 確実に捕まえる策は用意してあんだろ」


「……キューさんに入電しましたが5コール以内に返事がありませんでした、おそらく急ピッチで捕獲用の何かを制作中かと」


「おかきお前……ずいぶんふてぶてしいスパイだな」


「手段はなりふり構ってられません、こちらは手数も人員も負けています。 あとで謝って済むなら安いものです」


 それでもおかきは宮古野が打開策の準備に手間取るとは思えず、頭の中で電卓をはじく。

 バイクの目撃情報は今回が初ではない、SICKなら二度目の出現に備えて準備は進めている。 

 仮に今回動き出したタイミングが魔女集会と同じだとしても、準備は8割がた終わっていると推定し、この追走劇のタイムリミットを考えるなら……


「10分、それまでにあのバイクを止めないとおそらくSICKに負けます」


「なら今回全知無能に頼る暇はねえな、ミュウが敵に着いた理由は昨日から解析してるがあと2時間はかかる!」


「肝心なところで間に合わないなぁ、悪花様の能力」


「引っ叩くぞ山田ァ!! そういうテメェはアレに追いつけねえのかよ!!」


「んー、さすがに一瞬で距離詰めるのは無理。 近づけば相手にも感づかれるしミュウちゃんもいるなら捕獲も一筋縄じゃ無理でしょ?」


「当たり前だ、ミュウには山田撃退法Ver.2.11まで伝授してある」


「やだなぁ悪花様、そんなにボクのこと想ってくれてるなんて……」


「おいやっぱこいつ轢いていいか?」


「悪花さん、一応忍愛さんは味方なので……」


「そうこうしている間に1分経つで、どないする!?」


「…………」


 おかきは考える、それが自分の役割なのだから。

 ミュウが自発的に兄弟に協力している理由、それはまだ謎だ。

 そもそもこの兄弟はなぜ高速道路を爆走している?


「……忍愛さん、今彼らは迷彩を纏っていますか?」


「ん、ボクの目には見えないな。 音と空気の流れで大体の位置は把握してるけど」


「目立つことが目的なら迷彩を使う必要はない、逃走する際に使えばいい。 しかし彼らは出現と消失を繰り返している」


「聞こえたか? いますぐこれまでの出現位置を地図と照らし合わせて送ってくれ」


『あいあいキャプテーン! 40秒で送りやす!!』


「というわけだおかき、準備次第お前の端末にも転送する! ほかにも必要なものがあればガンガン言え!」


「ありがとうございます、少年たちの身元は分かりますか?」


『それは姐御の能力に必要なんですでに調べてます! ただもうちょい時間がかかるかと!』


「……特定は可能なんですね、わかりました」


 犯人のプロフィールは特定できるだけの情報がある、ならばSICKや魔女集会のような暗部の存在ではない。

 彼らも魔女集会については知らないという反応を見せていた、悪花が初めに立てた“突然能力に目覚めた一般人”という仮説は正しいと見ていい。

 だが同時に「捕まるわけにはいかない」という台詞は、少なくとも自分たちが捕まったらどうなるかという知識が備わっている。


 もし彼らが一般人であり、かつ最低限の知識を持つという条件を満たすなら、そのケースは――――


「――――()()()()()()?」


「ん、何か分かった新人ちゃん? 手が必要ならパイセンが手伝うよ」


「なんでやねん、お前も働けや!」


「悪花さん、全知無能で少年たちの身元情報を得るまでどれぐらい時間がかかりますか?」


「今魔女集会(うち)の連中が情報集めてるが、それでも数時間は必要になる! どう頑張っても間に合わねえ!」


「なら条件をもう少し絞ります、私の推測ですがおそらく彼らは……」


――――――――…………

――――……

――…


「アニキ、あれでよかったのか? 俺たちよぉ……」


「ブラザー、風の音がうるさくて何も聞こえないぜ!! 心配すんな、俺たちには用心棒の先生がいるんだからよぉ!!」


「…………」


 少年たちのハイテンションな会話を聞きながら、ミュウは後方にほとんどの意識を向けていた。

 自分たちのボスが追って来ることは分かっていた、ここまでは3人の想定通りだ。

 だからこそ気を付けなければならない、この限られたチェイスの中で彼女たちが“余計なこと”を口にしないように。


「ブラザー、車の数が増えてきたぜ! やっぱり()()()()()()()()()()()()()()()!」


「ファッキュー!! そりゃ嬉しいねアニキ、俺たちも一躍有名人だ!」


「おうおうおうおうおう! いい気になってんじゃねえぞガキども止まれ止まれ!!」


 都市部に近づいたことで道路内の車両密度も増え、無意識にスピードを緩めたバイクの背からガラの悪いヤジが飛ぶ。

 だがミュウは驚かない、我らがボスならこのわずかな隙を逃さないと知っていた。

 そして“彼女”ならきっと、この謎の答えにたどり着いてくれると信じていた。


「お、おいアニキ……あれ!」


「なんだブラザー……って、マジか……!」


「…………さすが、です」

 

 [ “人質がいるなら協力する、減速求む” ]


 悪化が操るバイクの背に掲げられていたのは、ミュウたちへのメッセージが書かれた旗だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほどなー!おかきの探偵パートはいっつもイケメン幼女ですね
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