11ー5 十代目『贄の魔女』ティアナ 5
ピリピリと緊迫した雰囲気の中、眼光鋭く上から見下ろされ一瞬殺されるのかと肩に力が入ったが、ここは魔術庁。相手は魔術師。私は弟子希望者。
落ち着け。これはただの採用面接だ。
「あ、えっと、弟子志願のティアナ・クルルといいます」
取り敢えずペコリと頭を下げた。
「知っている。申込書は見た。あの悪魔とどういう関係だ」
「悪魔······あ、ノエルのことですか?友達ですが······あの、何故ご存知なんですか?」
「こちらに寄越しておいてよく言う。ヴァンゲンハイム家を脅したくせに。しかも友達だと?悪魔と?······はっ、冗談にしてはキツイな。本当のことを言え。どこの手のものだ。何が目的だ?」
畳み掛けるように質問をされ、私は戸惑った。しかも何故かわからないけどハインリヒ・ヴァンゲンハイム魔術師は物凄い怒っているようだ。こちらに寄越したと言っていたがどういうことだろう。
「あの······ノエルがそちらに行ったのですか?」
「いい加減にふざけるのは······」
どういうことだろう。私はノエルにヴァンゲンハイム魔術師の元に行くよう伝えた覚えはないのに。
部屋中が私を責めるような疑うような気迫に包まれて、もはや面接という感じではない。
恐らくだか、私はこの魔術師の敵と見なされているのだ。理由はわからないけれど。
これは、多分どう足掻いても採用には繋がらなそうである。だけど、せっかくわざわざ魔術庁まで足を運んだのにこのまま黙って帰るのも癪だ。なら、一方的にでも今日来た目的を告げておこう。最低でも、危害を加えるために来た敵ではないと言わなければ。
でも大人相手に交渉するほどの話術など、私にある訳が無いし、真っ直ぐ事実だけを言おうと決めた。
「あのう·······私、実は魔女で、前世の頃からノエルの友達なんです。もうすぐ中等学校を卒業しなくてはいけないので、就職先を探していたんですけど、今の時代に魔女とかいう職業ないし、魔力を使ったお仕事でお金を稼ぐのは国家魔術師しか思い当たらなくて。だから弟子にしてもらおうと思って来ました」
「よくそんな嘘を堂々とつけるな······」
「これで信じてもらえますか?」
少しだけ右手を挙げ、周囲の魔力を吸収しイメージを思い浮かべて体から魔力を出した。
何も無かった部屋に薄いブルーの小さな花弁がフワリフワリと舞い踊りながら振りだした。
「!!」
「花の幻影魔法です。攻撃する意志なんて無いし、あなたの敵じゃありません。本当にただ採用面接に来ただけなんです」
足元に落ちた花はしばらくすると消え、また宙から降りだした。
「う····嘘だろ······?本物の魔法か······?」
「本物です」
「悪魔と友達だと言ったな。ここに呼べるのか······?」
「·······ノエル、来て」
リン······と鈴の音が鳴り、私の真後ろにノエルがふわりと降り立った。
「信じてもらえますか?」
私はヴァンゲンハイム魔術師を見た。彼の目は大きく見開かれたまま、口を少しだけ開けて固まっている。
「信じてなかったの······ちゃんと僕が説明したのに」
「ノエル!ヴァンゲンハイム魔術師様のところに勝手に行ったの?そういう大事なことは先に言ってよ」
無表情のまま、ノエルは首を傾げて私の肩に顔を乗せた。
「ヴァンゲンハイム家と接点があれば「今度応募するから宜しく」と言ってほしいってティアナが言ったじゃない」
「言ったけど、·······え、接点あったの?ヴァンゲンハイム魔術師様と?」
「あるから行った」
「え?え?あの、魔術師様。うちのノエルとお知り合いなの?」
ヴァンゲンハイム魔術師は戸惑ったまま髪を掻き上げた。さっきまでの緊張感が薄らぎ、酷く戸惑った様子の彼は口元を手で押さえたまま深呼吸をした。
「······なるほど。全部本当なんだな······お前······お前が『贄の魔女か』······」
「私の二つ名をご存知なんですか?」
ヴァンゲンハイム魔術師はフラフラと歩き、執務机の後ろにある上質なレザーの椅子ににドサリと座った。




