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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第11章 贄の魔女 【2】
98/139

11ー4 十代目『贄の魔女』ティアナ 4

 


 魔術師の弟子になるためには、直接魔術師本人に直接申し込む方法、魔術師の方から勧誘する方法、そして年一回の魔術庁主催の弟子申込会で双方の合意でなる方法があると本には書いていた。


 魔術師なんかと接点が無い私にとっては、弟子申込会以外で会う以外に申込手段が見つからない。毎年雪が降る前に行われる申込会に参加するため、私は魔術庁に応募用紙を提出した。


「ティアナは本気でヴァンゲンハイム家に弟子入りするの?」


 魔術庁に書類を出した帰り、ノエルが突然聞いてきた。


「うん。本気。嫌だった?」

「嫌じゃないんだけど、わざわざ自分で行かなくても喚ばれる訳だし······」

「???······ノエルは心配症なんだね!大丈夫だよ。取り敢えず就職先が見つかれば、現代は生きて行けるんだよ。弟子なら私でも衣食住に困らず暮らせるだろうから」

「そういう話をしてる訳じゃないんだけど。ティアナがいいなら、いいよ」

「本当は何か接点があれば個別に申込み出来たんだけどなあ。パパの知り合いとかなら「娘が今度応募するんで宜しく!」とか言ってくれたかも。さすがに弟子申込みに縁故採用はきかないかな」

「········接点があれば、そう言ってほしいの?」

「え?まあ、そうだね。初対面でも、知り合いの娘が来た方が印象としては強そうじゃない?」

「わかった。ティアナがそう言うなら」


 呑気な私は、まあなんとかなるだろうと気楽に考えていた。ママとパパにも、魔術師を目指そうと思うと伝えたら、優しく頑張ってね、と頭を撫でてくれた。



 弟子申込会当日、会は魔術庁の中の大きな体育館で行われた。


 目の前にはたくさんの若い弟子希望者がいた。魔術師ごとに決められた時間に参加すると聞いていたが、まさかハインリヒ・ヴァンゲンハイム魔術師にこれだけの弟子希望者がいるなんて。


 しかも全員女性。みんな可愛くて綺麗。なぜか全員煌びやかな衣装を着ていて、異様な緊迫感がある。


 私は学校の制服を着ていたのでかえって目立った。ダークブラウンのワンピースとブレザーの学校の制服がこんなに注目を浴びたのは初めてだ。


 時間になると、金のエンブレムが入った濃紺のローブをまとったハインリヒ・ヴァンゲンハイム魔術師が現れた。


「きゃー!ハインリヒ様あ!」

「ヴァンゲンハイム様!お会いしとうございました!」

「是非私をお側にお召し下さいませ!何でもいたしますわ!」


 我先にと彼に向かう女性集団に遅れをとり私は呆然とその様子を見ていた。


 な、なにこれ······弟子希望者なんじゃないの? まるで舞台俳優の登場のようだ。見たことないけど。黄色い歓声が体育館いっぱいに響いていて、目の色を変えて群がる女性達にただただ圧倒された。


「静かにして下さい」


 透き通った声が聞こえた。途端に体育館内は静寂に包まれる。


「ティアナ・クルル、こちらに」


 しん······とした会場の中を、私はテクテクと歩きだした。周囲からは魔物を見るかのような凄い視線を突きつけられだが、彼の前まで歩みを進めると、ドアから出ようとする彼に着いてくるように促された。



 ドアをパタンと閉めると後ろからワッと声が聞こえた。

「何よあの娘?」

「どういうこと?!彼、弟子は取らないって言ってたのに!」



 廊下を無言のままついて行き、やがて個室に通された。椅子に座るように言われ腰を下ろすと、ヴァンゲンハイム魔術師は左手をドアに向けて翳す。一瞬で魔法陣が現れ、ドアが勝手にカチャリと音をたて鍵ががかかった。


「今ここは聴覚阻害の魔法陣が敷かれている。叫び声も漏れることはない」


 彼は部屋の中央の固い木の椅子に座った私の真ん前に立ち、片手を腰に当て、睨んでいた。


「お前、何者だ」



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