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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第11章 贄の魔女 【2】
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11ー3 十代目『贄の魔女』ティアナ 3

 


 翌日、図書館から魔術師に関する本を何冊も借りて、私は魔術師について調べ始めた。


 ノエルに「魔術師になる」と言ったら、「魔法を使える魔女がわざわざ魔術師になるの?」と突っ込まれたが、魔法使いも魔女も絶滅したと云われている現代に、両親に「私魔女なんで就職しません」なんて言ったら、いくら親バカのうちのパパとママでも確実に悩むだろう。病院に連れて行かれそうだし、そもそも現実的にお金も稼げない。


 魔術師を目指すのはあくまで就職の一環であり、魔力という得意分野を活かす唯一の手段だからである。


 私は自室のベッドに寝そべりながら頬杖をついて借りてきた本を眺めていた。

 ノエルは私に張りついたまま一緒に寝転んでいる。


「魔術師になるには、師弟制度を利用し、弟子入り後3年間の教育を師匠と弟子会から受ける······」

「··········」

「教育修了後、師匠の推薦を魔術庁に提出のうえ、国家試験である魔術師資格試験を受験すること······」

「··········」

「うっそ?!筆記試験、魔術の実技試験、銀の剣の剣術試験、面接まであるの?!」

「········本当に魔術師になるの?」

「なるわよ!筆記はともかく、剣術試験はいけると思うんだ。私、師範に褒められたし。あとは、魔術の実技試験かあ。魔術なんてやったことないけど、魔力を使うんでしょ?魔法と同じかなあ。なら、パワーはないけどある程度もう使えるし」

「·········ティアナがいいなら、いいけど」


 アルとしての記憶が私に戻ると、あの頃覚えた魔法は自ずと使えるようになっていた。ただ私は技術力とパワーが昔から足りない。アルだった頃から、魔力目当てに寄ってくる妖精との交渉は多かったから、魔法の種類だけは馬鹿みたいに知っていたけれど。


 読んでいた本をペラペラと捲りながら私はニヤリと笑った。


「資格試験は難しいから何度でも受験できるんだってさ。弟子になってまる3年は受験出来ないでしょ。で、受験可能になってから大体合格するまで5年くらいかかるんだって。そうするとさあ」

「うん」

「弟子に入って8年ぐらいは何にも言われないってことじゃない?ひひひ。弟子の間は、師匠の家で住み込みだから衣食住は安心だし。最悪魔術師になれなかったら、適当なところで切り上げてメイドで雇って貰おう。うん!そうしよう!」

「そんな簡単に弟子になれるの?」


 読んでいた本をパンと音をたてて閉じた。


 ノエルは私の背中に頭を擦り付け、ゆるゆると魔力を食べていた。


「まあ、当たって砕けろでしょ。どの魔術師がいいかなあ」


 今度は『国家魔術師一覧』を開いた。丁寧に描かれた各魔術師の姿絵と簡単なプロフィールを見ながら、ページを捲る。


「わあ!見てノエル。この魔術師さん綺麗だね!こっちの魔術師さんは怖そうだなぁ。こっちの人は、ゴリラみたい·······せっかくだから、若くて格好いい人が師匠ならやる気出そうなんだけどなあ」


 完全に見た目で判断し始めた私は最後のページでふと、手を止めた。


「·······かぁっこいい······!凄い!絵本の中の王子様みたい」


 描かれた姿絵には、アイスブルーの長い髪と、濃紺の煌めく瞳の高身長の男性魔術師が描かれていた。


「ハインリヒ・ヴァンゲンハイム·······」

「ヴァンゲンハイム·······?ティアナ、その家は······」


「決めた!この人のところに行こう!······弟子の申し込みってどうやってするの?」

「·········わかんないよ」


 私はまた、違う本を開き始めた。


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