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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第10章 師匠の告白
93/139

10-3

 


「お誕生日くらい私が払うって言ってるのに」

「悪いが、女性に払わせるなんて断固断る」


 店で会計をしようと私が財布を出すと、ハインリヒ様に先にお金を出されてしまった。


 ハインリヒ様は以外と古い考えの持ち主だ。貴族ならいざ知らず、平民同士で男が必ず払うとかそんな意識は無いものだが。いや、まて。彼は王族だったっけ。王族の金銭意識ってどうなんだろう。私にはよく分からない。


「この間の購買の分も倍になってお金渡してくるし。私が買うって言ったに」

「フン。俺の隣にいて、金を払おうだなんて余計なこと考えるんじゃない」


 なんで威張ってるんだろうこの人は?


「いいもん。次は必ず私が買うって決まってるんだから」

「どこに行く気だ?」


 口を尖らせながら二人でてくてくと城下町を歩く。足元はまだ溶けきってでいない雪が凍って滑りやすい。私は訝しげなハインリヒ様と手を繋ぎながら次の目的地に向かった。


 大通りから小道に入り、小さな商店が並ぶエリアに入ったら、いわゆる平民街だ。ハインリヒ様はキョロキョロと辺りを見回す。


「この辺りはあまり来たことが無いですか?」

「ああ。サミュエルやアルレットに弟子時代に何度か引っ張られて城下町に来ていたが······この辺は初めてだな」

「お店はみんな小さいですが、店先に沢山商品が並んでいて面白いでしょう?」

「凄いな。こんなに商品も店も並んでいるのか」

「あ、ここです!私の行きつけの店です」


 着いたのは服飾品がズラリと並んだ店だ。


「これを買いに来たんです」


 手に取ったのは紺色のリボンだ。縁を金色の刺繍が丁寧に入れてあり、普通のリボンの倍の値段がする。


 彼のリボンだけはいつも絶対私が買うと言い張っているため、ようやく今日初めて財布を出すことが許された。


 馬留めに戻り、馬車に乗り込むと私たちは帰路につく。手袋は脱いだが、手は未だ繋いだままだ。


「屋敷に戻ったら、早速リボンつけてもいいですか?」

「ああ。楽しみだ」


 雪で足場が悪くなった道をガタガタと馬車は揺れながら、ハインリヒ様は私の肩に頭を乗せて屋敷へ戻った。



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