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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第9章 レプラコーン
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9ー9

 


 私はわざと口をへの時にしてレプラコーン達を睨み続けた。


 すると緑の帽子を被ったレプラコーンが

「魔女、だいせいかーい!」

 と言って両手を上げ、続いて残りのレプラコーンたちも手を上げて踊り出した。


 途端にまばゆい光に包まれていた部屋が光を失い、天井まであったが黄金は無くなり、金貨が合った場所には汚れた古い小銭か幾つか置いてあるだけになった。


 部屋の中央部分には、それでも古ぼけたネックレスや銀の剣、指輪や、ピアスなどがバケツ一杯程度の小山で置かれていた。


「嘘だろ?あれも魔法だったのか?」

「すみません、ハインリヒ様。これ、彼等の交渉の一環なんです」

「え?最初からわかってたのか?あれが魔法だと」


 私は少し笑って、ハインリヒ様を古ぼけたアクセサリーの山のほうに促した。


「『財宝を欲しいなら真実を見抜け』、『嘘を見抜けぬ人間に真理は教えない』。初代の『贄の魔女』であった頃に出会ったレプラコーンから魔法を教えて貰ったんです。彼等は幻影魔法が得意なんですよ」

「本物かと思った」

「ふふ、見て?ハインリヒ様」


 じゃらじゃらと古びたアクセサリーを手にとって見せた。ほとんどは落ちていた片方だけのイヤリングや、チェーンの切れたイミテーションの宝石のネックレスなど価値など無いに等しいものばかりだ。


「あはは、見て見て!ハインリヒ様。古い魔術庁のエンブレムキーのネックレスだ。こんなにいっぱい」

「やっぱり落とした魔術師がいたんだな。ピアスにして正解だな」


 二人でくすくすと笑いながら汚れて価値の無いアクセサリー達を眺めた。


「大昔はどうだったかしりませんが、レプラコーン達が今集められる金属なんてこんなものです。それでも彼等には光輝く何か大切なものに見えるんですよ。」

「なるほど」

「宝物かどうかなんて人によって違うんです。私達にはガラクタにみえても、彼等にとっては貴重なものなんですよね。大昔は、人間が宝物だと思ったものと、レプラコーン達が宝物だと思ったものがたまたま一緒だっただけなんですよ」


 置いてあった銀の剣に目をやる。これも恐らく魔術師が置いていったものだろう。


「さあ、ハインリヒ様?欲しい物はありましたか?」

「ははは!これを事務官に提出したら、俺たち気が狂ったと思われそうだな」

「フフ、そうですね。じゃあ私はこの指輪にしよっかなー。まだ使えそうだし······」

「ダメ」


 少し古めのリングを手にしようとして、ハインリヒ様に手首を掴まれた。


「ハインリヒ様もこれが良かったの?じゃあ、私は······」

「ティアナが使う宝飾品は全部俺が買うから。勝手に他のものを着けないで」

「はい?」


 ハインリヒ様はゆっくりと片膝をついてから、私の手を取って見上げた。


「俺の宝石はティアナだから。俺の宝物はティアナだけだから」


 真っ直ぐに私を見る濃紺の瞳には照れは一切無かった。


「俺の宝物には、自分で決めた宝飾品で飾りたいんだよ」


「ハインリヒ様······」


「宝物は大切にしないと。大事にしないと。壊れるのも傷つくのも嫌だから。だから、俺が守るよ」


「······なんか、どっかで聞いた台詞ですね」

「今だから言うけど、結構胸に残ったんだよ」


 そのまま手の甲に軽くキスを落とすと、フフと彼は笑った。


「ハインリヒ様?!あわわ·····!は、恥ずかしいって言ったばかりなのに」


「嫌だった?」

「い、嫌、ではないんです、けど」

「恥ずかしいの?」

「·······はい」

「ふふ、可愛い」


 するりと膝裏にハインリヒ様の長い腕が通ると、そのまま抱き抱えられ、ふわりと身体が浮いた。


「じゃあ、そろそろ魔術庁に戻ろうか。報告書には、『道に迷い宝飾品は見つけられませんでした』と書かないとね。なんとかうまくでっち上げないと」

「ハインリヒ様、報告書に嘘書くの慣れてきましたね」

「お前のせいだぞ。ま、今は気分がいいからそれくらい書いてやるさ」


 クスクスと笑い、私達は転移門から魔術庁へ戻った。



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