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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第8章 師匠の奇行
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8-13 sideハインリヒ

 


 彼女を部屋のベッドに寝かせると、すうすうと気持ちよさそうにしていた。


「ノエル、いるか?」


 暗闇から赤い二つの光がキラリと光り、ノエルが音も無く現れた。


「······人間達といるんじゃなかったの?」

「そのつもりだったがな、ティアナが寝てしまったからお開きだ。お前、着替えたのめるか?」

「····いいけど」


「·········私が邪魔じゃ······ですか······」


 寝ているはずの彼女から声が聞こえて、驚いて顔を見た。


「ティアナ?起きたのか?」


 いや、彼女の瞼は閉ざされたままだ。夢を見ているのかと思い、頬を指で撫でるとポロポロと涙が零れた。


「ティアナ?」


「この命が尽きるまで······あなたが私を必要としてくれるなら······ニクラス・ヴァンゲンハイム様·····」


 男の名が急に出て、俺は頭が混乱した。

 それに俺はその男の名を知っている。しかし何故彼女がその名を?


「ノエル、何だこれ。ティアナはなんの夢をみてる?何故この名を······」


「記憶を思い出してるんだよ。ティアナの魂は魔女としての過去を全て記憶しているから、日々少しずつ夢を通して思い出してる。今日はニクラスの名前が出たから、ヴァンゲンハイム家は初代の当主、『贄の魔女』の方は2代目の頃かな」


「だって、初代の『贄の魔女』の記憶しか無いって」


「いままではね。エレオノーラが、寿命を対価に契約をしたんだよ。初代の魔女の記憶しか思い出せないなら契約をもって確実に記憶を呼び起こせるように。アレクシスから聞いでしょ。次の魔女には全て思い出してもらうってエレオノーラが言い残した事。実際には全てじゃないけどね。範囲はもっと限定して契約してる」


「ティアナは、魔女全ての記憶を思い出すのか?」


「もう、だいぶ前からランダムに始まってるよ。初代の記憶ですらティアナは辛さで何度も泣いていたけど、残りの8人の記憶を呼び起こしているんだ。ティアナは何度も自分の過ちと向き合い、泣き叫んでいる。最近は頻回になってきているね」


 ノエルの言葉に動揺した。今までだって、ティアナは夢に魘されその度に一人俺のシャツを握りしめて耐えていたというのに。


「なんとかならないのか、こんなの可哀想すぎる」

「何にも出来ないよ。彼女自身が願ったことだし」

「でも、こんなに泣いているのに······!」


「僕は記憶を消してしまうことも改竄することも勧めたんだよ。そんなに辛いなら無かったことにしてあげるって。そしたら逆に怒られたんだ。友達の記憶を勝手に覗くなって。消すのも変えるのもダメだって」


「······契約、と言ったな。お前達は友達だから、契約が無くても利益の交換をするんじゃなかったのか?ティアナの願いを聞いてあげられたんじゃないのか?」


「ふん。何にも知らないただの人間が、僕に知ったような口をきくな。自身の来世にかかる願いは、いくら友達と云えど僕は動けない。必ず契約がなければ動けないんだ」


 一度呼吸を整えてから、冷静になろうと心を静めた。来世にかかる契約。エレオノーラは寿命と引き換えに願ったのなら、それ以上の追加の契約はないはず。だけど·····。


「一応聞いておく。『贄の魔女』との契約はそれだけだよな?寿命と引き換えなら、他に契約はしてないんだよな?」


「してるさ。全部で9回だ。全ての魔女は寿命と引き換えに僕に願いを伝えてきた。だからいつも寿命を待たずに死んでしまう」


「な······なんだよ、それ」


「ティアナはね、歴代の魔女の中では実にイレギュラーな存在だったんだ。契約のほとんどはお前らヴァンゲンハイムの人間を守るための願いだったけど、前提条件として、お前らヴァンゲンハイム家側から召喚魔法陣で『贄の魔女』を呼び出すことが必要だった。毎回転生する度に確実に契約は履行されてたけど、今世は違う。履行出来ない。ティアナがまさか自分からヴァンゲンハイム家に弟子入りするなんて、前世の魔女達は考えつかなかったんだろうね」


「つまり、今はまだ履行されていない契約もあるってことか?」


「そうだね。だけどそんなの些末な事だ。僕が実行しようがしまいが、どうせ全部思い出すんだから。喜べばいい。おそらくティアナの代をもって『審判の魔術師』からヴァンゲンハイムは解放されるよ。ずっと嫌だったんだろう?良かったじゃないか」


「良くない······その為にティアナは苦しんでいるのに!」


「仕方ないんだよ。『審判の魔術師』を安易に作り上げてしまったのは、魔女の方なんだから」


「どういうことだ?『審判の魔術師』は王命に従い代々のヴァンゲンハイム家当主が引き継いで······」


「最終的にはそうなったね。だけど、そもそもこの制度がどうやって始まったと思ってる?横行する魔術犯罪の対策に頭を悩ませていた初代のヴァンゲンハイム当主ニクラスのために、2代目『贄の魔女』ローザが、嫌われものの役割を買って出たんだ。ニクラスをどうしても助けたいとね」


「嘘だろ······」


「最初に仮面を被ったのはヴァンゲンハイムなんかじゃない。『審判の魔術師』は魔女の方だ」



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