8ー9
雪はしんしんと降り続けていた。
冷えたハインリヒ様の手が肌に触れる度、ゾクゾクとした痺れが体を包んで、口から出たことの無い声が出る。
「はぁ、はぁ·····やあ······っ」
心拍数が上がり、呼吸が酷く乱れ始めた時、露天風呂用のビキニの背中の紐をハインリヒ様は軽くつかんだ。
「紐を解いたら、全部見えそうだな」
「見えそう······って言うか、見えちゃいます····!離してくださいよ····っ」
肩で呼吸しながらハインリヒ様に反論したが、全く気にもしてくれない。
「散々無防備な姿を晒してたくせに」
「?······何の話ですか?」
背中の紐の内側からスルリと大きな手が這い出し、また声が漏れる。
「やめ····っ······やあん!」
首筋をベロリと舐められ、私の体が震えると、ハインリヒ様は顔をしかめながらどんどん呼吸を乱していく。長い腕が背から腹に周り、もう片方の手で顔を掴まれた。
「はあ、はあ、お前····煽っただろう?足は出すわ、胸は出すわ、挙げ句朝っぱらからくっついて、体を擦り付けて来ただろ····っ」
何だそれは。何処の痴女の話だろうか。
「ちが······っ」
「違わない。お前が俺にしてきた事だ。お前はいいのに、俺がやったらダメなのか?」
「······ハインリヒ様は····っ!真面目で、優しくて······っ··ああ!」
耳を食まれ、くちゅりと水音が脳を支配する。体が揺れる度にお湯も揺れ、風呂からパシャンと音を立てて流れていく。
「俺は別に真面目じゃない····お前に振り回されてるただの男だ」
「振り回した訳じゃ······」
「少し位、お前も俺に振り回されろよ」
「あん······!舐めないでください····っ」
「そんなに甘い声出しやがって····約束しろティアナ」
「はあ、はあ、······何を····」
真正面に向き合うと、ずれた肩紐部分に顔を寄せるハインリヒ様は強く肌を吸う。チクリと痛みを感じたがそれ以上に甘い痺れが身体を包んで彼の二の腕に掴まっているのが精一杯だ。
「他の男に見せるな····!足も、胸もそんな簡単に出して······無防備な姿、他の誰にも見せるなよ」
「プールや温泉以外で出してないです!そんな簡単に見せてませんよ!何処の痴女ですか!」
「お前の事だ!全部俺以外に見せるなよ!」
「見せませんて!ハインリヒ様にも見せませんよ!」
「いや、俺には見せろよ」
「ハインリヒ様のえっち!」
「お前なんかただの変態だろ、ティアナ。じゃあ、俺の匂いも嗅がないな?もう二度と触れないんだな?」
「やだ!嗅ぎたい!触るもん!」
「何なんだよ······我が儘だな」
散々騒いだのち、私は茹でダコ状態のまま逃げるように部屋に戻った。
窓の外で雪は未だに降り続けていた。
水を飲んでも飲んでも火照りが引かず、私はベッドに横たわると、一気に眠気が襲ってきた。
リン······と鈴の音とともに白猫が頭の上にくっつき、指で腹をこちょこちょと擦るとペロリと手を舐められた。
「ハインリヒ様がおかしくなっちゃった、どうしようノエル~」
「にゃあ?」
ノエルの鳴き声が遠くに聞こえ、瞼があっというまに重く閉ざされた。




