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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第8章 師匠の奇行
74/139

8ー7

 


 部屋に戻ると頭に昇った熱がゆっくりと冷めてきた。コップにお水をついで飲んでから、ハインリヒ様に八つ当たりみたいな言い方をしたことを後悔した。しかも感情的になり、無意識に氷魔法まで使ってしまった。誰かに気付かれなかっただろうか。


「戻ってきたら何て言おう······」


 あんなの、明らかにあの女性達が悪いに決まってる。真面目なハインリヒ様は女性に下心なんかわかないもの。


 彼が悪くないのは理解してるけど、わかってるけど、でも、いまハインリヒ様の顔を見たら何故か八つ当たりをしてしまう。どうしてだかわからないけれどそんな気がする。


 深呼吸してから、『ララのところにいってきます』とメモを書き置いて、私は部屋を出た。


 ララやアルレット様としばらく部屋で話をして過ごしたあと、3人で夕食を食べる個室へ向かった。


 テーブルは2名一席の長テーブルがコの字型に3セット用意され、専門のシェフが目の前で料理を取り分けてくれるスタイルだ。


 サミュエル様とレナルド、ハインリヒ様は既に個室に来ていて、サミュエル様がレナルドと師弟で座っていたため、私も倣ってハインリヒ様の隣に座ると彼をは優しく笑って何を飲むか尋ねた。


 師匠方はみんなワインを飲みはじめていて、ハインリヒ様も白ワインを飲みながら談笑していた。


 ふと、お酒を飲む彼を見ながら、私は今日重要なミッションをこなす予定であったことを思い出した。


 そうだ。あんな二度と会わない風呂場の女性達のことを考えてもしょうがない。私は私の任務のため、ハインリヒ様のために最善を尽くさなくてはと、気持ちを切り替え軽く深呼吸した。


「美味しいですか?ハインリヒ様」

「ああ。お前は?さっきから何だか上の空だな」

「ん。いまから食べます。ワイン切れそうですね、次は何がいいですか?」

「じゃあ、赤を頼む。すまないな」


 グラスを変えてトクトクとワインを注ぐと、ハインリヒ様は有り難うと言ってまた飲み始めた。


 取り分けられたお皿に手をつけてモグモグと食べていたら、ハインリヒ様が私の食べる様子をじっと見ていた。


「何ですか?」

「いや、いつもはもっと美味しそうにたべるのに。味が合わないか?」

「いえ?とても美味しいですよ」

「そうか······」

「さっき、ごめんなさい。八つ当たりみたいに言いました。ハインリヒ様は悪くないのに」

「お前が来てくれて助かったよ。本当に困っていたから」

「でも、あの······」

「なんだ?」


「氷魔法使っちゃったんです。ごめんなさい·····」


 他の人に聞こえないように、手を添えて小さな声で耳打ちをすると、クスリと笑われ、テーブルの下でハインリヒ様の手が私の手に触れた。


「湯気で誰も見ちゃいないよ」


 テーブルクロスで外から隠れた私とハインリヒ様の手が、ゆっくりと重なりギュっと握られる。


 なんか······何だろう。

 恥ずかしくて顔が上げられない。


「ティアナちゃん、食べてるかーい?」

「は、はい!食べてます!」


 お酒でテンションの高いサミュエル様の問いに元気よく答えると、私は片手でフォークをもち、口に突っ込んでモグモグと食べた。


 斜め下からまたハインリヒ様が顔を覗きこんで微笑んだ。


「美味しいか?」

「お、美味しいですけど、食べにくいです。手を離してもらえませんか?」

「ふふ。もう少しだけ」


 ワインを片手に持つ彼の手は、いつもより熱が高い気がした。



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