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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第7章 ユニコーン
62/139

7-4

 


 清らかな乙女案を早々に諦めた私は、すぐさま腰の銀の剣をスラリと抜き、空に掲げた。


 剣先まで一気に魔力を纏わせると、ユラユラと金色の魔力が靡く。


「ほら、見える?これなら興味湧くでしょ!あなたの大好きなな魔力よ!」


 清らかと認めてもらえなかった腹いせで、半ばやけくそ気味に体内の魔力を放出させると、ぼうっと金色の泉のように剣先から魔力が吹き出し、誘うようにゆっくりと剣を振った。


 ユニコーンが駆けてきたのは直後のことだった。私はすっかり失念していた。ユニコーンの走る速度はとて速いことを。


 距離はあったはずなのに、あっというまに詰められた。一直線に駆けてきたユニコーンに、思わず飛翔魔法を繰り出し、空を飛んで避けた。


「うわああっ!はっや!」


 クルンと宙で一回転し、体勢を整えたところで一瞬、ユニコーンを見失う。


「うそ、どこに······」

「ティアナ!後ろだ!」


 ハインリヒ様の声でハッと振り返るとガブリと腕を噛まれた。


「いっだ····っ」


 グイっと引っ張られ、痛みで力が入らない。魔力がユニコーンの口元から奪われるのがわかり足だけバタバタと暴れたら、そのまま水面にバシャーンと音を立てて叩きつけられた。


 ブクブクと空気が口から漏れ、うっすらと水中で目を開けた。


 仮にも私は乙女よ?腕を噛んで湖に投げ入れる?!ふざけんな!


 メラメラと闘志が沸き上がり、勢いよく飛翔魔法で空中に飛び出した。


「はあ、はあ、はあ」


 ずぶ濡れで荒い呼吸を整えながら浮上すると、手をパシッと掴まれた。浮遊の魔法陣で足場を作っていたハインリヒ様はそのまま私を抱き抱える。


「もうやめとけ、俺がやる」

「私がやります!」

「腕を噛まれただろ?怪我が悪化したらどうする!」

「まだ攻撃もしていない!私がやる!」


 酷く感情的になり、グイと彼の胸を押し退け、飛翔魔法で斜め上にギュンと飛んだ。


 銀の剣を構えると、すぐにユニコーンは翼を羽ばたかせて私に向かってきた。ハインリヒ様も火炎の魔法陣を展開したのが見えたが、ユニコーンが翼をバサリと強く羽ばたかせると、魔力を含んだ風が魔法陣を消しさった。


 わ、私から吸った魔力で威力があがっている····!


 ユニコーンは旋回すると、私の手から出た火魔法をスルとくぐり抜け足の蹄で剣をガツンと蹴ってまた空を旋回した。


 手元から吹き飛んだ銀の剣が高く宙に舞い、ハッと空を見上げた瞬間、一瞬の隙だった。


 ガブリと脇腹に歯をたてられた。咥えられた箇所からまた勢いよく魔力を吸われる。


 ユニコーンに牙はない。だか、強い顎で噛まれると場合によっては骨が砕かれる。


 ハインリヒ様は、火炎の魔法陣を繰り出しつつすぐに魔物専用の投網をこちらに投げたが、ユニコーンは私の体を引っ張りながら大きく宙に駆け出す。網は掠りもせずに地上に落ち、火炎をひらりと避けられた。


「ぐうっ···っ」


 そのまま口に加えられ、空高く走り出す。お腹の圧迫感を感じる。じわじわと魔力が抜かれる。


「ハインリヒ様ああ!!」

「ティアナ!」


 地上で私の名を呼ぶ声が小さく聞こえたが、そのままユニコーンに咥えられてなす術もない。


「離せ!バカあ!」


 両手をバタバタと振り回していると、ユニコーンは散々空を駆けた後ゆっくり旋回し、地上に降りようとしていた。


 ユニコーンが向かう先には森の入り口と、真っ黒な髪をした男性が立っているのが見えた。


 バザバザと羽を揺らしながらユニコーンは地上に降り私はドサリと地に吐き捨てられた。


「がは····っ」


 ユニコーンの口の圧迫感から解放された途端、血が巡り一気に傷の痛みが押し寄せ、口からポタポタと血が落ちた。咥えられた拍子に内臓をやられたかもしれない。


 私はゆっくり、視線を上に向けた。


 人·····人間が見ている。

 ならば今は魔法は使っちゃいけない。ノエルも呼べない。


 はあはあと、荒い息のまま黒髪の男性に声をかける。


「あの、ユニコーンが近くにいるんです。危ないから逃げてくだ·····」

「······ハインリヒ・ヴァンゲンハイムの弟子だな」


 男性は私を見ながらゆっくりと近づいた。


「······誰?あの····」


 聞き返そうとして、また胸が詰まりそうになり、咳き込むと血が出た。


 これは、本格的にヤバいかもしれない。

 取り敢えずここから離れないと何も出来ないので、何とか立とうと悶えた時だった。


「王家の血筋の魔術師······ならば弟子のお前も王家の者の可能性があるな」

「な·····っ」


 弾かれたように見上げると、私を睨み付けながら口角がゆっくりと上がっていくのが見えた。


 ゾクリと背筋を駆け抜ける電気が走る。


 ここは立ち入り禁止の国有地。今日ここに来るのを知っているのは魔術庁の職員しかいないのに。


 いや、それよりも······


 何故彼はハインリヒ様が王族だと知っているの。


 彼が王家の者だったのは、一部の者しか知らないはず。箝口令がしかれていたのに。


 魔法の発動よりも先に、血が零れた口が動く。


「ノエル、助けて·····っ」


 掠れた声で彼を呼んだ。




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