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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第6章 贄の魔女 【1】
58/139

6ー5 初代『贄の魔女』アル sideノエル 2

 


 アルの言葉が放たれ瞬間、僕は彼女と唇を重ね、魔力を一気に飲み込んだ。生きるための最後の一滴まで、甘美で蕩ける魔力を吸い尽くす。


 崩れるようにアルは死に、ゆっくりと魂が体を離れ出す。


「対価は貰った。契約は成立だ。これで君は転生後もおんなじ魔力だ。願いは成就されるよ、アル。君の魂も魔力も変化出来ない。僕がさせない」


 肉体と繋がっていた魂の尾が緩んだ瞬間、僕は僕の魔力(ちから)の一部を巻き付け魔法をかけた。きつくきつくほどけぬように。


 そして、ゆっくりと輪廻の輪に魂を解放する。


「きっと君は、来世も豊富で濃厚な魔力を抱えたまま、魔物達に狙われて、また人間たちに苛められるだろう。だから人間の性と身体が成り立つ13才までは魔力を封じたままにしてあげる。食べ頃になったら、一気に魔力は吹き出てしまうだろうけど、人間達に苛められても僕が必ず助けにいくよ。溢れ出る魔力も、また僕が食べてあげるから······」


 魂の無い抜け殻のアルの手を、自分の頬に擦り付ける。さっきまであった筈のアルの熱も脈もうそこにはなかった。


「僕の願いを叶えてくれて有り難う、アル。契約者として君に告げよう。僕は冥府の王。名前は無い。生死と魂を司る闇の支配者だ。天壌無窮 (てんじょうむきゅう)の幽冥の(あるじ)と眷属は呼ぶ」


 アルの魂は僕の言葉をレクイエムにして転生の準備のために僕の治める世界へとゆっくりと旅立つ。あちら側は君たちにとっては只の通過点に過ぎない。肉体を持たない向こう側では君の魔力を食べることは出来ない。


「そして君は僕の最初で最後の友達だ。君が『人間』として愛されたいなら、変わらない君のためにこの地の人間達の方を変えなくちゃね。君が生きやすい場所にこの地も国も、人間達も作り替えさせなくちゃ。何があっても君を助けるよ。それが君の最初の願いだから」


 糸の切れた人形のようなアルを抱きしめた。


「僕達、永遠に友達だよ。何度生まれ変わっても、ずっと、ずっと」



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