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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第4章 師匠の師匠
40/139

4-3

 


 重心を低く走り出したまま、間合いに入ったと同時に大きく真横にズバっと剣を振るった。剣先が触れるか否かの距離で躱すアレクシス様に反対の手から火炎の魔法陣を展開し、火で襲う。


「うーん、魔法陣の展開が遅いなあ」


 動きながらも私の手元を気にする余裕は流石だ。息つく暇なく私はそのまま体を捻り、ダン!と一歩踏み出しまた剣で突く。ひらりとこれも躱された。


「僕からも攻撃してみようか」


 にこりと笑いながら宙を舞うアレクシス様は一瞬空に手を掲げた。魔法陣の展開が見える前に、光線のような一縷の雷が耳元をかすり、耳側の髪が少し焦げた。


「あ!ごめん!女の子の髪を少し焦がしちゃったよ!」


 陣が見えなかった。展開が早すぎる!


 地を蹴り、ぐるんと一回転して間合いから大きく外れた。


「はあ、はあ······」

「ごめんね、大切な髪を····!熱くなかった?」


 片足をトントンとリズムを取りながら、どう攻めようか考える間も、アレクシス様は焦がした私の髪に終始謝り続けていた。


「失敗してもいいから、どんどん魔法陣使ってみてね。見ないとわからないんだ」


「わかりました!行きます!」


 私は銀の剣を手放して走り出した。

 左手で火炎の、右手で雷の、魔法陣を展開し時間差でアレクシス様に発動する。


「そうそう、どんどん展開してねー」


 私のショボい魔法陣からは、揺らめく火と目眩まし程度の雷しか出てこないが、アレクシス様は楽しそうに見ながらするりと躱していった。


「陣形が歪んでるよー。もっと、集中集中」

「ふぐぐぐぐ!」


 口答えをしながら、ざっと身を低くし、足払いをかけたが、ひょいと軽く飛んでまた躱される。


「うー!レナルドには通用したのに!」

「ふふ、たのしーなぁ」


 剣を床から拾い上げて、ふーっと呼吸を整えた。

 よぉし。質で駄目なら数で勝負だ!


 ダッと地を強く蹴り、駆け出した。勢いよく突っ込み、剣を突きまくる。


「剣の腕前はあるね。いいね」


 ひらりひらりと体を捻り、すんでのところで躱され、息つく暇なく魔法陣を展開した。

 左手から繰り出される魔法陣からの水飛沫を避けニコリと笑うアレクシス様に右腕を前に伸ばし胴を刃で突こうと歯を食いしばるも、彼は踊るように体を捻り、剣はヒュッと空を斬る。


 息が荒くなる私。笑うアレクシス様。


 明らかな力の差にただただ体力ばかりが失われていく。それなのに。


 すごく楽しい。ワクワクする。


 何故かはわからない。私は負けている。楽しむ余裕なんてない。だけど、この人の一挙手一投足に目を奪われ、あまりの練度に息を飲む。


 剣を次から次に突く。手元を狙い避けられ、首を狙い躱され、アレクシス様はまた笑った。


 彼を見ながら私はいつの間にか笑みが零れる。


 流れる汗を感じながら、自分に言い聞かせる。


 相手をよく見ろ、考えろ。いつもの魔物の直線的な動きじゃない。


 何度も何度も火炎の魔法陣を発動しながら、私が出した小さな炎は彼の展開した魔法陣に音を立てて打ち消された。


 彼を見て。苦手なものは?弱点は?

 何がある?何かあるはずだ!


 その瞬間、知らない映像が頭をよぎり、意識が持っていかれ、私はその場に肩で息をしたまましばらく立ち尽くした。


「どうした?ティアナ?」


「···········」


 知らない感情に支配され、体は知らないうちに動いていた。




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