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「発動が遅い」
「すみません」
「ほら、また陣形が揺らいだ」
「ごめんなさい」
「謝る以外の特技はないの?ティアナ」
「犬を手懐けるのが上手です」
「それ何の役にたつの」
魔術処置室で午後の仕事を手伝いながら、私はハインリヒ様のキツイお言葉を頂いていた。横に目を向けると完璧な魔法陣を展開し、完璧に魔力をコントロールする完璧な師匠が、魔術庁に持ち込まれた『呪いの人形』の魂抜きをしていた。
魂、とはいっても魔術で疑似人格を人形に埋め込んだだけの簡易的なものだ。いま私はの手元にあるこのテディベアの場合、定期的にニヤリと気持ち悪く笑う以外は何も出来ない粗悪品で、ハインリヒ様が私の魔術練習のために残して置いてくれた案件だった。
「ハインリヒ様の方の人形は動かなくなりましたね。さすがです」
「褒める暇があるなら、魔法陣に集中して」
「あ、見て見てハインリヒ様。なんかつぶらな瞳で微笑むようになりました!」
頭をガッと大きな手のひらで掴まれる。
「ティ~ア~ナ~、覚える気あんのかお前」
「あああああります師匠!痛い痛い!」
眼光が鋭くなる彼にすぐさま謝った。
「あと30分以内に魂抜き完了させろ。出来なかったら教本の『魂抜き』の章読み直しと構築式の書き取り、魔法陣の発動練習1時間な」
ハインリヒ様の脅しを受け、私は急に真面目に人形と向き合いガンガン魔力を出した。人形はだんだんと表情を無くし、コテンとテーブルに横たわるだけになった。
「はぁ、はぁ、30分以内ですよね?!ゼイ、ゼイ」
「そんなに魔力一気に出して、このあとの仕事出来るの?」
「これで終わりじゃないんですか?!」
「んな訳ないだろ。はい、あとこれ10体あるから。退勤までに処理して。出来なかったら休日に発動練習二時間ね」
「なんか増えてる!!」
「んじゃ、俺は執務室にもどるから」
「鬼!」
私は退勤までにヘロヘロになりながら与えられた仕事をこなした。




