表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第2章 クラーケン
20/139

2-7



「ああ、いいねー!夏だねー!海だねー!」


 海岸について、みんなで上着を脱ぎ水着になった後、突然サミュエル様が両手を上げて叫んだ。その視線の先には何故か私とララがいて、彼は私達を見ながらウンウンと頷いていた。何だか怖い。


「目をほじくり返してやろうか、サミュエル」


 ハインリヒ様は怒っていて毛が逆立っている。


「そんなに怒るなよ。ララちゃんもティアナちゃんもよく似合っているよ、な?ハインリヒ」

「似合ってますか?ハインリヒ様」


 サミュエル様の問いに被せて、私も聞いてみた。


「え······あ、似合っ······」


 ハインリヒ様の顔はみるみる赤くなる。彼は肌が白いから、水着になるといっそう顔の赤さが引き立った。


「ハインリヒ様のリボンとお揃いなんですよ」


 私の水着はハインリヒ様の瞳と同じ濃紺のワンピース型である。ホルターネックになって首の後ろにリボンがあり、背中は開くが下品にはならない程度だ。ワンピースの部分には白線が入っており、今日のハインリヒ様のリボンと同じストライプになっている。


「······っ!」


 顔を背けてしまったハインリヒ様の代わりにサミュエル様がにこやかに答えてくれた。


「いやー、可愛いよ!ティアナちゃん!ララちゃんもピンクのセパレートすっごくキュートだよー」

「あ、あ······有り難うございます」


 ララは驚いて頭を下げていた。すると私達の視界の端から黄金のスタイルのアルレット様と涙と鼻血を流すマティアスさんが現れた。


「落ち着きなさい、マティアス」

「ああもう、今なら死んでも本望です。アルレット様の水着姿を拝見出来る日が来るなんて」


 マティアスさんは私達には目もくれずアルレット様にぴったりと寄り添っていた。


「マティアスさんって少し変わってるの?ララ」

「あー、うん。アルレット様を信仰してる」

「アルレット様って新しい宗教の教祖なの?」


 アルレット様は黒のビキニを着ていらっしゃった。髪をアップにされているので、金髪のかかったうなじが殊の外セクシーで美しい。そして零れんばかりの大きなお胸と細い腰が際立ってスタイルの良さを証明している。足の細さも形の良いお尻もすべてが輝いていた。


「すごい綺麗······!いいなあ!あのお胸······」


 私も思わず釘付けになる。


「牛乳飲んだら私達もああなるかなあ」


 ララは自分の胸と比較しながら呟いた。


「牛乳も良いですが、日々の体操が大事ですよ、ララ」


 アルレット様は真面目に答えた。


 女性三人で腕を動かし、アルレット様から教えて頂いたお胸体操をやっている頃、男性陣は後ろで準備運動をしていた。マティアスさんだけはテキパキとパラソルを組み立て、アルレット様の日差し対策を施していた。




「師匠、クラーケンはどうやって誘き寄せるのですか?」


 レナルドは屈伸をしながらサミュエル様に問いかけた。


「うん、囮を使う。お前、クラーケン退治は初めてだったな」

「はい、師匠」

「クラーケンの好きなもの知ってるか?」

「······人間」

「そうだ。ここ最近はこのエリアの沖のほうに漁師達が行ってないから、クラーケンもだいぶ腹が減っているはずだ。海岸近くまで来ていた目撃情報もある。だから弟子4人で全力で海で遊べ。マティアスはアルレットにくっついてるだろうから、囮は実質三人だ。ヤツの姿さえ見えれば、浮遊の魔法陣で海岸に引っ張り込める。本当はお前だけを囮に使うつもりだったけど、やっぱり女の子が海辺で遊んでるの見たいんだよねぇ」

「へ?俺、囮?わ······わかりました」

「んじゃ、適当に女の子達を海に誘い込め。俺はクラーケン待ちだ」



 私も準備体操を終えて、ララとレナルドとそっと海の水に足を入れてみた。寄せては返す波とともに砂が指の間に入り込み不思議な感じだ。


「すごいねララ!」

「もっと進んでみよっかティアナ!」


 私達は膝丈まで海に沈めてみた。なんか面白くなってララと水を掛け合っていたら、レナルドが変な顔して突っ立っていたので無理やり引っ張って海の中にわざと転ばせた。


「わ!しょっぱい?!」

「海って水がしょっぱいんだね!不思議」


 ララはそう言いながら驚くレナルドにもバシャバシャと水をかけはじめた。


「わああ!お前ら!くっそ!くらえ!」


 レナルドも負けじと水をかけてきた。


「わ!しょっぱい!あははは!楽しいね!」


 海はどかもかしこも波がキラキラして本当に綺麗だし、水を掛け合ってるだけで凄く楽しい。弟子会では味わえない楽しさに私達は声を上げて笑っていた。


 しばらく遊んで全身ビシャビシャになった頃、突然、明るかった空が陰った。


「え?何?」


 キョロキョロと辺りを見回し、足元に忍びよった影に私は気づかなかった。


「きゃああ!!」


 一瞬の出来事だった。ララが水の中に引きずり込まれた。


「ララ!」


 私はララに飛び付いて辛うじて手を繋いだが、そのまま二人とも深いとこまで一気に引き込まれた。


 ガボガボと水と空気の激しい音が頭に響く。足をバタつかせても、引き込まれる強さになす術が無い。


 空気がなくて無くて苦しい。

 ララとは絶対手を離しちゃいけない。

 人前で魔法は使えない。

 ノエルは呼べない。


 混乱する頭の中で、突然海が割れた。


 空気だ。呼吸が出来る。


 さんざんむせたあと、目を開けると両手を翳し、二種類の魔法陣を展開するアルレット様が見えた。私とララは手を繋いだまま、海水が割れた空気の通り道のど真ん中にいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ