1-2
弟子会とは、魔術師の弟子達、つまり魔術師の資格を有しない師匠の元で勉強する半人前達が基礎学習する場である。
弟子と一言に言っても年齢は様々だ。私のような10代の弟子もいれば、上は40代の弟子もいる。魔術師の資格を貰うには師匠の元で3年勉強した後、国家試験を通過しなくてはならない。この試験が難しいため、一度で合格する魔術師は少ないのだ。
一人の師匠に大体複数人の弟子がつき、試験が合格次第順次独立していく。合格した魔術師達の勤務先や弟子達の勉強の場はまとめてみんな魔術庁にあった。
「おはよう、ララ」
「ティアナ!おはよう」
ララは私と同期で16才の女性魔術師の卵だ。私は誕生日がきたので17才になったが、同い年の弟子仲間ということで弟子会に入ってすぐに仲良くなった。ララの師匠は美しい女性魔術師で、ララは師匠に憧れてこの世界に入ったという。
「師匠の前で課題の盾の魔法陣やったら、爪でブスっと簡単に貫通されちゃって。私ダメかも······」
更衣室で練習着に着替えながらララは落ち込んだ。
「私も。魔術の腕があがらないから何時でもかかってこいって言われたのに、今日も朝イチから簡単に消された」
鳶色の長い髪をまとめながら私もため息をついた。
「なかなか上達しないね私達。でもうちの師匠めっちゃ綺麗だから毎日見惚れてる」
「アルレット様、お綺麗だもんね」
「ハインリヒ様だって、すごい綺麗だよ」
「あー······朝から女性に囲まれてた」
確かにうちの師匠は国宝級の美形だ。しかしアルレット様のあの美しさはまた別格だ。
「ハインリヒ様って当面ティアナ以外の弟子はとらないって宣言したんでしょ?恋愛もご結婚も興味がないって噂で聞いたことあるけど、あれかな。弟子を妻にして子どもをさらに弟子にするパターンかな」
「そんなパターンはあり得ない」
一刀両断して私とララは体育館に入った。
義務教育を終えた昨年の春から魔術師の弟子に入った私やララは弟子会の中でも一番年下だ。今年入った最年少の弟子は私達より年上なので、実質私達が弟子会の中でも一番下っ端なのだ。
ララとは下っ端同士、剣の相手や講義が一緒になることがほとんどだった。お陰で私はララと友達になれたのだ。
今日も金属音が飛び交う体育館で、ララとひたすら剣を振るい、全く上達しない魔術の鬱憤を晴らしていたら、後ろから練習を見ていた1つ年上のレナルドが笑いながら声をかけてきた。
「ティアナは、剣だけなら見れるのに、魔術を絡めるとてんでダメだな、ははは」
「そういうレナルドは魔術はともかく剣へたっぴじゃない」
「魔術師の本分は魔術だからいーんだよ」
えらそうにレナルドはふんぞり返る。
年齢こそ上だが、同じように去年の春から弟子になったレナルドは何かと私やララと話すことが多い。
ララに向けていた剣を下ろし腕で汗を拭うとレナルドが私に剣を向けた。
「ララ、交代しろよ。今度は俺がティアナとやる」
「ふん。いっつも偉そうに。覚悟しなさい」
魔術師の剣術は利き手で剣を、反対の手で魔術を使う。いざという時には、魔術で防御をしたり反撃が出来るようにしている。
私は小さな頃から普通に剣術は叩き込まれていたから、問題なのは魔術の技術だった。
私は右手で剣を構え左手に魔力を込めた。
一呼吸おいて、一気に間合いまで走り勢いよく胴をつくとヒュッと風を切る音がし、レナルドが即座に魔術で防御陣を張った。ギィン!と金属音が響き、私はそのまま素早く左手をレナルドの目の前にかざしたまま目眩ましに電撃を放つ。
「うぉっ?!」
のけ反るレナルドにすかさず足払いをかけて一気に転ばせた。
「はい、私の勝ち~」
「汚ねえぞ!足払いなんで······」
魔術で足りなきゃ体を使うまで。運動の苦手な頭でっかちのレナルドのようなタイプにはこれが一番早い。
「きゃー♡ティアナ格好いい!レナルドださーい」
ララの黄色い声援を受けて、私はニヒヒと笑い、次の講義室に移動することにした。
「次は勝つからな!」
「負けないもん」
その場に尻餅をつくレナルドを放置し、私はララと更衣室に向かった。




