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数日たった頃、魔術庁内に激震が走った。
魔術師の弟子が、師匠の許可なく自身で構築式を変えた魔法陣を使って魔物の弱点を克服させ魔術庁を混乱させていたと魔術公安から文書が流れた。
すぐに魔術庁人事部から公示がでた。ノルデン本人は未来永劫魔術の使用を禁止し魔術庁への出入りを禁じられ、師匠は3ヶ月の謹慎及び減給が決まった。
「あんなの、罰としては弱すぎるよ!」
弟子会に来ていたレナルドは、教本を机に叩きつけて怒っていた。
「人を殺した訳じゃないんでしょ?妥当じゃない?」
「ララはわかってないね。ああいうのは徹底的に懲らしめなきゃダメなんだ」
鼻息を荒くするレナルドを横目に見ながら、私も鞄から教本を机に出した。
「でもさあ、魔術庁でできる罰則なんて魔術に関することだけでしょ?あとは一般警察の方に引き渡されたあと裁判が始まるだろうし、罰はそっちで決まるよ」
「いーや!魔術庁として魔術による身体罰をつくるべきだね」
「レナルド怖いよ」
「いいか、ティアナ。魔術師界隈では昔から都市伝説として語られる噂があるんだ、『審判の魔術師』って知ってるか」
「なにそれ」
私はなに食わぬ顔で聞いていた。
「魔術師の罪を判じる魔術師のことだよ。噂だと魔術公安の中の人が代々『審判の魔術師』をやっているらしい。魔術師しか対応出来ないような事件は警察より前に『審判の魔術師』が罪を裁くらしいんだ。場合によっては殺しも許可されてるとか」
「へー」
「今回の事件なんか、魔術師の信用失墜だけじゃない、僕らだって危ない目にあったんだ!こんな時こそ『審判の魔術師』が罪を裁くべきだよ」
「レナルドならどういう風に裁くの?」
「永遠に牢屋に拘束」
「怖······っ」
「ノルデンさん、優しい人だったのに。私の間違った文章直してくれたことあったよ」
ポツリとララがこぼした。
「私も模擬試験の点数悪かった時、飴もらった。一緒に頑張ろうって言ってくれたな······」
私は、あの日のノルデンさんではなく、同じ弟子会で勉強しあった優しい先輩の彼を思い出していた。
「レナルドなら、ノルデンさん永遠に牢屋に拘束するの?本当に?」
ララは伺うようにレナルドに尋ねた。
「······俺も、優しくしてもらった。やっぱり公平な裁判で裁いてもらいたい」
私はぼんやりと講義を聴きながらノルデンさんのことを考えた。
罪を犯した人間全てが本当の悪人だったら、こんなに悩まなかったのに。




