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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
強狂怖大森林
9/66

冥界、そして創世と創生

 気が付けば闇の中、ポツンと一人存在していた。

 暗闇など生温い程の真の闇の中、立っている訳でも寝ている訳でもなく上も下も右も左も、方向感覚の皆無な無重力の中にいるようだ。

 闇の中と言っても不思議と自分自身の身体はハッキリと見て取れる。俺自身発光している訳でもないのに、どういう原理なんだろう?周りのものは一切見えず闇が広がるばかり。


「ここは何処だ?俺死んだんじゃないのか?ここが死後の世界なのか?」


 疑問が口に出てしまう。当然返ってくる返事はないと思っていた。


「ここはお前自身と言ってもいい場所だ。死んだわけではなく只、肉体を破壊されただけだ」


 肉体を破壊されれば死ぬだろうとは思ったが、それより何より誰なんだ!


「だ、誰だ!?俺自身とはどういう事だ!肉体を破壊されて何で生きていられるんだ!」

「私が誰かかはどうでもいい。お前自身とは言葉の通りだ。生きているのはこの世界(お前自身)が存在しているからだ。謂わば偽りの肉体を破壊されたに過ぎない」


 この何も無い闇の空間に俺以外の声が響く。言ってる事はチンプンカンプンで意味が分からないが、敵意は一切感じられない。少なくとも俺の敵ではなさそうだと何となく理解できる。

 言うなれば親父を前にしているような感覚に近い。


「言ってる意味が分からないな。世界って、俺は此処にいるじゃないか」

「今のその姿は世界の具現化した姿、破壊された肉体は、この世界の化身といえる存在だ」

「な、俺がこの世界の化身だと!?そんな訳あるか、二日前まで只の、極々普通の人間だったんだぞ。そんな俺がいきなりこの世界そのものです、何て言われて分かりました!何てなる訳ないだろ」


 この世界が俺自身って意味分からん。俺の意志は俺に有り世界に有る訳ではない。


「お前がそう思うのは人としての常識に囚われているからだ。意識の深淵を覗きみよ。さすればお前も私の姿が見えるだろう。話はそれからだ」


 深淵?そんなこと言われても分かる訳がない。そう思うのが常識に囚われていると言うのだろうか?

 取り敢えず瞼を閉じ静かに深淵とやらに潜り込ませるイメージで意識してみる。

 更なる闇に落ちていく感覚。深く深く落ちて底の無い闇に恐怖を覚える。体の自由は利かず落ちるに任せて、気の狂う程の自由落下。声も出ず叫び声すら上げられずにひたすらに落ちていく。


 ………………。


 どれ程の時間落ちていったのか分からない。永遠に続くと思われる落下、だが不意に落下の感覚が途絶え、辺りを見渡すと驚くべきことにそこには俺自身が立っていた。

 俺はそこに立ちじっーとこちらを直視してくる。自分にじっと見られるのは奇妙な感覚だ。

 声を出そうとしても声は出ず、触れようと身体を動かそうとも出来ず、只々その場で向かい合い立ち尽くすのみ。


 どれ程こうしていただろうか、不意に対面する俺は動き出し俺の肩に触れた。


 !!!


 触れられた瞬間に理解した。コイツは俺自身だ、そっくりさんでもドッペルゲンガーでもなく、間違いなく俺なのだと。嘗て味わったことのない感覚、うまく表現できないな。


 俺は触れた。触れた所が吸い取られるように一体化する。否、俺が吸い取られると同時に()を吸い取っているようだ。


 そして遂には一つとなる。


 理解した。あの闇の世界は確かに俺自身だったのだと。

 俺は自分の分身ともいえる肉体を作り自らの意志を植え付けたんだ。

 問題は何故俺は人を止めて闇の世界になってしまったのかだ。世界って生き物だったけ?


 ……。


 何だろう。真闇の中見えてくる。見えると言うよりは分かると言った方が正しいか。感覚的に理解できている、に近い。

 俺自身の姿ともう一人俺に対面して立つ男の姿が見て取れる。

 男は今の俺ぐらいに若く、二十歳ぐらいだろうか?真っ直ぐな黒く長い髪に細く鋭い黒い瞳、顔立ちはハッキリとしメリハリがありイケメンだ。

 左肩を露出し黒いカーテンの様なものを巻き付けたような衣装に、古代ローマのサンダルの様な物を履いている。

 凛とした姿で只ならぬオーラを纏う。一目見ただけで只者ではないことが分かる。

 俺はさっきまで装備していた服装だな。タラレバに黒蝶の衣服に玉龍鬣の外套、燭台切光忠にレーヴァテイン(笑)もな。

 実はもう一人この場に存在している。俺の後ろに背後霊の様に白い霧の様な者が。背後霊でも、ましてや守護霊でも勿論ない。どこかで会ったことのある者のように感じるんだが、誰だかは分からない。存在が希薄すぎて今にも消えてしまいそうに見える。


「見えるようになったな。今のお前は内包する全てを理解できる筈だ」

「いや、俺の背後の者が誰だか分からないぞ」

「まだ、完全ではないか……。彼女はお前が慈悲を与えたものだ。お前は無自覚に役目を果たそうとしたのだろう」

「言ってる意味が分からん。役目ってなんだ?慈悲を与えた者って誰だ?」


 慈悲ねぇ、竜騎士の少女達だろうか?いや、それは違うと分かる。じゃあ誰なんだ?慈悲を与えた者なんていないぞ。


「分からないな。そんな覚えはない。彼女と言ったな、女なのか。あの世界でってことだよな。……ダメだ、分からん教えてくれ」

「彼女は大蛇の腹の中で魂ごと消えゆく運命(さだめ)だった者。お前は大蛇の腹から彼女を救い出し埋葬した。それが慈悲だ。本来冥界へと送られる魂なのだが、冥界がこの有様では行くに行けない。故にお前に憑いてきたのだろう」

「あ、ああ。女性だったのか、可哀想だが見た目では判別出来なかったからな。彼女は勇者なんだろ?」


 劣化大蛇(インフェリア・ユハ)の腹の中にあった遺体のことか!

 勇者の剣と伝説の鎧を持っていたからな。討伐にでも失敗したのかもしれないな。


「彼女は確かに勇者だ。崩狐(コラプス・フォックス)討伐に向かいこれを撃退したが、瀕死の重傷を負い、大蛇の餌食となった。崩狐はお前がやり合っていた(ペェリィシュ)(・フォックス)の進化まえの個体だ」


 あの滅狐!


「崩狐はスキルの影響で復活を果たし、同じ人間の匂いを嗅ぎつけ攻撃したのだろう。当の本人は既に大蛇に喰われて居ないからな」


 マジか!そのとばっちりで古竜騎士団の皆が襲われたのか。

 崩狐は復讐しようにも対象者はもういない、代わりに同じ人間を復讐対象にしたわけだ。


「死んだ彼女は本来私の冥府に送られるのだが、お前と縁が結ばれお前に憑いてきたのだ。だが、お前の冥界は未だ完成されていない。彼女の行き場がないのだ」

「俺の冥界ってなんだよ。さっきも変なこと言ってたな。冥界がこの有様とか何とか……。役目がどうのこうのと言ってなかったか?」


 この世界は冥界なのか?ってことは俺、冥界に転生しちゃったの!?


「お前は私との間に交わされた盟約を覚えていないようだな。お前は私の眷属となり冥神へと至った。その過程でお前は冥界そのものになったのだ」


 何それ?全然覚えていないんだけどぉ。


 話を聞けば長かった!

 神々はゲーム感覚で全域総神(迷惑な)戦争を始めた。それに巻き込まれて多くの多元宇宙が消し飛んだらしい。地球を含む太陽系も巻き添えを食った。

 だがこの男、宇宙も生命も全て復元し、死んだ者達の転生の準備もしたとのことだ。

 地球は原初の状態にリセットされ生まれ変わり、死んだ者達は待機状態、環境が整った地球に順に転生させていくらしい。


 何故原初の状態かと言うと、限界が来ていたらしい。

 文明が発展すると、その星は寿命を縮めると聞いたことがある。確かに近年の地球は異常気象が激しく天候は不安定、温暖化に大型台風、地震は頻発し、厄介なウイルスまで……。


 そして戦争の余波でテュポーンが復活、更に再封印。転生待機中の中から魂を選別し、見張り番としてこの男の代わりをすることになったと。

 いくら封印中とはいえ、テュポーンは最強の獣の王、見張りをするにも力が必要となる。そこで、神の力を扱える魂の持ち主を眷属とし、神の力を与えた。それが俺と言う訳だ。

 更にこの惑星を管理せよ、と言う。無茶だろ?チョット前まで只の人間ですよ?


 神の仕出かした事だ、神が始末を付けろ!って言ったら、忙しくて無理だそうだ。

 この様な場合の眷属らしい。いや、眷属と言うより陪神と言った方が正しい。陪神とは、簡単に言ってしまえば主神に従う契約を交わした神様のことだ。


 何故俺がこの男の陪神となったのかは、生前の家族の為だ。

 この仕事を引き受けることで、死んだ家族をより良い環境の下転生させてもらう。そんな盟約らしい。

 これまで築き上げてきたもの全てが無駄になってしまったが、せめてこれからの人生は幸せであってほしい。他の者には大変申し訳ないけどね。


「これから地球はどうなるんだ?歴史を繰り返すのか?」

「いや、新たな道を進むだろう。太陽系の管理神に【ガイア】が立候補した。彼女ならより良い方向に導いてくれるだろう」



【ガイア】……原初の大地大母神、大地といっても地球の大地を指すのではなく、天空を含めた全宇宙を指す。ゼウスやハデス達オリュンポス神族の祖母で、ティターン神族の母親、神産みの神でもある。



「お前の家族は、私とお前との間に交わされたの盟約の為、最高の条件下で転生される。他の者達には悪いが特別扱いされるだろう。生涯、神の加護の元保護される」


 それは嬉しい。だから俺は陪神になったのか。


「じゃあ、契約内容は神となりテュポーンの封印を見張れってことで良いんだな」

「厳密に言えば違う、それは序でに過ぎない。確かに今は最優先事項ではあるが、お前はあの世界の管理全般が役割だ」

「管理?管理って何をすればいいんだ?」


 何していいのかさっぱり分からん。自然を大事に的なものか?


「地球の様に文明に食い潰されないように見張り、行き過ぎた文明は潰せ。また、攻め入る敵を排除すればいい。後はガイアがやってくれるだろう」


 潰すだの排除だのやけに物騒なことになってきたぞ!


「文明は兎も角として、敵ってなんだよ。魔物達のことか?」

「違う。先ずはテュポーンの復活を目論む奴の眷属達だ。また、奴の力を利用しようとする外宇宙の神々、外なる神による侵略だ」


 うぇ~、スケールがデカくなってきたな。外なる神って言葉はクトゥルフ神話だよな。うわぁ、ギリシャ神だけじゃなく色んな神が実在したんか。


「そのためにも早く力を付けてもらわねば困る。先ずは冥界(お前)をどうにか機能させねばならない。その娘も限界が近いぞ」


 ちょ、待って!限界って何だ!


「って、彼女限界があるのか!どうすればいいんだ?ここまで来て助けられませんでしたじゃ可哀想すぎるだろ。何とかしてやってくれよ」

「方法は多岐に渡る。先ずは蘇生だ、蘇生させ元の世界に返すことだ。他には、冥界を機能させ、住人として住まわせれば問題ない。(いず)れは転生することになる。また、既存の冥界に送ることも出来る。助けるだけならお前の神魂器にしてしまえば良い」

「神魂器?なにそれ?」

「神魂器とは、神に宿る他者の魂だ。神はその魂を受肉させ具現化し、また強力な武具として扱うことも可能となる。どの様な武具になるかは魂により変わり、性能は神の影響を大きく受ける。神魂器にする際に主たる神の能力の一部を植え付けることも可能だ。但し、植え付けれる能力は魂の強度に影響され、強度以上の能力を植え付けるのは不可能だ。神であるお前に不利益はないが、神魂器となる魂は死がなくなり、転生し新たな人生を送ることは永遠に出来なくなる。よく考えることだな」


 なにそれ、つまり俺の武器や防具扱いになるってこと?


「否、神魂器は確かに武具として扱われるが、心の無い武具ではない。人として受肉させ生活させることも可能だ。新たに生まれ変われないというだけで、人として生きられない訳ではない」


 ん?つまり受肉させて他所で生活させることも出来るってことか?

 でも、例えば俺がいた日本で生活させるとしたら問題あるのか?戸籍が無いことと、年を取らないことぐらいかな?


「尋常ならざる力を持つ神魂器では、地球で通常の生活は無理があるだろうな」

「なあ、さっきから俺の思考読んでないか?」


 さっきから考えてることに答えが返って来るんですけどぉ。


「神とはそういうものだ。で、どうする?私は神魂器を勧めるがな。お前に憑いてきた魂だ本人に聴くのが良かろう」

「話せるのか?」

「お前は内包する全てを理解する。ここは未完成なれど冥界、お前の中だということを忘れるな。どうあれこの冥界は早急にどうにかしないといけない。ここにはお前と縁を結んだもの達がやって来るだろう。だが、この状態では受け入れることが出来ず亡者と化す。が、先ずは娘の対処だ」


 ああ、早くしないと限界が来てしまう。


「な、なぁ、君は冥界に渡り生まれ変わりを望むか、それとも俺の神魂器になるかどっちがいい?」

「………………」


 あ、何となく分かっちゃった。彼女は神魂器を選んだようだ。


「正解だ。娘はお前と一つとなり神の力になることを選んだ」

「彼女を神魂器にするにはどうすればいいんだ?」

「この世界で娘を吸収すれはいい。吸収し力を与えよ」


 ふむ、急いでやってみよう。世界が彼女を吸収するイメージっと。あっ、出来た。

 彼女は俺の目の前で世界に溶け込むように消えていった。そして感じる暖かな他者を、俺自身のではなく俺に溶け込み一体となる者の魂。一体化してはいるが確かな別の魂を感じ取れる。


「そうだ、後は娘を具現化すればいい。簡単だイメージすればいい」


 イメージする。途端に何かが抜け落ちるような、少し物悲しいような感覚に陥る。魂が二分化されたような、事実一度溶け込んだ魂を外に出している訳だからな。

 気付けば俺の目の前に一人の女性が立っていな。彼女は現れるなり膝を突き首を垂れる。


 高校生位の年齢だろうか?

 艶やかなショートボブの黒髪、長い睫毛に覆われた茶色の瞳は、幾つもの修羅場を潜り抜けた者が見せる特有の鋭さを持っている。身長は低く150㎝程だろうか?肌は「外で遊べ」と言いたくなる程白く華奢な体つきをした女の子だ。


「大蛇より救って下さり、誠に有難うございました。これより先、私は主様の剣となり盾となることをここで誓います。私の名は雪月・雲母(ゆきつき・きらら)と申します。気軽にキララとお呼びください。末永く、宜しくお願い致します」


 膝を折り首を垂れる彼女はそんなことを言ってきた。真面目な性格が受け取れる。もっと気楽にしてくれて構わないのに。


「宜しくな。俺の名前は……。っておい、俺の名前が思い出せないだけど何で?」

「お前の名は私が奪った。名前には因果が付き纏う。新たな人生に過去の名前は枷になりかねない」


 お前の仕業かぁー!因果が付き纏うってなんだよ、まったく。


「じゃあ、俺の名前は?」

「神としてのお前の名はプルートだ。つまりこの冥界の名になる。下界で人として活動する時は好きな名を名乗るがいい」

「じゃ、取り敢えずプルートでいいか。キララ、俺はプルートだ、これから宜しくな。あと、キララも気軽に接してくれよ。肩凝るからな」

「はい、分かりましたプルート様。これから宜しくお願いします」


 そう言えば彼女は勇者だ。元々の主が他所にいたんじゃないか?


「娘の召喚主はお前のいた森より遥か北、最北端に位置するマウスターレ神国に居を構える調和の女神レーネ神だ。娘が死亡した時点で繋がりは切れているから心配はない」


 レーネ神なんて聞いたことのない神様だな。どの神話の神様だ?


「地球では信仰されてはいない。あの世界固有の土着の神だ。お前より遥か格下の神になるが、今のお前では歯が立たつまい、気を付けるのだな、その娘を連れて行けばひと悶着起きるだろう。北には力を付けてから行け」


 喧嘩売らないように気を付けよう。キララは北には行かさない方がいいかもしれないな。


「申し訳ございま————」「敬語禁止な」

「ご、ごめんなさいプルート様」

「キララが悪い訳じゃないだろ。謝る必要はないよ。さて、これからどうしたら良いんだ?」


 冥界をどうにかするって言ってたけど、やり方なんて知らない。元の場所に戻るにも方法が分からない。

 この男任せだな。


「って訳で宜しくお願いします」

「……、まあいい。最低限の形と機能は私がやろう。後は自分で工夫しろ」


 男が言った途端に闇(と言うか俺自身だけど)が蠢き始め(くっ、くすぐったい)、至る所で形を成していく。

 広大な空間に岩盤や土による地面が出来上がり、山が聳え立ち、川が生まれ、木々が生え、星が天に昇り、雲が懸かる。

 大気が生まれ、重力により大地に脚を付け、光が差しまるで地球の大自然と変わらない世界が誕生した。

 この男が言うには、俺の潜在意識が影響しこの様な世界が出来たらしい。

 資源は豊富に存在し、死後の世界とはとても思えない出来栄えだ。


「これで終わりではない。冥界である以上【ステュクス】を招かねばならない」


 【ステュクス】……オケアニデスの長女、オケアニデスとは海や泉、地下水の女神である。ステュクスは冥府の河の神格化した女神。神々を罰する権限と力を有している。


「彼女の支流を受け入れ領域を区分する。支流には炎の川プレゲトン、忘却の川レテ、悲嘆の川コキュートスとアケローン川と、ステュクスを含め五つの巨大な川で領域を区切ることとなる」


 ああぁ、俺の中に別の神の気配を感じ、海を連想させる程幅広い巨大な大河が五つ生まれた。成程これがステュクス、プレゲトン、レテ、コキュートス、アケローンの五柱か。彼女達の分霊体が俺の中にやって来た訳だ。自分の中に他の神が入り込む感覚がこそばゆい。


「彼女達はお前に害を与える事は有り得ないから安心しろ。彼女達無くして冥界は成り立たない。これで最低限の機能は整ったことだろう。後は死者の魂の居場所を創る」


 自然と受け入れてたけど、この男も俺の中にいるじゃん。何の違和感もないから忘れてたわ。

 さて、魂の居場所と言うと、天国と地獄だろうか?


 先ず、死者が潜る入口を造り、レテへと続く道を通す。死者はこのレテの水を飲み記憶を忘却する。次に、アケローン川を渡り、死者の国へと訪れることになる。


「さて、これで機能するだろう。後は自分で創造するとよい」


 ラジャー、先ず生前良識人の、一般的な死者の魂を受け入れる場所を創ろう。……、イメージしてしまったのは、我が国日本の首都、東京!

 やっべ、世界観無視した大都市が唐突に生まれてしまった。超都会の死者の国の出来辺りだ。

 やってしまったものはしょうがないよね。次だ次!


 次に、都市を通過した所に、俺の神殿を建てる。それと、流れる大河の河畔に、大先輩たる五柱にそれぞれ立派な神殿を建てておこう。


 次は地獄だ。悪人を捕える為の牢獄。冥府の地獄と言えばタルタロス(無限地獄)だが、彼の神はハデスでなくては制御出来ない。仕方がないから自力で作るか。


 ステュクス川を渡り、更にその後方に巨大な門を造り、潜ると奈落に落ちるように創造する。

 十日後に底に到達し地獄巡りしてもらおう。

 この地獄にプレゲトン川とコキュートス川が流れてくる。炎と氷の地獄は簡単に出来上がりだ。

 細かい地獄は追々創るとしよう。


 最後に、選ばれた者だけが入れるエリュシオン(極楽浄土)を創世する。

 エリュシオンは特別な場所ってイメージだから別世界を創世し楽園とする。

 今は未だ何もない広大な土地だが、美しい花々に彩られ、様々な植物が色を飾る。


 ど真ん中に立派なお屋敷を建てておこう。そうだ!覚醒の実が二粒余る予定だったな。一つ植えてしまえ。上手く育ってくれればあの実が取り放題だ!

 後は池を造り彩り豊かな錦鯉を泳がせておく。

 ここも追々追加して拡張していこう。


「ほう、創世に創生とはなかなかやるな。神格化して間もないのに大したものだ」


 この男、間違いなくハデスだろうな。

 そのハデスが褒めてくれる。彼は俺の親みたいなものだから褒められると嬉しく感じると同時に恥ずかしくもある。


 っと、名前には因果が付き纏うと言っていたな。この世界に名前を付けよう!エリュシオンはハデスの天国だからな。


 う~ん……う~ん……う~ん……。

 エリオン?電気屋と間違えそうだわぁ!エリュー、……エミュー?デカい鳥やん!シオン簡単すぎるよな。


 よし、決めた!子供を意味するペディとエリュシオンのシオンでペティ・シオンにしよ。


 名前を決めると同時にペティ・シオン(世界)が眩いばかりに輝き出した。


「ほう、神格創生まで成すとは……」


 お、ハデスが驚いた。


「お前は神産みを行った。神を産むには高度な創生の力が必要となるのだが、お前は私から受け継いだ絶対神力を使い神を産んだ。初の創生で神を産むとは素晴らしい。だが、気をつけよ、好意的な神ばかりが産まれる訳ではないからな」


 う、産む産む言われると凄まじく恥ずかしい。男が子供を出産したみたいに聴こえるだろうが!


「産まれた神は暫くすれば自我を持ち、お前の前に現れるだろう。その時は優しくしてやるといい」

「それは楽しみだな。どんな子だろうな。男の子かな?女の子かな?」

「それは————」「楽しみにとっとく。言うなよ!」


 さて、これで冥界は大丈夫だよな。後は戻るだけだ!


「その前に管理者の創生だ。ここの管理を任せられる者を産み出さなくてはならない。ここはお前(冥界)とは別の世界(ペティ・シオン)なのだからな。神を創生出来たのだ、容易かろう」

「言ってくれるな。まぁ、やってみるけど」


 管理者か。内政に優れ、もし死者が暴れた場合に対処可能な戦闘力を持ち、尚且つ万能な家事力を持つ者。……メイドさん?冥土だけに。てへっ!


 目の前の空中に、ミリに満たない小さな点が四つ生まれる。

 その点は次第に分裂を繰り返し胎児へと、やがて赤子へ、幼児に成長、さらに成長を続け四人の成人女性が産まれた。四人の女性の周りに闇が生まれ纏わり衣装へと変化する。


 一人目、長女的な存在で、見事な長いストレートな金髪、少々釣り気味な金眼、肌理の細かい艶のある肌に出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる完璧な肢体。

 クールそうな見た目に真面目そうな雰囲気だ。

 これぞメイド!と言えるロングタイプのメイド服を着用し、左の腰には何故か鞭の様な物が巻いてかけてある。

 ペティリアと名付けた。 


 二人目の次女、ショートカットの銀髪女性だ。赤の瞳にしなやかな肉体、瑞々しい小麦色した肌、ペタなパイだが見た目美しい女性だ。長女よりも活発そうな、取っつき易い雰囲気がある。

 こちらはショートタイプのメイド服を着ている。

 名をペティレア。


 三人目の三女は、長さは肩にかかる程度の黒髪、瞳の色も黒く円らだ。笑顔のよく似合う少女でにこやかに笑っている。優し気な雰囲気を醸し出す女の子だ。

 こちらもショートタイプのメイド服を着ている。

 名前はペティシアにした。


 最後の四人目、ウェーブのかかった長い緑色をした髪、瞳は蒼く美しい。身長はこの中で一番低く、どちらかと言うと幼女に見える。大人しそうな少女で長女の裾を握っている。

 長女と同じくロングタイプのメイド服を着ている。

 ペティネアと命名。


 俺にネーミングセンスはないからな!


「俺はプルートってんだ。皆宜しくな!」


 軽く挨拶をしてみた。そうしたらメイドの皆が腰を90度に折りお辞儀をしたのでビックリした。


「「「我等メイド四姉妹、プルート様に永久の忠誠を誓いお仕え致します!今後とも末永くよろしくお願いし致します」」」


 どこか聞いたような言葉だな。ふと隣をみると、キララが少しはにかんでいた。


「ああ、宜しく頼むな。君達にはこの世界、ペティ・シオンの管理を任せたいんだけど、大丈夫かな?」

「お任せください。我々にはプルート様より受け継がれた知識と力がございます。完璧に任務をこなしてご覧にいれましょう」

「お、おう。頼んだぞ」


 四人とも自信に満ち溢れた笑顔を浮かべている。任せても大丈夫だろうと安心させてくれる。


「何か必要な物————」

「それには及びません。我々に受け継がれた力には創造の力も含まれております。プルート様のお手を煩わせる訳には参りません」

「そ、そうか。なら何かあった場合は通話の能力を使って念話で話そうか」

「「「畏まりました」」」


 そこで今まで黙っていたハデスが口を開いた。


「お前に渡しておいた亜空修繕箱の名前を書き替えて館の隣にでも置いておくといい。お前が小箱ちゃんなどと名付けたお陰で小箱の形を保ち続けているが、本来それは蔵に成長する物だ。お前が空間収納したものをそれに飛ばしてやればよい」


 !!!


 なんですとっ!お前がくれた物だったんかい!しかも、名付けがヤバかったらしいし。

 でも、旅の途中で蔵になられても困るんだけどな。っと、とにかく名前の付け直しか。出来るのか?


「今のお前なら可能だ。下界では人の姿に擬態していたが、今は神である本体だからな」

「ぎ、擬態なのかよアレ。まぁいいや。名付ければいいんだな。……なら、大蔵大臣で!」


 ………………。


 あれ?ダメなの?

 収納環から取り出した小箱ちゃん改め大蔵大臣は、屋敷の隣に置くとみるみる成長して大きな蔵に変貌を遂げた。

 うぉい、こんなの持ち歩くとこだったのか!


「お前の擬態には元々空間収納能力が備わっていた筈だ。蔵ごと収納してしまえばよかったのだ」

「うぇ、知らんかった」


 そんな能力があったなんて!


「では、次に移ろう。お前やここはもう十分だろう。だが、テュポーンと言う根本的な問題が残っている。今のお前ではテュポーンには勝てまい」

「やっぱアイツがテュポーンだったのか!」

「厳密に言えば違う。奴は本体ではない、封印の際に奴は力の一部をバラまき力あるものに憑依させたのだ。お前の肉体を破壊したのは奴の力の一欠片に過ぎない」

「マジでかっ!一欠片であの力かよ。奴はSランクの滅狐をいともたやすく倒して見せたぞ。アレで力の一欠片なのかよ!」

「ふぅ」


 おい、ため息つくとはどういうことだよ!


「お前の産んだ娘の一人は、神話級の実力を持っているのに気づいていないのか?」


 なんですと!

 じっくりと観察すれば視えてくる。確かに凄まじい力を秘めているのが分かる。

 長女のペティリアは神話級のTランク(トランセンド)に達している。次女のペティレアがSSSランク、三女のペティシアと末っ子のペティネアがSランクととんでもない戦闘力の持ち主達だった!

 因みに雪月雲母さんはAランクです。す、すげーな。因みにハデスはunknownです。俺もな!


「我々最上級神は下界に降りる訳にはいかない、力が強すぎ存在するだけで世界を破壊しかねないからだ。お前もだ、故に偽りの肉体を創造して降りるのだが、それでは奴の一欠片の力に対抗出来ない。では、どうするか?」


 どうすんの?はなから強い肉体作ればいいんじゃね?


「強力な肉体は今のお前では制御できまい。なら一度肉体を造り、その肉体を格上げしてやればいい。要はレベル上げ、修行を積むことだ」

「修行ったって時間が無いだろう。こうしている間にも団長さん達の命が危ないんだから」


 と、言ってみたものの理解しているんだ俺だって。この世界とあちらの世界では時の流れが違う。と言うかこの世界には時間の概念そのものが無い。幾ら時間が経とうが俺が敗れた直後に戻ることが出来るだろう。


「理解しているようだな。私の知り合いの闘神に修行をつけてくれるように依頼してある。彼女は厳しいが実力は折り紙付きだ。キララと言ったな、お前はここで彼女達に修行をつけてもらうといい」

「私もよろしいのですか?それでしたら助かります。足手纏いにはなりたくありませんから。皆様、宜しくお願いします」


 話がどんどん進んでいってるんだけど。


「お前は肉体を造り私に付いて来るといい」


 ぬぉぉ、修行が確定事項になってるぅ。が、仕方がないか、やるからには全力で強くなってやろうじゃないか!


 それにしても、何もしてないのに神になった俺!……何でこうなったんだろうな。


 まっいっか。それでは修行に行って参ります!






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