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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
動くコダユーリオン
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フロリオ砦陥落

 フロリオ砦、指令室。


「副団長、報告します。帝国騎士団、地神騎士団(イナンナナイツ)が防衛ラインを突破しました! 地神騎士団は正門へと向かって進軍を続けています!」


 ティデス率いる地神騎士団は、フロリオ軍の防衛ラインを突破し進撃を続け、このまま進めば後数刻で砦の正門に到着するてと報告が入る。

 報告を受けたのはユネオス辺境伯が誇ったフロリオ軍、その副団長を務めていた男。


「私の事は団長と呼べと言っている、ユネオス様亡き後、フロリオ軍の指揮権はこの私、ロロス・ゲイトに一任された。皆もそのつもりでいるように!」

「はッ、畏まりました、ロロス団長!」

「よろしい、では魔銃隊は城壁に配置、魔砲隊は正門前に集合させよ! 魔術隊は魔法師を囲い護り、歩兵は前面に展開させておけ。先ずは籠城して時間を稼ぎ、コダユーリオンの援軍を待つ!」


 幸いにも地神騎士団は、村や町には目もくれずフロリオ砦に向かってくる。

 ユネオス辺境伯の領地は、たとえこの砦が戦場になったとしても無害で切り抜けるだろう。


「団長! コダユーリオンの援軍は当てにしても宜しいのでしょうか? 聞けば黒騎士団、魔銃騎士団、空挺騎士団共に既に敗れほぼ全滅だとかっ。その様な状態の国がこの場に援軍を向かわせるのでしょうか?」


 一人の士官が声を上げる。それもその筈で、籠城とは援軍である後詰めがくることが前提の戦術だ。

 援軍が来なければ籠城は只の悪足掻きになってしまう。


「問題ない、奴等は必ず来る。たとえこの戦が敗戦確実と言われようが奴等は来ざるをえない。このフロリオ砦にはそれだけの価値があるのだ」


 ロロスがそこまで言うと、周りの士官達が安堵の息を吐くのが分かった。

 砦に残った戦力で地神騎士団を相手をするのは自殺行為だということに皆が気付いているからだ。

 これは無謀な戦だ。数においても個人的戦力においても相手が圧倒的に優位。此方側が優位に立てるのは地の利だけである。

 籠城したとしても長くは持ち堪えることは不可能で、長く見積もっても数日が精々だろう。

 援軍は何時、どれ程の戦力を持って来るのか?

 籠城で時間を稼ぎ、援軍を以て反撃に出る。……のではなく、来る援軍の中に魔道具造りのエキスパートが居る筈で、早急に魔道具を完成させてもらう必要がある。


 そう魔道具だ。この地には嘗てスクディア第二王子がコダユーリオンから奪った魔道具の部品が保管されている。

 その魔道具が完成さえすれば、フロリオ軍にも勝ち目が見えてくるのだ。

 兎に角時間を稼ぎ魔道具を完成させる。それこそがこの戦の行方を左右するだろうとロロスは確信していた。


「それにしても、攻めてきたのがティデスの軍とは……、いや、空から来る古竜騎士団よりかはマシなのか?」


 砦には対空迎撃用兵器も備わっているが、古竜が誇るブレスを雨あられと降らされれば籠城すら不可能になってしまう。

 王都ミーレスのように結界で護られているのならやり用はあるが、そうでないなら敗北は必至となる。


「ふん、地上から来てくれただけマシと言うものか」


 そこで指令室へ一人の少女が無造作に入ってきた。

 その少女の表情にはあからさまな怒りの感情が張り付いていた。


「くそッ! 何から何まで上手くいきやがらねぇー」

「これはこれは、どうなされましたスヌレムス殿、随分と荒れているご様子。そのまま王都を落とすと息巻いておられたようですが、如何なされたのかな?」


 入室してきたのは燿子により撃退させられた魔銃騎士団が団長、スヌレムスだった。

 どうしたのか問うロロスは、勿論何があったのか知った上で言っている。何せ彼女が率いる魔銃騎士団は壊滅したのだ、彼女が荒れる理由など分かり切っていた。

 敢て言ったのは皮肉るためだ。


「黙れよロロスッ! 貴様、あんな化け物が居るなんて訊いてねぇぞッ! 情報を小出しにすんじゃねぇよ、あの化け物は何なんだよッ! 俺の魔銃騎士団は全滅、アルフィアの空挺騎士団もほぼ全滅だって聞いたぞッ!」

「そそそそうですよ。こ、古竜騎士団だけでも大変なのに、変な魔法を使う助っ人が着いていたんだよッ!」


 更にアルフィアが入室してくる。

 珍しいことに、温和で名の知られるアルフィアまでもが怒っていた。


「化け物? 誰のことでしょうか? インペラートル軍で化け物と呼べる者は二名しかおりません。一人はミネルヴァ、もう一人はヴィクトリアの二名だけの筈です」

「ふざけんなよッ! 狐の化け物が居んだろうが、それも九尾の狐がよッ! まさか魔物を飼い慣らしているなんて訊いてねぇんだよッ!!!」

「き、九尾狐の魔物だってッ!」

「こっちには見慣れない女性だったよッ! 一瞬で極大魔法を独りで放たれて、そそそ、それでこっちはぜ、全滅だったんだからッ!」


 敗戦から逃れてきた二人に攻め立てられるロロス。

 しかし、インペラートルに籍を置いていたロロスでも知り得ない情報だった。


「ま、待ってください。私もその様な者が居るなど訊いたことがないのです! おそらくは我々が寝返ってから入った者か、帝国の隠し玉ではないでしょうか!?」

「ぐぬぬぅ、まぁいい、このことは後に回して、今は帝国軍の対処が先だ。直ぐにでも来るぞ、備えておけよ。……アルフィア出れるか?」

「う、うん、ででも、空挺騎士団は残していった数十名しかいないよ? だだだ大丈夫かな?」

「居ないよりもマシだろう。俺の魔銃騎士団も似たようなもんだ。けどこのまま見ているだけってのは出来ねぇだろがぁ!」

「う、うん。皆の仇を討たないとねッ!」

「九尾狐が出てきた時点で負ける。出てこない事を祈るのみだな、こんちきしょうがぁ」

「あああの謎の女性も危険なんだよ」


 こうして二人は指令室を退出していった。

 暫しの静寂。


「………………、どうやら我々にも知らない戦力が有るらしいな。皆気を引き締めて取り掛かってくれ」

「「「はッ!」」」


 皆が退出するなかで、ロロス一人が残り独りごちる。


「魔道具の完成を急いでくれ! でなければ我らは負ける」


 一つ息を吐きロロスも退出したのだった。


 外は既に戦場だった。

 ティデス率いる地神騎士団が砦の正面から攻めてきているのだ。

 フロリオ軍は城壁の上から魔銃を撃ち続けている。

 しかし、グリファトを駆る地神騎士団は素早く、狙い撃つことはまず不可能。故に、手当たり次第に撃ちまくるが、そんなものが訓練を積んだ騎士に通用する筈もなかった。


「団長、このままではそう長くは持ちません! ここは一か八か一団隊を送り込むほかありませんッ!」

「許可できん! 打って出れば一網打尽にされるぞ。取りついた者を追い返す程度でいい。今は時間を稼ぐ事だけを考えよッ!」

「だ、団長ッ! 砲撃か来ます! 奴等、魔術で一気に門を抉じ開ける気ですッ!」


 見れば地神騎士団の後方から、幾つもの術式が確認できた。

 その一つ一つが城門を破壊するに足る威力を持っているのは一目で分かる。


「ちぃ、魔術師部隊、防御術式展開急げよッ!」


 ロロスの指示で魔術師達が一斉に結界を展開させていく。

 放たれた攻撃魔術に門を護る結界魔術がぶつかり合う。

 轟く爆音が響き渡り、巻き上げられた砂埃と煙幕により視界を遮られる。


「被害の確認を急げ、城門に損傷が有れば最優先で補修さるんだッ! まだ、通す訳にはいかんぞッ!」


 砦から外に出ない限りティデスは攻城戦を仕掛けるしかなく、即席に投石機を造っては嫌がらせのように投石する。

 フロリオ軍は対応しざるを得ず、魔術師の体力をガリガリと削って言った。


「チッ、出ては来ないか!」


 ティデスが自らのイラつきを感じながらも、どう動くのが最善かを思案する。

 時間を掛ければ援軍が来るだろう。しかし、短期で攻め落とすにはフロリオ砦は堅牢すぎた。

 砦内部に存在する兵数は万に満たない少数だろう。それでも、地神騎士団の猛攻をしのぐには足りたようだ。

 今も城門に取り付き攻城兵器を使っているが、門は固く閉ざされている。

 多様な魔術を放っても、城門に届く前に掻き消されてしまう。

 そうしている間も、時は刻一刻と過ぎていく。それは、コダユーリオン軍の合流を意味することとなる。


「ええい、奴等の魔術の腕が我々より上だとでも言うのかッ!」


 そうではない、ここは地形や霊的配置に秘密があった。

 砦は小高い丘の上に建てられ、更にその下には龍脈が流れている。

 更にフロリオ砦は龍脈のエネルギーが噴出する龍穴の場となっているため、無尽蔵といえるマナを確保できているのだ。


 龍脈とは、惑星に生命力(オド)を行き渡らせるための血管の様なものだ。

 そして、龍穴は流れるオドが吹き上がる穴。

 フロリオ砦は、吹き上がったオドを利用してマナを生成して補充し、また魔術の強化をしている。

 その為、消費する一方の地神騎士団ではマナの総量で負けているのだ。


 しかし、吹き出るオドは皆に平等に降り注ぐ。

 フロリオ軍はオドをマナに変換する変換機を使用している。

 もし、ティデスが変換機の代わりになる物を用意できれば、状況は一気に帝国軍へと傾くだろう。


「時間が惜しい。ネッダとダン、俺に続け! ロックサム、お前に指揮権を与えこの場を任せる。エナスは……どっちでもいい。ついてくるなりこの場に残るなり、好きにしろ。行くぞ二人共、あの忌まわしい城門を抉じ開けるぞッ!」


 ティデスがざっと指示を出し駆けだそうとしたが、ネッダ・デッハが待ったをかける。


「おいおい、待ってくれよティデス君。焦る気持ちは分かるけど、門を抉じ開けるいい策でもあるのかい?君らしくもなく冷静さを失ってはいないかい?」

「そうだぞい、無策で跳び込むのは愚策じゃわい。何か策を練ってからでも遅くはあるまい」


 ネッダに続きダンもティデスを引き留める。

 フロリオ軍の攻撃は近付く者にのみ行われている。ティデスの居る場所は攻撃される事は無い。よって時間をかけても良案を捻り出せと二人は言う。


「だがな、このまま無為に時間を浪費するのも愚策だと言わんか?」

「無謀に突撃するよりかはマシだと思うけどな」

「門さえ開けば時間を掛けずに攻め落とせる。俺達ならその門を抉じ開けることだって出来る筈だ!」

「どうかな? 相手方には魔法使いも居る筈だろ? 魔法で護られたらちょっとやそっとじゃ開かないよ」


 言い争う二人の間にダンが入り込む。


「まあまあ落ち着けい二人共。あの門とて同じ魔法を使えば開くかもしれんが、一度か二度でけりをつけにゃ不利になるのう。体力的にコッチは不利じゃぞい、アッチは回復の手立てがあるかのう。だからの、こう言うのはどうじゃ?」


 ダンの作戦はこうだ。

 物造りの才を持つドワーフ、そのドワーフで構成されているダンの隊がマナ変換機を早急に作成するというものだった。


「なんのためにワシ等ドワーフ隊が居ると思っとるんじゃ、ワシ等にまかせい。そうだの、半日も有れば数台の変換機を拵えてみせるわい。お主達はワシ等の存在を隠し、今までと同じように城門を攻めてくれればいい」


 こうしてこの場での作戦が決まった。

 ダン率いるドワーフ隊による変換機の作成。その間、その事実を隠すためにも今までと同じようにティデス達が城門を攻める。

 コダユーリオンの援軍を遅らせるために、別動隊を編成しこれを迎え撃つ。

 もし、転移門を砦内に設置されていた場合は無駄になるが、それでも警戒しない訳にはいかない。

 変換機が完成次第にマナの温存は考える必要がなくなる。

 完成したら総員で魔術を連発し、城門、城壁を叩き潰し突入する。


「だが、そんな簡単に造れるものなのか、変換機とやらは?」

「ドワーフを舐めるでないわ。あんな物は片手間でも造ってみせるわい」

「頼もしいな。来てくれて助かった、有難う二人共」

「ガハハハッ、何言ってんだ今更だろうがよ。それにの、困っている時に助けるのが友の役目じゃろが。さあ、ワシ等は一旦引かせてもらう。準備が有るからの、そのまま作業に掛かるから完成するまでは戻らんからの」


 こうして戦場からドワーフ隊が離脱、それを悟られないためにもティデスが前へと出て猛攻を仕掛ける事となった。

 攻防は一方的であるが、猛攻を防ぎきるだけの防御力がフロリオ砦にはあった。

 物理的にも魔術的にも高い防御力を誇る城門に城壁、それらを打ち破るにはやはり変換機の存在が必要不可欠だったといえるだろう。


 一方的な攻めが半日続き、深夜になってダンが変換機を持って戦場へと復帰した。


「完成したぞい。これがあと三つある。こいつを起動すれば、龍穴から吹き出るオドをマナへと帰る事が出来る。その場でマナを吸収すれば無限に魔術が撃ち放題よッ!」

「やってくれたか、ダンッ!」


 そこからは呆気なかった。

 無尽蔵のマナを手にした地神騎士団は、休むことなく魔術を連発させ城門の破壊に成功。

 雪崩れ込む地神騎士団によって砦は壊滅した。


 ロロスはというと。


「総員、転移門を使ってコダユーリオンへと退避せよッ! 私は残り転移門を破壊する。魔道具の部品を忘れるなよ」


 スヌレムスとアルフィアは、


「クソッ、奴等変換機をこの場で造ったのかよッ! そう簡単に造れるもんじゃねぇんだが……」

「ドド、ドワーフが居たからかな? ド、ドワーフはま魔道具の造り手としては可成り優秀だってきいたことがあ、あるよ」

「ああ、物造りの才能に溢れた種族だと訊いた。が、今はそれよりも本国に撤退するぞ! このままコイツ等と心中するつもりはない」

「ま、ま魔道具はどうするの? この場から持っていってもりゅ、龍穴が無いとつ、造るのが厳しいんじゃ?」

「ここが落とされればどの道終いだ。それより次の機会に賭けるしかねぇ」


 という会話を残し本国へと帰還した。


 だが彼女達は知らない。

 本国にはティデスよりも深い絶望が待っていたことを…………。




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