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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
動くコダユーリオン
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思わぬ再開

 俺は今竜の巣に来ている。


 数日前に蛸の化け物を倒した俺は、ダークエルフや獣人達の歓迎を受け宴へと招かれた。

 どうやらあの魂食い(デビルキング)の大蛸(・フィッシュ)とやらは、この森に住むダークエルフや獣人のご先祖様達が嘗て倒せずに封印した化け物らしい。

 この中域には居ない筈の幻想級の魔物でランクで言えばSSSにあたる。封印する際に多くの犠牲が出たそうだ。

 おそらく、元々は弱い魔物であったモノが長い年月をかけ力を付けたのだろうとのことだ。


 その化け物を倒し脅威を取り除いた俺は歓迎されたと言う訳だ。最小限の犠牲で倒す事が出来たと皆大喜びしていた。

 しかし、皆は知らない。その封印を解いたのも俺だと言う事を…………。言えない、言える筈がない。犠牲が出てしまった以上、正直に俺が犯人だと名乗り出れないッ!

 封印の要たる石に、ダツモドキ、強襲魚(アサルト・フィッシュ)と言うらしいが、その襲撃の盾にしたら封印とけた、なんて言えないッ!

 ……が、言わねばならないだろう。正直に謝ろう。と、俺が頭を下げると、皆笑って許してくれた。

 封印は既に弱まっており、何時溶けるのか分からずビクビク生きていくよりも、ここで始末できたのは僥倖だと笑ってくれた。

 うう、人間よりも優しい。人間の国では会うなり牢にぶち込まれたからな。結果的には居心地が良かったけどさ。


 まぁそれはさておき、俺には幾つかの問題が有る事が蛸との戦いで発覚した。

 それは、力がデカすぎってことと、その力が制御出来ていないこと、あと、自分自身の力を把握しきっていない事だ。

 把握できていないから制御できないのか、力がデカすぎて把握できないのかは分からないけど、これから先はキチンと把握し制御しなくてはならない。

 ゼウスから頼まれたエルト王国とエネミル王国との戦争を止め、今後争わないようにする為には力の制御は必要不可欠。よって、竜の巣に住まう竜神様とやらに修行をつけて貰おうって話だ。

 竜神様はその名の通り竜の神様だ。神話級を超えた実力を持っている筈。今の俺よか余程強く立派に違いない。


 って訳で竜の巣まで来た。

 登山中にやたらと竜達に突っつかれたけど何とか頂上へと辿り着いたんだ。

 そこで信じられない光景を見ることになった。


「なッ、何やってんすか師匠!?」


 竜の巣の頂上へと辿り着いた俺の目の前で、俺の師匠女神(おみながみ)(あざみ)が優雅に竜神と茶をしていたんだよッ!


「おや、文月はんやおまへんか。こないな処でお会いするとは奇遇でおますなぁ?」

「いや、それこっちのセリフじゃけぇのッ!」


 ここは鋭鋒の頂上、その頂上の先端をスパッと切断した様で広く平らな場所に机を置き、向かい合う様に人化した竜神とお茶会を楽しんでいる師匠達。

 何やってんだこの人! ここに居ていい人じゃないよね! いや、ゼウスが居るくらいだからいいのか?


「いやいや、師匠ここで何してんの?」

「見て分かりまへんか? 善女(ぜんにょ)はんとお茶を楽しんでおるんどすぇ。あんさんも立ってへんで此方に来て座っとぉくれやす」


 ぐぬぬぅ、って、善女って善女龍王のこと? 善女龍王って言ったら雨乞いの対象とされた竜王の一尊(一体の仏)だ。


 太古の昔の日本の考えでは、神とは生物や大自然そのもの森羅万象に宿り八百万の神の信仰が生まれた。

 故に怒らせれば恐ろしい天災が起きると信じられた。触らぬ神に祟りなしと言う訳だ。

 一方仏は人々を救う存在とし、また人に近しい姿を見て親しまれ、死後仏になれると葬儀と結び付けられた。


 その仏に属する善女龍王が師匠と茶をしばいている。


「初めまして、私は八大龍王が一尊、沙掲羅(しゃかつら)龍王が三女、善女龍王と申します。以後お見知りおき下さい」


 八大龍王とは、仏法を守護する天龍八部衆のことだ。その一尊に沙掲羅龍王が名を連ねている。彼女はその三女と言うことだ。


「ああ、これはご丁寧にどうも。俺は女神(おみながみ)(あざみ)が一番弟子の女神(おみながみ)文月と言います。こちらこそよろしく。あっ、神名はプルートです」


 日本での彼女の像容は男神像で表現されることがあり、女神だとは限定されていなかった。しかし、本人が三女だと名乗った以上彼女は女神である。

 彼女は長い黒髪を腰辺りで紐で縛り纏めている。細い眉は緩やかに弧を描き、大きな瞳は金色に輝いている。

 身長はとても長身とは言えるものではなく、セフィーとどっこいどっこいのとても愛らしい女性だ。


 一方師匠は、線は細く、俺よりやや低いが女性としては長身で、鋭い目つきに整った顔立ちが勇ましい。

 絶世の美女と言えるが、性格はとても厳しくそれでいて優しいところもある。

 常に和装で物静か、だが、一度戦場へ足を踏み入れると正に鬼の如し。そりゃぁもう強いのなんのって、言葉では言い表せない程の強さを誇る。流石闘神だと納得がいく。

 善女さんの方は中国の民族衣装っぽいのを着ている。彼女の仕草も物静かでお淑やかな感じだ。


「ほな珈琲でよろしおすなぁ」

「あ、はい頂きます。ええっと、そもそも何でこの世界に師匠がいるです?」


 師匠は珈琲を入れながら答えてくれる。


「うちかて友人は仰山いてはります。その友人に会いに来てなんか悪ぅございますかぁ?」

「いえ、悪いとは言いませんけど、大丈夫ですか? ここには獸神が封印されているぽいっすよ」


 師匠のことだから大丈夫だとは思うが、あまり刺激的なことはしないで欲しいと思います。


「問題あらしません。そないなことより、あんたさんは身体を入れ替えたみたいやな」

「はい、獸神との戦いで呪われて、後にアテナの姐さんに粉々にされました」

「ふふふっ、彼女らしいどすなぁ」


 俺と師匠の会話を微笑みながら聞いていた善女さんが会話に参加してくる。


「ふふっ、確かにそうですね。あの方は煩わしく思うことは力づくで対処しますから。でも、何だかんだで結果的に良い方向へと向かうんですよね」

「そうどすなぁ、文月はんも結果的に良かったと言えるのかも知れまへんなぁ。ここまで来るにえらい苦労しましたやろ? 前の身体では不可能やったかもしれまへんなぁ」


 俺は師匠に煎れて貰った珈琲を啜りながら問題になっている力のことを相談してみる。


「いえ、それがですねぇ、力が強すぎて制御出来てないんですよね。どれ程のことが出来るのかも理解できていませんし、ほとほと困っています。ここへは通過する許可を貰うのと、この場に住まう竜神様に鍛えて貰おうと思った次第でして」

「えッ! 私にですか?」


 名指しされた善女さんが驚いている。まぁ、師匠がこの場に居るなら師匠に頼もうと思う。けど、師匠の修行はキツイんだよなぁ。


「ああ、ですが師匠がこの場に居てくれますから師匠に頼もうと思います」


 ぐ、しまった師匠の眼がキラリと光った気がするっす!


「ええっと、ここを通る事は承知しました。ですけどここを抜ける理由を聴いても宜しいですか?」


 善女さんの質問に対して、俺は此処に来るまでの出来事を事細かく話した。


「予想してはりましたけど、随分と情けのぉおすなぁ。仮にも女神(おみながみ)流の後継者として、思うところはあらしまへんのか?」


 うっ、ゼウス頼りなのが気に召さないのでしょうか?

 インペラートルとヴァンチトーレとの戦争は最小限関わらないようにしてきた。それは、俺の介入でパワーバランスを崩してしまうからだ。

 現にゼウスも最初に襲撃して来ただけで、それ以降は戦場に出て来ていない。

 師匠は俺一人で戦争を収めるぐらいはしろと言いたいのだろうか?


 ここからはお茶会などでなく、師匠の説教会が始まってしまった。

 延々と説教されている俺を哀れに思ったのか、はたまたつまらなかったのか分からないが、善女さんが止めてくれた。助かりました!


「ほな、行きまひょか」


 そして、師匠の短い言葉。

 師匠は善女さんに一言詫びを入れて、俺を強引に連れて行く。

 ここは鋭鋒の先端なのに、まるで道が続いているかのように空中を歩いていく。俺をぶら下げながら。

 慌てて空歩を使い空中を歩き出す俺。


 ある程度の広い空間を見つけた師匠は、徐に片腕を天へと掲げ、空間を切り取る。そしてそのまま切り取った空間を複製し張り付ける。複製空間領域を創り出したんだ。

 って、その規模がとんでもなかった。

 嘗て俺がテュポーンの欠片と戦闘になった時に使った領域は東京ドームと同程度の広さだ。が、師匠の切り取った空間は、この惑星そのものをすっぽりと覆っている程デカい。

 これはこの惑星を破壊しても問題ないと無言で言っているんだろうか?


 そして虐殺、……もとい、修行が始まった。

 先ずは把握しきれていない力がどれ程なのか調べると言って実戦となった。

 折角作り直した肉体は瞬時に粉々にされた。って、作り直した意味ないし、把握どうのう関係ないじゃないかッ!

 これじゃあ、納得のいく肉体を作り直すまで壊され続けるだけだッ!


「ちょ、し、師匠ッ! やり過ぎ、やり過ぎっすッ!」


 問答無用の一撃で殺され続ける俺の肉体。その度に作る直すが、その傍からまた破壊される。

 漸く初撃を受け止めたが、次の瞬間には今まで同様に粉々にされた。


「ちょ、まっ、――」


 まただ。また殺された!

 延々と続く破壊活動。


「なんにも考えてへんと身体を作っとりましたら、何時までたってもおんなじ事の繰り返しでおますぇ」


 ぐぬぬ、考えて作り変えている積もりなんだけど、とても追い付かない。強度を上げて作るだけじゃ駄目だ、何かが足りない。

 師匠は俺の肉体強度に合わせて力を増しているのか? いや、さっきからほとんど力を加えていないように感じる。では、何故身体を破壊されてしまうのか?

 アレコレと考えながら作り替えていく。


 只硬いのではなく、力の通りを阻害しない程度に農密度な肉体に。それでいてしなやかで瞬発力に長け、身軽で軽快な動きが可能にし。魔力を潤滑に巡らせる事が出来き、外部からの魔力は弾き、内部の魔力は十全に効果を発揮。過度な神気にも耐えられる柔軟性を持たせ、あらゆる無茶を可能とする。

 ある程度の損傷なら即時再生し、属性攻撃にも抵抗を持つ身体。


 ………………無理じゃね? これに不死が付けばまるで神の肉体じゃん。

 取捨選択し必要な部分を拾っていくしかない。

 先ず魔力、これは要らないだろう。何故なら俺には神気が扱えるからだ。効率が悪くても魔力を宿す必要は無い。必要とあらば大気から拾い集めて使えばいい。

 次に密度、これは必要不可欠だろう。どうあっても肉体強度に直結する密度は必要になる。が、余り密度を増やすと、身体が重くなり俊敏な動きは出来なくなるだろうから調節が必要だ。

 しなやかさと柔軟性も必要だ。師匠曰く――、


女神(おみながみ)は女性向けの流派でおます。女性の靭やかな身体でこそ効果が発揮されるものであるんえ、男性が扱うには不向きな流派どす。故に文月はんが作る肉体には、イカツイ筋肉なんぞいりしまへんえ」


 とのことだ。あまり密度に拘るのも良くないらしい。

 骨は今作れる最硬強度に作り上げる。神話級の攻撃にも耐えうるようにな。

 次は筋肉ではなく神経系を強化しよう。なるべく伝達速度が速く、太い主となる中枢神経、同時に細く丈夫な幾多に渡る大量の末梢神経を作り出す。

 内臓には強力な再生能力を付属しておこう。それらを筋肉で覆い、皮膚を這わせる。

 皮膚は伸縮性に富み、切れにく熱変動にも対応できるよう作り変える。


 肉体の改良を重ね遂に最高クラスの身体が出来上がった。

 新たな肉体は、加減されているとはいえ師匠の攻撃にも耐え、そして力の扱いにも長けていた。

 全力も手加減も可能で、欲しい時に欲しいだけの力を引き出せるようになった。それでも師匠との修練はキツかったけどな。

 漸く誤って自然破壊してしまった、なんてことは無くなり、存分に力を振るえる。


 これで修行も終わりかと思ったら、師匠が逃がしてはくれなかった。

 最終的に惑星が割れたが、複製空間のおかげで事なきを得た。

 その後も暫くボコられてから善女さんの元へと戻った。


「文月はん、力の制御が出来るようになりはったんはよろしゅおすが、そのままでは不便ではおまへんか? 人の中で常に如何なる時も力を抑え、過剰に反応することも叶いまへん。それでは何時かボロがでてしまいまへんやろか?」

「え˝?」


 言われてみれば確かにそうかもしれない。ひょんなことから力を暴走させては意味がない。


「ほな、封印してまいましょか。うちが文月はんの膨大な力を段階を別けて封印しますぅ。先ずわ神の力どす。神の力は容易に使えてはなりまへん、神能の全てを封じるえぇ」

「ちょ――」


 神の力を封じられたら今後に支障が出かねないんですけどッ!


「次に、過剰な身体能力とスキルどすな。文月はんはスキルに頼り過ぎるきらいがあるえぇこれを封じますえぇ」

「ちょっとまっ――」


 ヤバい! このままじゃ俺のアドバンテージがぁ~!


「最後に全体的な強さを封じるえぇ。そうどすなぁ、Bランクまで下げときましょか」

「…………」


 師匠の封印だ、簡単には解除できない。

 参ったな。これじゃ戦争を止めるどころじゃなくなるぞ!


「し、師匠、このままじゃ戦争を止められないんですけどぉ」

「そないなことありまへん。第一の封印は自らの意志で簡単に解かれますぅ。第二の封印は自己防衛本能が最大限に発揮された時、自動で解けるようにしてありますえ。最後は死ぬ直前どすなぁ。最悪でも死ぬ手前で全ての封印が解けるよって安心すでおます」


 これはぁ、下手すりゃ神魂器すら満足に扱えなくなるぞ。


「文月はんは力押しに慣れすぎどすぅ。少しは苦難に慣れておくのも修行の内どすえぇ」

「い、今の俺の力って……」


《種族:神魂・神、肉体・強化人体

 名前:女神(おみながみ)文月(ふづき)(神名:プルート)

 加護:絶対神力(使用制限) ランク:B

 称号:女神(おみながみ)流・継承者(+能力暴昇)

 状態:封印


 生命力:9000()

 筋力:9000()

 速力:9000()

 肉体強度:9000()

 知力:9000()

 魔力:9000()

 魔力抵抗:9000()

 運:90()


 ぎゃ――!

 修行したらメッチャ弱くなったんですけどぉ~ッ!


「し、師匠、これは、これはあんまりにも……」

「自身の力を信じたらええのに、女神(おみながみ)流は使えるんどすえぇ」

「で、でも、これじゃ使いこなせないんじゃ?」

「でももヘチマもありゃしません。女神(おみながみ)流で全て解決しなはれ。これで女神(おみながみ)流を全開で使えますえぇ」

「そんなぁ~」


 スキルは全て封印され無くなり、最初から取得していかなければならなくなった。

 折角作り直した肉体の強度も落ちている。しかし、骨の強度と内臓の再生力は生きているようだな。それは良かった。

 散々苦労した命名しちゃう限界スキルも全部ない。って、【亜空】スキルまでない!

 【亜空】が無ければ中の物を取り出せない。し、中に放り込んだ七人の暗殺者達を外に出してやることも出来ない。いや、それはペティリア達に頼もう。彼女達は俺の亜空間に何故だか勝手に出入りできてしまうからな。

 カメラも取り出して貰わないといけない。

 セフィーとの連絡が取れなくなってしまったからカメラで代用しよう。


「はぁ」


 これからの苦労を思い、思わずため息が出てしまう。

 装備一式は修行中に木端微塵にされてしまっている。完全に修復されるまで時間が掛かるだろう。

 それまで師匠達とお茶でも楽しんで時間を潰そうか。


 ………………はぁ~。



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