空中戦勃発
インペラートル王国王都ミーレスではヴァンチトーレ帝国の猛攻を防壁の結界が防いでた。
降伏の条件を帝国が飲んでいる為、この攻撃は茶番と言える行為でしかない。しかし、民衆を納得させ円満に帝国に下るには一芝居打つ必要があった。
絶え間ない轟音に民衆は精神を患い、不満が流出し治安が悪化する。
そこで国王が自ら茶番を演じることで民衆に帝国を受け入れさせることに成功する。
王国の第二王子であるスクディアを助ける名目と、これ以上の被害を出さぬために降伏する。これで民衆の混乱は収まった。
こうしてインペラートル王国はヴァンチトーレ帝国の傘下に入った。
ジュピターは真っ先に国民への不安を取り除くべく動いた。
国民にはこれまで通りの生活を保障し、戦没者の遺族へ特別弔慰金を払う。
大陸から大量に持ち込んだ物資を必要な場所へと与え、生き残っている貴族達にもこれまで通りの生活を保障した。
更に不安があるのなら気軽に訴えれるように目安箱を至る所に設置し、問題が有ればその都度対処するべき行動を起こした。
大陸から連れて来た大勢の騎士や兵は事が済めば帰国させる予定だが、多くの兵を失った王国の人材不足を解消する為にも一役買ってくれるだろう。
帝国は旧王国の敵ではないのだとアピールしたのだ。
並行して行ったのが軍の再編だ。
竜の確保が難しい古竜騎士団はそのままにし、第一兵団から第六兵団を解体し帝国兵を含めて一から編成をし直す。
大きな問題になるのはコダユーリオンの侵攻だ。
彼等は帝国がインペラートルを下した後も侵攻を止めなかったのだ。
フロリオの砦に立てこもっていたユネオス軍はティデスの猛攻に晒されながらも持ちこたえている。
南から侵攻する黒騎士団も北上を続けていた。
更に新たな軍団が空からミーレスへと侵攻を開始した、空挺騎士団だ。それに追随して地上から魔銃騎士団も確認されている。
これに対処するためにジュピターとユピテルが力を合わせ行動に移る。
ユピテルは帝国の傘下に入った為にジュピターには従わなければならい。
ジュピターの下した命は、
一、古竜騎士団と怪鳥騎士団で空挺騎士団を迎え撃て。
一、新生したマルス率いる第一兵団、スクディア率いる第二兵団で黒騎士団を迎え撃て。
一、アポロ、ディアナ率いる魔術騎士団は魔銃騎士団を迎え撃て。
一、地神騎士団はそのままフロリオ砦を落とせ。ネッダ・デッハとダン率いる両部隊は直ちに地神騎士団に合流せよ。
一、残りの者達は戦後処理。
以上の五つだった。
命を受けた者達は即座に行動に移った。
ミネルヴァ率いる古竜騎士団は、嘗て戦った怪鳥騎士団と共に西の空へと飛んでいった。
「コダユーリオン空挺騎士団の全容は分かっていません。どのような武器、戦術を取って来るか分かりません。気を引き締めて行きますよ!」
「「「はい、ミネルヴァ様!」」」
古竜騎士団と怪鳥騎士団は別行動、争い合った二つの騎士団を即席で指揮するのは不可能と判断され別々の空路からの迎撃となったのです。
コダユーリオンと言えば魔道具です。見たことも無いような道具を多用しての戦術を好んで使ってっきます。
それ故に警戒を怠ることは窮地に立たされることを意味します。
暫く飛行すると、アリの様に小さな群集が視界に入ってきました、空挺騎士団です。数はざっと見て2万程でしょうか。
私は冥神プルートの、フヅキ殿の神魂器となった事で急激なパワーアップがされています。正直なところ急な力の増加に戸惑うことが多くあります。
空挺騎士団を加護の力で鑑定するも些細な情報までもが入り込んで肝心な情報が疎かになりがちです。
強化された加護を制御するには時間と慣れが必要になるでしょう。
「前方に敵影を補足、戦闘態勢!鶴翼の陣!」
「「「はっ!」」」
指示に従い、鶴が両翼を広げた様に皆が左右に展開していきます。
敵は何やら馬の様な形状の乗り物に乗って飛行しています。コダユーリオン固有の魔道具でしょう。
あの空を飛ぶ魔道具の性能が分からない以上一塊になるのは危険だと判断しました。
もし、竜の咆哮並みの攻撃力を持っていた場合、一網打尽にされるのを怖れたための布陣です。
「総員、術式展開、同時にドラゴンブレス準備ッ! 得体の知れない魔道具から意識を逸らさないよう注意しなさいッ! 時間はッ?」
「接敵まで約120秒!」
完全に接敵する前に、何が起きても対処できるように魔術術式を展開させておきます。
セシャトとトモエが風と雷の術式を展開、ルナ、ヤクラが魔術反射、チェスカ、アルパ、ザラがシールド、マァートは強力な炎の魔術術式を展開していきます。
残りの者達もそれぞれ得意とする魔術術式を次々と展開し、何時でも放てる状態を作ります。
「あ~、私はどうしたら良いのかなぁ?」
トモエの後ろ、ピートリアの背に乗るキララがポツリと囁くのが聞こえました。
「キララ、貴女は皆が危険に陥った場合に備えて下さい」
キララが護りに入ってくれれば、これ以上の保険はありません。彼女は快く引き受けてくれました。
「敵、射程に入りましたッ!」
「総員放てぇー!」
私を中心に左右に広がる古竜騎士団から其々の魔術が放たれる、……筈でした。
魔術が発動しない!
「アンチマジックフィールドを感知しました。群の周囲一㎞は魔術が使えません! あの魔道具の能力だと思われます!」
敵は既に目と鼻の先です。
「ちぃー卑怯な真似を!」
「総員術式放棄、ドラゴンブレスてぇ————ッ!」
私は直ぐ様ブレス攻撃へと切り替えます。
コダユーリオン空挺騎士団の乗る魔道具は空を飛ぶだけではなく、魔術を封じる能力を有しているようです。灼熱谷と同じ効果を発揮しているようですね。
正直に言ってコダユーリオン空挺騎士団では古竜騎士団の相手は出来ないでしょう。実力の差を道具を使って埋めることは当然のことであって、決して卑怯とはいえません。
寧ろ我々の飛竜の方こそ敵側から見れば卑怯だと言われかねません。
魔術の代わりに飛竜達からのブレスが放たれ、真っ直ぐに空挺騎士団へと向かっていきます。
厳密に言えばドラゴンブレスは魔術ではありません。竜の吐く息でしかない為、どちらかと言えば魔法に近いモノです。故にアンチマジックフィールドでは防ぎきれないのです。
「みみ皆さん、た、対ドラゴンフィールドをて、展開してくださいぃ」
空挺騎士団が長、アルフィアが部下達に指示を出しています。
アルフィアの部下達が一塊になり、一斉に小さな杖を片手で掲げるのが視界に入りました。すると、杖からマナが放たれその場に強力な結界を創り出されました。おそらくアレが竜に対するフィールドなのでしょう。
コレが対ドラゴンフィールドだと言うのなら、空挺騎士団とは明らかに古竜騎士団を意識した、対竜騎士団だと言えるでしょう。
幾つもの竜のブレスが対ドラゴンフィールドへとぶつかります。
捲き起こった凄まじい煙幕が視界を塞いでしまいます。
私は直ぐに加護の力を使い状況を把握しますが、上手く状況が掴めません。
今の私は己の力を把握しきれてなく、十全に使いこなす事が出来ていないのです。
本来なら力の精査を行い、調整し出撃したかったのですが、これまでに行う程の時間が有りませんでした。
ならば実戦で行うほかありませんが、やはり無謀でしたか。
煙幕が晴れ、敵の姿を確認します。どうやら無傷のようですね。
「テルピュネ、分子崩壊咆をッ!」
私は反撃を受ける前にテルピュネのブレスを指示します。
テルピュネのブレスは他の竜のブレスとは各違いの能力を有します。
今の私ではあの対ドラゴンフィールドが何で形成されている物なのか分かりませんが、テルピュネの分子崩壊咆を防ぎきれる物ではないと踏んでいます。
「え、ええ、ま、またですかぁ!」
アルフィアの間の抜けた呟き。ブレスではフィールドを突破出来ないと思い込んでいるのでしょう。
事実、先程のブレスの束は綺麗に防がれてしまいました。
「総員術式再構築!」
アンチマジックフィールドは未だ健在ですが、古竜騎士団の皆は疑いも無く術式を構築していきます。
私に対する信用、テルピュネへの絶大な信頼が心地よく有難く思います。
彼女達は皆、テルピュネのブレスが敵のフィールドを破るのだと信じて疑っていないのです。
放たれる分子崩壊咆と、それを防ぐべきフィールドがぶつかり合います。同時に指示を出します。
「放てぇー!」
多種多様な魔術が敵集団に放たれる。
先ず、テルピュネのブレスが対ドラゴンフィールドをいとも簡単に突き破り、同時にアンチマジックフィールドをも霧散させました。
「え、嘘っ、や、破られちゃったッ!」
ブレスはフィールドを突き破るだけに留まらず、多くの敵兵を巻き込み彼方へと消えていきました。
「え、ええ、ちょっ、まっ、そ、総員散開ッ!」
続いて放たれた魔術の数々が着弾していきます。
アルフィアは部下達に四散するように指示を出しましたが間に合う訳が有りません!
これで更に数を減らす事に成功したようです。
「う、うそっ、皆、射撃構えて下さい! は、放てぇー!」
数を減らした程度では敵は怯まないようです。
空挺騎士団の面々は、細長い筒状の物を此方に向け構え、金属の弾を弾き出してきます。
アレは魔銃、ただ弾丸を射出するだけの物ではない筈です。
ですが、今度は此方が攻撃を防ぐ番でした。
先程放たれた魔術の中には防御用も仕込まれていたのですから。
「う、うそっ、こ、これ程なの? こ、古竜騎士団って?」
放たれた弾丸が障壁へとぶつかり弾かれ、続き迫ってく魔弾までもが弾かれ爆散しています。
どうやらあの魔銃は通常弾丸の真後ろにマナによる弾丸を追尾させ、着弾と同時に爆発させるようです。
その全てを防ぎきりました。
「総員抜剣、突撃ぃー!」
銃を主武器とするなら接近してしまえば無効化が可能です。勿論、彼等とて銃だけではないでしょうが、今まで銃に頼った戦闘を行ってきたのなら、接近戦に於いて我等の敵ではありません。
私達は躊躇うことなく敵の中枢へと入り込むのでした。




