お偉いさんをからかうのは面白い
俺の目の前には厄介なことこの上ない男が偉そうに豪華な椅子にふんぞり返って座っている。
金の切れ長の瞳に金の長髪、シンメトリーな端正な顔立ち、背は高く肉付きは細くも太くもない。組まれた脚はスラリと長く、肘掛に置く腕すら様になるムカつく程のイケメン。身につけている物まで金ピカの金ピカ馬鹿のゼウスくんだ。
「誰が金ピカ馬鹿だ誰が!そう言うお前も人の事言えねぇだろうが。黒尽くめ馬鹿が」
「はっ!俺黒尽くめじゃん!」
いや、知ってたけど、人の時からそうでしたけどぉ~。
「何なんだテメェはよ、会うなりいきなり馬鹿呼ばわりすんじゃねぇよ」
「まぁまぁ怒んなよ。心の中読むお前が悪いじゃん」
コイツは当たり前のように人の頭ン中覗き込んできやがるな。
「なっ、ジュピター陛下に対して不敬なっ!」
あ、ゼウスの左隣に立つ総司令官くんがご立腹のご様子だ!
因みに右にはマーズ君が呆れている。マーズ君はフロリオのユネオス君を討伐した後、ユネオスの部下達を捕縛して連れて帰った。
頭を倒されても最後まで抵抗を止めなかった兵士達。マーズ君はそんな兵士達を軽くあしらって連れて帰って来たものだから、拠点としているこの場所は捕虜で溢れ返って忙しくてんやわんやだ。
戦後処理と捕虜の扱いで賑わっていたところにゼウスくんが突然に転移してきやがった。んなもんだから、今は非常に騒がしいんだよ。
「あぁ、いい、コイツはこういう奴だ。いちいち構ってるとキリがねぇからほっとけよ」
「は、はぁ、分かりました」
総司令官殿がゼウスに言われて下がる。
こういう奴って言うけど、ゼウスとそんなに話した事ないよね? なんで決めつけんねん! 前の時は結構真面目に戦ったよ俺!
そんな俺の横にはスクディアが立っていて青い顔して此方を見ている。
「お、おい、大丈夫なのか?あまり刺激しない方が良い」
ボソッと俺に言ってくる。
「いやぁ、ジュピターとは以前に会っていてね。そん時迷惑掛けられたから良いんだよ、これ位で」
「良くねぇよ!寧ろ助けてやったろうが、都合の良いように解釈すんじゃねぇよ」
嘗てゼウスがミーレス城へ侵入した時、ユーノからクロノスを切り離すのに世話にはなった。
正直、あの時は過去へ遡るなんて出来なかったから、ゼウスがいて助かったっちゃぁ助かった。
「こういう奴とは言ったが、本当にお前そんな奴だったかぁ?」
「いやぁ、アンタからかいがいがあるから、つい」
いえいえ、私は真面目に交渉に来ただけの交渉人ですよジュピター殿下。
「言ってることと考えてることが逆なんだよッ!」
「あれ?間違えた!」
頭ン中を覗くゼウスくんだからこそのお茶目だねぇ。
「……ったく、テメェの相手は疲れんだよ!っで、交渉ってのは降伏条件の事だろッ!とっとと話を進めやがれ」
「いやぁ、このくっそ忙しい時に突然やって来るから、つい」
「テメェが忙しい訳じゃねぇだろうがッ!」
「てへっ」
「てへぇ~じゃねぇんだよ。忙しいんだから早くしろよッ!」
せっかちな奴め。
「じゃぁ、そろそろ始めるか」
「頼むから早くしてくれ」
「インペラートルが降伏する為の条件は先に言っておいた通りだ。付け加える事はないし、減らす事もないな」
「ああ、コイツな」
ゼウスが総司令官に渡しておいた条件降伏を示したユピテルからの書状を開き見る。
「ああ、良いぜ。この条件を呑んでやる。但し、此方からも条件がある」
「条件?」
「ああ、お前の身柄は俺が貰う」
「え!?お前もしかして、そういう趣味————」
「ちげぇーよッ!美人なら傍に置くがお前は要らん」
「貰うも何も、俺もお前も目的は同じゃろがい」
「……」
テュポーン復活阻止!それが俺とゼウスの目的だ。
そうなると俺は自由に行動した方が良いような気がするんだが?
「いや、正確に言うなら遣いに出したいだけだ。今後永遠に俺に仕えろって訳じゃねぇ」
「聞きましょ」
「強狂怖大森林を北に抜けた大国、エルト王国へと赴き戦争を止めろ。あそこの王はクソッタレだが、王妃も王女も出来た女だ。お前は現王を排斥し、次期王になれ」
「アホかっ!」
「誰がアホだ!真面目な話なんだよ!いいか、強狂怖に接した王国が戦争してんだぞ、危ねぇだろうがッ。お前が王に成り、今後戦争を抑制しろ」
コッチは良いのか?って話になりませんかねそれ?
「コッチは俺が抑えてっから良いんだよ!」
王になれってマジかコイツ。王なんて簡単になれるモンでもないっちゅ~の。
だが確かに森を刺激するのはマズいかもしれない。王になることは置いておいて何とかした方が良いのは確かだ。
「簡単に言ってくれるな?」
「ああ、お前なら可能だ。エルトは隣国のエネミル王国と争っているが、現国王はエネミルと繋がっている売国奴だ。王妃が何とか抑え込んではいるが、殺される可能性が高い。何とかしろ」
「何とかしろって、いい加減だな!」
「男が女を助けるのは常識だ、それは人も神も関係ない。なに、王になるのは簡単だ。王妃か王女を娶ればいい。簡単に王になれるぞ!あの売国奴をとっとと殺せばいいだけだ。内通者を始末しさえすれば後は簡単だろう。エルトの騎士達は優秀な奴が揃ってっからな。警戒すべきは土着の神々、アッチには神が存在してんだから慎重に事を進めろよッ」
彼方側には勇者を召還する調和神レーネが居るが、その他にも居るらしい。
土着神、太古の昔から存在し、その土地に根を張り棲み続ける神や精霊の事だな。
面倒な事を押し付けられている気がするぞ。
「って、別に王になる必要はないだろう。ただエルトを勝たせれば良いだけだろ?」
「王はいいぞ!簡単に国を牛耳れるし、何より高みから見る景色は最高だ」
お前は天王神だから見下ろすのが好きなだけだろう!俺は冥神だから見上げんだよ!
「まぁ、そう言うな。褒美にアッチは好きにしていいぞ。森さえ刺激しなければ何をしても俺は干渉しない。大陸中の女を娶るのも、男を弄ぶのも好きにしろ」
「いらんわぁ、そもそも俺の奥さん既に決められてたんだけどぉぉぉ!」
セフィーの称号何とかしてくれ!決して彼女が嫌な訳じゃないんだけどよぉ、ちと、幼すぎやしませんかね?
「おお、そういやぁ居たな、んなのが。アレはいい女になるぞ、今の内にキープできて良かったじゃねぇか。他所の男に取られるには惜しい女だぞ。一緒に連れてけよ」
「だから簡単に言うなッ!一国の王女だぞ!」
あっ、スクディアがピクリと反応してコッチを睨んでる。
「王女、だと。貴様セフィーやディディに何かしてないだろうな!」
「何もしてねぇよ!寧ろされた側っつぅ~か何つぅ~か? 勝手に嫁さんが決められてた的なぁ?」
「貴様!嫁だと! どっちだ!セフィーかディディか!? いや、どっちだってよくない!二人に何かしてみろ、いくら貴様とて容赦はしないぞッ!」
「いや、だから何もしてないって。ちょっと称号にな……」
やぁーややぁーやと騒ぐスクディアを置いておいて話を進めよう。メッチャ睨んでくるけどしゃ~ない。
「連れて行くにしても安全を確保してからになるな。出来ればエルトに渡ってからにした方が無難だろう」
降伏を受け入れる条件として出された以上承諾しなきゃならんだろうな。ゼウスももうその気になってるし。
「まあ、その辺は好きにしろ。兎に角、コッチの事は俺が何とかするから、お前は気兼ねなく向こうを何とかしろよ」
ゼウスのが此方を治めてくれるなら問題ないな。神界を治めている奴だ、下界もキッチリと治めてくれるだろう。
問題は俺の方か? 独りで行くか、それとも誰かを連れて行くか?
セフィーを連れて強狂怖を縦断するのは無謀なので却下して、燿子はセフィーの護衛として残して行く。ミネルヴァはアテナとも話した通りこの地で古竜騎士団を引き続きやってもらって、問題はキララだな。
現在は古竜騎士団の護衛的なことをしている彼女だが、連れて行ってもいいものかどうか。
ゼウスがこの地を治める以上争いは直に無くなる。テュポーンの欠片の心配もいらん。それならば護衛役は要らない。そもそも彼女達に護衛が必要かどうかも疑わしい。トモエが居る以上黄泉津大神の姐さんが味方してくれるだろうしな。
だが、折角できたキララの友達だ、引き離すのは忍びない。
……うん、呼べば直ぐに来てくれるし、ゼウスの監視も兼ねてこのまま古竜騎士団達と行動してもらおうか。ゼウスは誰に何時手を出すか分からんからな。
「テメェ、俺を何だと思ってやがる」
豚将軍は既に転生の準備に入って冥界へと戻ったから連れてけない。黒狼もこのままスクディアの元に居たいと言っている。となると俺は単独で森を渡ることになるな。
「良いよ、独り寂しく森を渡るよっ!」
「コ、コイツ、人の話を聴いちゃいやがらねぇ」
聞いてるっちゅうの、只無視してただけだよ。
「っと、その前にお前はミーレス城へ戻って説明しとけよ」
「はいはいは~い」
「はいは一回でいいんだよ」
「ほほぉほ~い!」
「はぁ~、あの真面目な兄貴の眷属がなんでこんなにアホなんだ? やっぱお前初めて会った時と人格変わってねぇか?」
「ンな事ねぇよ。俺は昔からこんなんだよ」
「……そうか?」
…………………………
ってな訳で、返ってきましたミーレス城! グダグダ五月蠅いのは放っておきました!
あれからスクディアや帝国のお偉いさんがぎゃーぎゃー騒いでたけど無視してきた。
「皇帝陛下に対して不遜な態度だ」とか「正式な場に似つかわしくない」とか「妹に手を出したらコロス!」だとかいろいろ言われた。けど全部無視して帰って来たッス!
そして目の前のユピテルに先の成り行きを説明、その後の対策を話し終わったところだ。
「てな訳で、ジュピターが了承してくれたから。後の面倒な事全部ジュピターに押し付けちゃっていいから」
「いや、流石に押し付ける訳にはいかないだろう」
「ですが、これで終戦と言うことですね?」
「後始末があるだろうがな」
うん、コッチは真面目に会話が進んでいる。
ユーノやウェヌス皇女、マルスにミネルヴァもいるよ。
この戦争は表向きの理由としてウェヌス皇女の奪還がある。その為に皇女を取り戻して終了ってことになる。
敗戦国たるインペラートルは、本来なら現国王の首一つでケジメを付ける。実は他の王族が処刑されるってのは余り例がない。勿論ケースバイケースではあるが、だが、今回の戦争は特殊で、皇女を攫ったマルス王子の首も必要になる。寧ろ此方がメインだろう。
もしユーノが他国のお偉いさんだった場合、おいそれと殺す訳にもいかない。勿論その子供たるマルスもだ。しかし、ユーノは自国出身のお姫様、これは当て嵌まらない。だから殺されても可笑しくはない。
帝国は残った王族を皆殺しにして、再起の芽を摘んでおくことだって可能だが、ゼウスはそんなことしないと明言している。ユピテルの首も、マルスの首も要らないそうだ。
これが帝国の仕掛けた侵略戦争であった場合、人口爆発で土地が足りないって訳じゃない限り殺戮が行われる事はない。労働力は確保したいからな。故に生き残った貴族達も殺されない。
貴族達はインペラートルからヴァンチトーレの貴族に所属が替わるだけ、処刑はない。
王族はジュピターの配下に加わることになる。それが嫌なら他国に亡命する必要があるな。
と言う訳で誰一人殺されることなく終戦となる。尤も、コダユーリオンとの戦争はもう少し続きそうだが。
結局のところ、皇女の元までジュピターが来て終わりってことになるな。マルスとの結婚はどうなるか知らんが、おそらく可能だろう。国民の感情はどうかは知らんけどね。嫁さん貰ったら親父が付いてたって笑えるわぁ~。
マルスは優秀だから、ゼウスは抱き込むのに丁度いいと思ってるかも知れない。妻の父親に反抗はしないだろうし、上手くやっていってほしいものだ。
スクディアは、俺の見たところマルスよりも優秀だ。行動力も判断力もあり、自らが泥を被る事も厭わない性格だ。家族思いなところも好感が持てる。ゼウスも下手な事には使わないと思いたい。
ディディは知らん。あの性格だとトラブルを起こしそうな気はするな。
セフィーは俺の嫁じゃけぇ誰にも手を出さんし出させん。燿子もいるしな。
問題はユーノだ。ユピテルとクロノスが護ると思うが、彼女の事をゼウスがいたく気に入っているらしい。NTRないように気を張っとくんだな。
で、一番の問題は……、俺か!
森を単独で抜けなきゃならん。確かあそこって竜の巣とかなかったっけ?
いくらTランクの肉体を新調したとはいえ、神話級の竜と事を構えるのはマズい。って言うか無理だ。森でTランク同士が争えばテュポーンの封印に影響しかねない。
これは……、手土産が要りそうだな。何か竜が好む物を持参する必要がありそうだ。
竜の好む物って言ったらアレでしょう!そう、金銀財宝!
ねぇよ、んなもん。……どないしよう?
まぁ、鉱物を創造するのは得意中の得意だから何とかなるか。
あと、美味い飯でも持ってけば通してくれるかな?
じゃぁ、早速準備に取り掛かるとしますかね。
「じゃ、そういう訳で!」
「まて、何処へ行く!? 何がそういう訳なんだ!?」
牢屋に戻って準備しようとしたら待ったが掛った。もう、用が有るなら早くしてよね。
「え? 森を抜ける準備しに行くんだけど?それが何か?」
「なに? 森を抜けるだと?」
「あれ?言ってなかったっけ? 降伏条件を飲むための交換条件でゼ…、ジュピターに言われたんよ。強狂怖大森林を抜けろって」
「はあぁー、ちょ、え、なに? 強狂怖を抜ける? あの大森林をか?」
「そんなッ、まさかお父様がその様な危険な条件を出すなんて……、自殺行為ではありませんか!」
ウェヌス皇女が驚愕のご様子。彼女は俺の実力を知らないからしょうがないか。
「待ってくださいフヅキ殿」
今度はミネルヴァが言い寄って来る。
「あそこは正に魔の森です。いくら貴方と言えど簡単に通り抜け出来る場所では有りません。この間遭遇した魔物ですらあの森では弱者、中心部である竜の巣に近付く程強力な魔物が揃っている魔境なのです」
「あ~、でも、これ受け入れないと降伏を受け入れてくれないよ。大丈夫だって、キララが渡ってんだからコツとか聴いてから行くからさっ」
「ですが……」
元々キララはムルサン大陸最北端のマウスターレ神国に召喚された勇者だ。その彼女が竜の巣を越えた南側に来てるんだ、どうやって渡ったのか彼女に聞けば良いんじゃん!
現在キララは古竜騎士団の面々と一緒にいるので呼びかけてみる。
キララッ、キララっ、どうやったん?
『どうって? 主、あそこ渡る気なの?』
渡る気です!
『あ~、私のは当てにならないよ。レーネ神が用意した竜神のお嫁さんを連れて行っただけだから』
「はぁあ、お嫁さん!!!」
「なんだ!なにが嫁だ!セフィーはやらんぞ!!! 如何に貴様とて、俺の娘に手を出したら承知せんぞ! いいか、おい、聞いているのか!おおい!」
頭の中でキララと会話していたたら、声が出てしまった。
ユピテルがエライ剣幕で怒鳴り散らしてくるが、今はそれどころではない。
「あ~、ちょっと黙っててくれるか。今大事なとこなのよ」
ぎゃーぎゃーと騒ぐユピテルの背を、ポンポンと無言で叩き落ち着かせるユーノ。
ぎゃーぎゃーなところはスクディアと似てるな。まあ、どうでも良いが……。
「竜神の嫁さんってどういうこと?」
『さぁ? レーネ神に森に修行しに行くって言ったら連れて行きなさいって』
いくら勇者と言えど竜の巣を渡るのは不可能だと用意されたメスの竜神。嫁を差し出す事で争いを回避したそうだ。
レーネ神がどうやって用意したのか不明だが、俺に用意できるものでもない。
創生すれば可能だが、幾ら何でもTランクの創生は難しい。 それに二番煎じでは効果が薄くなるだろうしな。
皆が俺に注目している。……やめて、なんか気恥ずかしいじゃん。
「……ったく、兎に角、キララと同じ方法で竜の巣を抜けるのは無理そうだな。やっぱ金銀財宝用を意するか」
「財宝を渡し竜の巣を素通りさせてもらうのか? だったら国の宝物庫から好きなだけ持って行くと良い」
「え!?いいの? それじゃあ全部おくれ!」
冗談で言ってみる。本気で欲しい訳じゃないよ、寧ろ要らない。だって自作の方が質の良い物が出来そうなんだもん。
しかし、俺の冗談を真に受けたマルス君が反応を示した。
「なっ、全部だと!それはいくら何でもッ! 無理だ、帝国へ献上する分を考え半分でも厳しい!」
「真面目なやっちゃな、冗談だよ」
俺が冗談だと伝えると、ジト目で此方を睨んでくる。
男のジト目なんざ見たくないんだよ。
「……流石に全部持ってかれると此方としても困るが、宝物庫には可成りの量の財宝が眠っている、一部でも竜にくれてやるぐらいどうってことはなかろう」
ユピテルが太っ腹な事言ってる。けど、それは要らない。
「いや、それは自分で用意するから必要ない、今後の為に取っといてくれ。ジュピターも占領した場所が文無しでしたじゃあ泣いてしまう」
「では、せめて選りすぐりの護衛を付けよう」
「要らん要らん。寧ろ邪魔になる。大丈夫だ、俺一人で問題ない」
ミネルヴァが、
「ですが、せめて私だけでも連れて行ってください。テルピュネで空から行けば少しは安全かもしれません」
「いや、ミネルヴァが国を離れるのは宜しくない。キララと一緒に此方を護ってくれ。用があれば呼ぶから」
「なっ、キララも置いていく気ですか!」
『ちょおっと、主、私は付いていくよ!』
「必要になったら呼ぶから待ってなさいって。ミネルヴァは古竜騎士団の皆を護んないといかんだろ?(主にゼウスから)キララにはセフィーの事を頼みたいんだよ」
「『…………分かりました』」
うむ、不承不承とだが二人とも分かってくれたようで何より。
『はぁ、ところで主、ガドンレス殿が牢屋に入ってるけど、どうするの?』
「なに!俺の牢屋にガドンレス君がぁー!」
「……いや、別にお前の牢屋ではないぞ」
こんな事してる場合ではなかった!俺の牢屋を取り戻さなくては!
「って訳でアディオ~ス!」
「待て! なんでそうなる!」
背後で何か言ってけど、もう耳に入らないもんね。
とっとと牢屋へ戻ろう。
「おっ、ガドンレス君発見! そこ俺の牢なんで、横にズレてくんない?」
「は? 言っている意味が分からないのだが?」
疑問符を頭上に浮かべるガドンレス君を横の牢屋へ無理矢理移動させ、俺は竜共に渡す手土産の創造に取り掛かる。
「さて、何を渡せば喜ばれるものか?」
「誰かに何かを渡すのですか?」
「そうなんだよ。竜の巣に行くから手土産が居るんだけど、何が良いかで悩んでんねん」
「まあぁ、竜の巣へ赴かれるのですね?」
「ああ、ジュピターの奴がよぉおぉ~、行けって言うから仕方なくよぉおぉ~」
「私も連れってってくださにね?」
「…………何で居んの? 何で毎回牢屋にきちゃうの?」
俺の背後には当たり前のようにセフィーが居たッ!
「それは、フヅキさんが居るからに決まってるじゃないですか」
屈託のない笑顔が眩しいッ! どうしてそんなに期待できるのかッ!
「連れてかないよ」「イヤです」「危険だからダメ」「なおさら着いて行きます!」「ダメったらダメッ!」ってやり取りがあり、暫くの間言い争っていたが漸く決着がついた。
「膨れてもダメ、本当に危険だから連れて行けないの! 連絡は細目に入れるし、カメラを置いてくから直接顔を見ながら話も出来る。 向こうに着いたら呼ぶからさ、いい子に待っててくれよ」
「む~、いつまでも膨れていても仕方ありません。旦那様を信じて待つのも妻の仕事ですね! でも、これだけは許してくださいね」
チュッ、と頬に口づけをするセフィー。 恥ずかしそうに頬を朱に染め、それでも俺の眼を確りと見据えてくる。
くそっ、可愛くはあるんだよなぁ。 まだ12歳の幼女、幼すぎて俺の道徳心が痛いんだよ。
「それでは私は待っていますから、連絡を忘れないで下さいね。絶対ですよ!」
「ああ、約束する」
セフィーは安心したのか笑顔を振り撒きつつ帰って行った。
「さて、これで後は手土産作るだけだな」
「何だ?何を話していたんだ!」
あ、ガドンレス君のこと忘れてたッ!




