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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
動くコダユーリオン
49/66

コダユーリオンでの会議内容とは?

「もう、どうして部屋を用意したのに、また牢にいるんですか?」


 のんびりと牢でアイテム造りや隣国の盗撮をしていたら突然やって来たセフィーに怒られた。

 あれから直ぐに俺達は亜空を利用して王都へと戻ったが、ミネルヴァとキララ、姐さんが離れ元に戻ったトモエ達はその場からマルス達を追って北上していった。


 王城に戻ったら直ぐに部屋を用意されたが、どうも落ち着かないので牢屋へと戻って来たんだが、ここ、この牢屋は人の気配が無くて落ち着くんよ。


「お部屋でお茶しょうと思ったら居ないんだもん」

「ごめんごめん。どうもここが気に入っちゃってね」

「む~、牢屋を気に入るってどうなんですか?」


 冥神の影響だろうか?暗いところが落ち着く。


「何をしてるんです?」

「ん?お隣さんの国の様子を見てるんだよ。どうもよろしくない方向で話が纏まりそうだ」


 除き見ているのはコダユーリオン王国の王城、その会議室。

 そこで国王らしき女性とその側近達が大きな机を囲い話し合っている。ジャックを操っていた真の暗殺者アンバーの姿もあった。

 暗殺王ジャック、その正体はアンバーが傀儡の術式を以て操っていた只の全身鎧だ。


 そして、会議の内容だが……。




「ですから、インペラートルとヴァンチトーレの両国を相手取る程の戦力は有りませんと申しているのです!」


 美しい妙齢の女性キシュル、コダユーリオン王国の財務の役割も担う補給部隊の隊長を務める女性だ。

 何処かキャリアウーマンを連想させる外見、メガネの似合いそうな顔立ちをしている。


「いやしかし、このまま傍観していても、後の立場が悪くなる一方ではないか?ここは無理を通しても攻め入るべきだ!」


 此方は男性、この国の女王であるエレスケミア・アトゥ・コダユーリオンの実弟であるアルサレス・ウトア・コダユーリオン、王弟殿下で在らせられる。

 この国は代々、女性が王を務めている。

 エレスケミアは若く王となり、これまで苦労しながらも善政を敷いてきた良き王だと慕われている。

 筋骨隆々で戦士をイメージする外見、真っ赤に燃える様な逆立った髪の毛が印象的な女性だ。

 対して弟の方は華奢で細身、蒼くストレートな長い髪を頸の後ろで結っている。


「攻めるべきは今ではありません!インペラートル、ヴァンチトーレの双方共にもう少し消耗させてからでも遅くは有りません」


 このキシュルの言葉に、どもりながら応える少女が居た。名はアルフィアと言い、ミネルヴァ率いる古竜騎士団に対抗するために設立された魔導空挺騎士団、その団長を務めている少女だ。


「でっ、ででも、お、遅れれば帝国が攻めてくるよ。あ、あの帝国にせっ、攻め込まれると護りにくい」


 アルフィアは、まんまエルフの特徴を受け継ぐ長身細身の女性だ。

 続き少し不機嫌そうな声が響く。


「はっ、あんなの俺の魔銃騎士団の手に掛かればイチコロだ」


 彼女は魔銃を使いこなす騎士団の団長スヌレムス、145㎝と小柄で鋭い眼光を宿した女性だ。低身長ながら気の強い女性で何かと怒鳴り散らす癖がある。

 そんな彼女にアンバーが口を挟む。


「キヒヒヒッ、それはどうでしょう?私が戦った帝国の騎士は、それはもぅ強かったですよ。私の駒が一つ潰される程に」

「それは貴様が本気で相手をしなかっただけだろう。初めから本気を出せば勝てた戦いだったんじゃねぇのかよ?」

「いえいえ、私は最初から本気でしたよ。ジャックは兎も角、サエビジアを使ったのですから」

「はん、そのジャックはどうなったんだ!?何かに乗っ取られたような事を言っていたな」

「さて、どうなったのでしょう?私には分かりませんな。何処かで今も戦っているのではないですかね?」


 アルサレスが難しい顔をして二人の会話に割って入る。


「のっ、のの乗っ取られるって、だだ、誰にですか?」

「さぁ?それは私にも分かりません。只、桁違いに禍々しく強力な存在に成り果てましたね」

「そんなの放置して大丈夫なのかよ!」


 スヌレムスが不安を口にする。


「帝国か隣国の何方かが倒してくれるでしょう。どちらにせよ我々には損はないと思いまうよ」

「いや、あれ程の魔道鎧を……、可成りの損失になるでしょう」

「ですから今は、ここぞという瞬間まで戦力を温存、増強して————」

「いえ、やはり今こそ攻めるべきです!両国とも今は疲弊しています。ここぞと言うなら今に他なりません!」

「そんな筈有る訳ないでは有りませんか!帝国が送り出してきた軍は凡そ100万だと言います!多少削れた程度では話になりません!それにヴァンチトーレには勇者が、インペラートルにはミネルヴァが居るのですよ!せめて何方かが倒れてからでも遅くはない筈です!」


 ああでもない、こうでもないと話し合いは続く。

 この結論の出ない会議に苛立ちを募らせる若き女王が初めて声を発した。


「ええい、静まれ!」

「…………」


 あれだけ喧しかった会議室が静まり返る。


「アルサレス、何故に今、それ程に出陣したがる?」

「先程キシュルが言った通り帝国軍は100万もの兵を送り出しています。ですが、現在このムルサン大陸へ渡った者は多くても60万でしょう。そして今、数万から数十万の犠牲が出ています。残りの全ての兵が揃う前に叩いてしまった方が楽、出来れば兵が揃う前にミーレスの防壁を奪いたいところです。逆に全ての兵が揃ってしまえば、ミーレスの防壁は帝国に奪われることでしょう。そうなれば我々に壁の向こう側に居る帝国兵を破る術がありません」

「このまま我等が傍観を決めれば、インペラートルは帝国に落とされるか」

「はい、間違いなく。ミネルヴァ一人で抑えれる数では有りません。エナスが裏切り、王の盾たるヴィクトリアは城から出ては来ません。インペラートルには端から勝算など無いのです」


 フヅキとキララ、燿子の存在を知らないアルサレスの意見は帝国の勝利だという。


「では、キシュルよ。お前は何故異を唱える」

「はい、我が国の食料自給率は38%と低く、殆どを帝国からの輸入に頼っています。強狂怖へ入れれば食料も豊富にありますが、危険を伴う為にこれまでは避けてきました。帝国を敵に回すという事は、これから先、食料は自給しなくてはならなくなります。つまり、これから先は強狂怖に頼ることになります。ですが、凶悪な魔物が跋扈する森で、安定した食料が取れるかは未知数です。もし、帝国とやり合うのであれば、より良い交渉が出来る様に必ず勝たねばなりません。故に弱り切ったところを叩くしかないのです」

「ああ、どちらも真っ向勝負では我等は帝国に勝てないと言うのだな」

「「はい、勝てません」」


 エレスケミアの問に声を合わせ即答で答える二人。そして、更にキシュルが続ける。


「気になる情報もアンバーから聞きました。どうもインペラートルには、魔道具の製作に関する天才がいるよなのです」

「ほう、どうなのだアンバー」

「キヒヒヒッ、確かにその通りで御座います。エナスが持っていた剣は国宝クラスの魔道具、更に乗っ取られたジャックの攻撃を防いだ魔道具も見たことのない性能。もしあれらが量産されていれば脅威となりましょうな。エナス本人が言っておりましたよ、隣人が魔道具の天才だと」

「我等のお株を奪われたか」


 コダユーリオンは魔道具の量産国なのだ。


「いえいえ、そこまでの量産は出来ないと踏んでいますがね。持っていたのはエナスだけでした。尤も、会ったのはスクディア殿下とエナスだけですがね。キヒヒヒッ、ああそうだ、転移の魔道具で最後は逃げられたのでした」


 最後のアンバーの言葉にその場の全員が戦慄を覚える。


「なっ、転移だと!それが誠なら戦の概念など覆されるぞ!」

「フヒョヒョ、あんなものが量産出来る訳ないですよ。アレは超が付く程希少な素材と卓越した技術が必要、そんな素材も技師もそうそう居ませんよ」

「それでも楽観視は出来ぬな。インペラートルですら無暗に挑むことが出来ぬ状況、このまま最後まで傍観に徹するのはどうだ?」


 エレスケミアの発言に異を唱えるアルサレス。


「それはなりません陛下。帝国は必ず鉱山を狙ってきます。先程も言いましたが、ミーレスの城壁を手にした帝国に此方から仕掛けても勝ち目はありません。攻めてきたところを打つしかないのですが、それでは数に押され勝負になりません」


 キシュルが続く。


「寧ろ、インペラートルが力を持ち、寄り多くの帝国兵を倒してくれれば我等にも勝ち目があります」

「ふむ、それでもインペラートルはヴァンチトーレに勝てぬか?」

「はい、間違いなく」

「何故だ?」


 キシュルに代わりアルサレスが答える。


「これまでの戦で帝国は勿論の事ですが、インペラートルにも甚大な、いえ、致命的なまでの被害が出ています。今更力を見せたところで手遅れ、既に国を維持する力すら危ぶまれる状況だと予測できます」


 アルフィアが恐る恐る提案を口にする。


「で、でしたら、いっその事、てっ、てて帝国に味方に付くのはど、どうでしょうか?」


 これにスヌレムスが噛みつく。


「馬鹿かお前は!拮抗している状態に味方に付くなら意味があるけどな、勝ちが決まってから味方しますつっても遅いんだよ!」

「ひっ、ご、ごめんなさい!」


 怒鳴られ俯いてしまうアルフィア。

 勝敗が決していると思っているスヌレムスには、今更帝国に味方しても意味はなく、下手をすれば属国扱いされかねないと踏んでいる。

 アルサレスがスヌレムスに問い掛ける。


「では貴女ならどうしますか?スヌレムス」

「決まってんだろ!今直ぐにでも攻め込むんだよ、ミーレスに!帝国に奪われる前にな!このままじゃインペラートルは帝国に滅ぼされるか降伏するかの二択だろ。俺は今直ぐ攻めるつぅ殿下の意見に賛成だ!」


 そう叫ぶスヌレムスにキシュルがポツリと呟く。


「あの国には降伏しか生き延びる可能性がありませんね」

「我等は何方にも付けぬか?では、確実に勝てる時期とは何時だ?キシュル」

「は、はい。せめて帝国兵が全体の半数を切り、勇者が疲弊し、出来るだけ多くの英雄の情報を掴んでからでなくては勝ち目はないかと」

「勇者か……、確か勇者マーズは急激に力を付けたのだったな。であれば、ミネルヴァにも勝ち目はあるのか?」

「はい、十分に目は有るかと」

「ふむ、彼の竜騎士とはそれ程の者だったか。して、我が軍にそれだけの事が出来る猛者はどれ程居る?」


 このエレスケミアの問に対し、この場に居る一人を除いた全員が我こそはと声を発する。

 その一人が、


「ででででも、あああのミネルヴァさんは、ゆゆ勇者にけ剣の手解きをするほ程です。わ、私の聴いた話では、かか嘗てはゆ、勇者を圧倒していたとか。い、今の我々がこ個々に挑んでも勝てる見込みはひっ、低いかとお思います」


 冷静に事を分析するアルフィア。


「む、では是が非でも勇者とミネルヴァには戦って貰わねば困るな」

「はあぁ、俺なら単騎で十分だつっってんだろう!奴がAランクなら俺もAランクだっつぅーの」

「そっ、それに、ミミ、ミネルヴァさんの部下達も曲者揃いだと聞き及んでます。か、彼女達はランクに似合わない強さだとか……。ゆ油断は禁物です」


 これに怒鳴りつけるようにスヌレムスが言う。


「んなこたぁ分かってんだよ!相手が強いなんざ想定内だっ!今考えんのは、相手の強さじゃねぇ、どう勝つかだろうがっ!」

「うぅ、ご、ごめんなさい……」

「では、この後の両国での動きはどうか?」


 キシュルが答える。


「インペラートル軍はこのままミーレスへと帰還し籠城することでしょう。帝国軍はミーレスに入られる前に追い付き、マルス王子を人質として確保したいところですが、間に合わなければ少々厄介です」


 ここで一息入れるキシュル。続けて喋り出す。


「間に合えばマルス王子を餌に交渉が始まります。この時点で戦力の大半を失い、王太子を人質に取られているインペラートルは降伏する以外道はありません。私達にとっては最悪のシナリオになります。これ以上の兵の消耗も無くミーレスの防壁を帝国が手にしてしまうからです」


 更に一息つく。


「ですが、間に合わず籠城された場合、城壁の結界が厄介です。これを破るには勇者の城壁破壊が必要になりますが、そう易々とはいかないでしょう。必ずミネルヴァ率いる古竜騎士団が邪魔をするからです。アルフィアの言う通り古竜騎士団は強く、帝国の英雄と言えども簡単には降せません。恐らく、双方に甚大な被害が再び出ることでしょう」


 もし、ミネルヴァが破れるなら、インペラートルは最早脅威足り得ない。もし、勇者が破れるなら、帝国を降すことが一気に楽になるだろうとキシュルは言う。何方にせよコダユーリオンの利となる。


 エレスケミアが意を得たりと声を発する。


「では、その時こそ我等の出番と言う訳か?」

「その通りで御座います陛下。帝国を降すには絶好の機会と言えるでしょう。既に城壁に護られているインペラートルとて籠城を何時までも続けるだけの自力は有りません。私達にとって、この瞬間こそが最大の好機になるでしょう」


 説明が終わり黙るキシュルにアルサレスが声を掛ける。


「なればこそ今直ぐにでも帝国軍の脚を止める必要があるのではないか!」

「ですからそれは早計だと申しているのです!今、帝国に手を出せば此方にも軍が雪崩れ込んで来ます!それこそスクディア王子の思う壺です」

「数が割れるのなら勝ち目はあるではないか!」

「防壁を取られてもですか!お忘れかもしれませんが、帝国本土にはまだ余力が残っているのですよ!」


 ヴァンチトーレはこの戦に全兵力を送った訳ではない。本国にはまだ多くの兵達が残っているのだ。

 キシュルは防壁を取られた上で兵を増やされては勝ち目が無いと言う。


「ならば、先にミーレスを落としてしまえば————」

「それが無理だと言っているのです!」


 再び始まる言い争い。


「そこまでだ!」

「………………」


 エレスケミアの一喝により、会議室に二度目の沈黙が訪れる。


「私は決めたぞ。キシュルの意見を聴き入れ暫くは傍観に徹する。が、機を逃さず速やかに行動に移れるようにしておけ。決して気取られるなよ!」

「ですが姉上!」

「陛下と呼ばんか!」

「し、失礼しました陛下。ですが陛下、運を天に委ねる作戦に賛同出来かねます」

「そうだぜ、もしマルスが帝国に捕まったらどうするんだ?」

「なに、そうならぬよう嫌がらせはする。具体的には天候操作の大魔道具、アレを使う」


 天候操作用大魔道具その名もムーンショット、局地的な気象制御を行う農産用魔道具。

 使用に莫大な魔力を必要とし、多くの魔術師を使い潰す必要のある危険な魔道具だ。


「なっ、アレはそう易々と使える物ではありません。この時期に多くの魔術師を使い潰しては本末転倒です」

「なに、時間はある。魔石を消費しても回復させ然るべき時に備えよ!アルサレス、魔術師を搔き集めムーンショットを起動せよ!アンバーはアルカーヌムまで転移し待機、何時でも出れるよう準備せよ!」

「「はっ!」」

「スヌレムス、お前はアルフィアと共に東へ行け!東のプロスト砦にて待機だ!お前達が最も早く敵とぶつかる、心せよ!」

「「はっ!」」

「キシュル、お前は補給の準備だ!不足の物が一つたりとも有ってはならぬ、十分気を付けよ!」

「はっ!」

「では、総員準備に取り掛かれ!」

「「「ははっ!」」」




「え?これはマルスお兄様が危ないんじゃ?」

「なに問題ないさ。帝国兵はマルスに接触する前にキララやミネルヴァとかち合うからな」


 セフィーの不安を消すように何でもないと軽く言ってやる。

 実際俺は心配していない。可成りの高確率でマルスは間に合うと思う。だって、セフィーが心配してるから。

 彼女の持つスキル群が、彼女の不幸を許さない。絶対にキララ達が何とかしてくれるだろう。


 ってな訳で、俺は再び魔道具造りに没頭するのだった。牢屋の中で……!




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