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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
ヴァンチトーレ帝国の脅威
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何気にほのぼの

 ってな訳で、あれ程苦戦したテュポーンの欠片はあっさりと片が付いた。

 黄泉津の姐さん、黄泉津大神が片手を向けた瞬間に呆気なく消し飛んでしまった。

 考えてみれば当たり前か、姐さんは正真正銘の神様だ。人を依代にしているとは言え、只の欠片では手に負えまい。

 姐さん自身、神々の中でも上位に位置する力の持ち主だ。未だに夫婦仲は芳しくないらしいが、偶にあっては喧嘩交じりにイチャラブかましている。


 ……って、そんなことはどうでもいいか。

 これで一つの脅威は去ったが、戦争が終結した訳ではない。むしろコダユーリオン王国が参戦して泥沼化しても可笑しくない状況だな。傀儡とは言え、将の一人を葬った訳だから。

 これから隣国がどう動くか予測不能だ。秘密にしていであろう傀儡に邪なものが宿りそれを他国が退治した。これで戦争を起こすかどうかだ。

 いや、戦の理由には弱いか。仕向けたとはいえ、襲って来たのは彼方だからな。

 面子を潰されたと取るか、厄介者を排除したと取るかで話は変わってくるだろう。

 実際に倒したのは姐さんだが、姐さんをその身に降ろしているのはトモエだ。言い訳は出来ない。


 ……まっ、俺が考えても仕方がないか。胸の風穴を塞ぐことに専念しよう。そして本来の目的も忘れてはいけない。


「あ、姐さん、その子猫だけど……」


 黄泉津の姐さんが今も腕に抱く子猫を指さす。俺は子猫の保護に来ただけだからな。

 神魂器達が俺の胸の穴を大急ぎで塞いでくれる。

 セフィー達が心配してくれているが、急速に塞がる傷を見て安心したようだ。


「ふむ、この猫がどうかしたのかの?」

「にゃ!」


 ……どうかしたのかって?……何で猫が返事しとんねん?————何で生きとんねん!


「————何で生きてんのぉ?」

「うむ、あのままでは哀れだったのでな。少し力を貸してやったまでのこと、ヌシとて子猫の人形に興味は無かろう」

「あ、いや、……え?」


 この惑星を割る程の爆弾がー、動く自立式爆弾になったぁ————!!!


「あるじぃ!この子可愛いぃ。飼ってもいい?いいでしょ?いいよね!」


 キララさんや、それは無理!燿子とは訳が違う。

 いつの間にか人に戻ったキララが姐さんの腕の中を除き込んでいる。

 更にセフィー達までが参加してくる。


「わぁ~、本当にかわいいですね~。私にも触らせて下さい!」

「殿下、あまり不用意に動物に触るのはお止めください」

「ぶ~」

「キュウ~」


 セフィーが子猫を抱く姐さんに近付き、ヴィクトリアが止める。

 ヴィクトリアとしては得体の知れない存在を警戒しているのだろう。

 それよりセフィーさんや、燿子が複雑な顔してるから構ってやってくれ。


「何を言う娘!こ奴は妾が責任を持って面倒を見る。いくらベルの小倅にもこ奴はやれぬわ」

「え~~~」


 ト、トモエの意見はどうするのでしょう?随分と気に掛けていた様なんですがね。

 姐さんが子猫を地面に降ろすと、元気よく駆けまわり始める子猫。


「姐さん、冥府へ連れてくの?」

「うむ、これでベルにケロ介の自慢に対抗できるというものよ。ふふふ、ベルだけではないの、エレにもミッちゃんにも自慢できそうではないか。くふふふ」


 ケ、ケロ介?……ああ、ケロべロスのことか。蛙じゃないんだからケロ介は勘弁してやってくれないだろうか?

 エレはエレシュキガルの事、ミッちゃんはミクトランシワトル。彼女達も同じく冥神だ。ベルの姐さんが集める女子会メンバーだな。


「…………」

「なんじゃ、何ぞ文句でも有るのかの?」

「いや、そうじゃないけど、トモエが寂しがりそうだと思ってね」

「ふむ、この娘もその猫の事を随分と気に掛けていたからのう。……だが、下界にこれ程の力の持ち主を放置することの危険性をヌシとて分かっていよう。故に、可哀想ではあるが妾が連れてゆく」


 確かに破滅を齎す程の存在を、只の人間に任せるのは避けたい。いざという時に対処できる者でなければこの子猫を手元に置くのは危険すぎる。

 姐さんが面倒を見てくれるのなら問題ないから良かったと思うべきだろう。


「なに、心配は無用じゃ。この娘には限定的に召喚できるようにしておこう」

「え!」


 危険だっちゅうのに召喚されたらヤバイやろがい!


「無論、力に制約を設ける故に心配無用じゃ」


 ほっ。


「それじゃ、そうしてくれると助かるっす。その猫のことは任せるよ」

「うむ、任された」


 よし、これで目的は果たせたな。

 次の問題は、帝国と隣国の動きだろう。

 猫を追いかけているセフィーとキララを、姐さんが優しい眼差しで見つめている。何気に面倒見のいい姐さんなんだよな。

 まっ、それは置いておいて、俺はミネルヴァへ視線を向ける。


「ミネルヴァ、このまま戦争は続くんだよね?」

「ええ、脅威であった黒騎士が居ない事が知られれば直ぐにでもやって来ます。それも、今度こそ戦力を充実させてくる事でしょう」

「じゃあ、コダユーリオンはどう動くと思う?」

「コダユーリオンにはきな臭い噂が絶えません。おそらく、この機を逃さず攻めてくると私は見ています」

「三つ巴か。ちと厄介だな」


 スクディアの作戦は初めから芽は無かったって事か。寧ろ、欠片のお陰で有耶無耶になった分、ラッキーだったのかも知れない。だって、その場で突撃されていれば直接王都を狙われ、全軍出撃しているインペラートルには防衛すらままならない筈だ。いくら防壁の結界が強固でも、兵の居ない状態では掛かるプレッシャーには耐えられまい。帰還も難しく帝国と挟み撃ちをされかねない。


「いえ、あの時の状態では、三つ巴の状態でも利用しない限り私達インペラートル軍に勝ち目は在りませんでした。スクディア殿下の決断は英断と言えるでしょう」


 俺の心を読んだのか、考えていた事に答えるミネルヴァ。神魂器になったことで俺の心が何となく読めるようになったのかも知れない。

 質も数も帝国が上、王国が勝っているのは王都を護る都市壁の防衛力だけだ。しかし、それも城壁の破壊者の称号を持つ勇者が出てきたらいずれは破られてしまうだろう。

 そう考えると三つ巴の泥沼化は決して悪くはなかったってことだろう。何せコダユーリオンには防壁を突破できる者がいないからな。限界はあるだろうが、時間が掛かる筈だ。

 その間に帝国軍が現れれば天下三分の計じゃないけど、三竦み状態まで持っていければ動きを封じられる。


「もっとも、ヴァンチトーレ側に味方されていればそこで終わっていましたが。大きな賭けでしたね」


 三竦みにならず、一対三になれば勝ち目はないな。


「コダユーリオンが動けば、後は籠城してお互いが疲弊するのを待つのか?」

「ええ、それが一番犠牲が少なくなると思います。ですが、籠城にも限界があります。これまた掛けですね」


 籠城か、そう言えば日本の過去に、豊臣秀吉の命で石田三成が忍城を水攻めにしたことがあったけ。あの王都を水攻めにする事は可能だろうか?

 あれだけの都市を水に沈めるには相当の労力が必要だが、この世界には魔法や魔術が存在する。やってやれない事はないだろう。都市ってのは水源近くに造るもんだしな。

 もし、都市が水中に沈めば民達の精神は崩壊するだろうな。都市内は無事だったとしても不安は常に付きまとう。精神崩壊を起こした民達はいずれは降伏を願い王家を糾弾するだろう。あの都市で自給自足が出来るかどうかの問題もある。


 ふむ、勝ち目が見いだせない!


「この戦、勝ち目があるのか?」

「ええ、神が味方して下さっているのです。負ける筈がありませんよ」


 え、神?ああ、姐さんのことか!


「それもそうですが、貴方の事もですよ。我が主様」

「うぐぅ。っと、そうだ!あの蜘蛛の魔物達はどうするんだ?出来れば人に返してやりたいんだが……」


 俺の視界にギルティアラの魔物が映りこむ。こんな話題はとっとと変えてしまへ!

 視界に映る蜘蛛二体とも動きを止め此方を見ている。手招きしてやるとそそっと此方にやって来た。


「お前達は十分に罰を受けている。どうだ?ここらで人間に戻してもらうか?」


 近寄って来た白蜘蛛の頭をそっと撫でてやる。すると、ふるふると頭を横に振るわれてしまった。

 撫でられるのが嫌だったのか?


「すまんすまん。触られたくなかったか?」


 ぷるぷると頭を振る。

 ん?人間に戻りたくないのか?


「もしかして人間に戻りたくないのか?」


 身体ごと上下に振る白蜘蛛ちゃん。

 マジかっ、戻りたくないのか。理由が分からんが無理矢理元に戻すのは可哀想だな。

 ん?良く見たら白蜘蛛にも黒蜘蛛にも極小の小蜘蛛達が引っ付いてんな、まさか子供か。

 子供の蜘蛛達を放って置けなくて元に戻らないのかな?なんか可愛い奴等だな。


「分かった、子供達を放って置けないんだな。だが、仲間達を護ってくれた礼はさせてくれよ。何がいいかな?」

「では、妾が其奴等も連れていこう。此処よりも遥かに安全に暮らせるからのう。勿論、子供も全て面倒を見よう」


 と、姐さん。いやいや、姐さんとこは冥界でしょう!


「冥府に連れていくの?姐さん、それはちょっと……」

「なんじゃ、不満かの?」


 不満ってか不安。


「安心せい、妾の固有世界に連れていく。広大な土地に豊かな緑、澄んだ空に綺麗な水、マナも豊富で枯れる事がなく空腹に喘ぐこともなかろう。神ですら手をだせない妾の世界じゃ」


 姐さん、冥界以外に固有世界なんてあったんすか。

 あっ、でも俺も在るんだ、姐さんにも在っても可笑しくないか。


「ギギッ」

「ほうほう、お主も苦労したのじゃな。そうかそうか」

「ギッ、ギギ」

「なに、後は妾に任せるがよい」


 何か蜘蛛と会話しとるし……。

 そういや、俺も植物と会話できたわ。蜘蛛語も分かるようになるかな?……どうでもいいか。


 ってなことで蜘蛛さん達は姐さんに預けることとなりました。

 黄泉津大神と言ったら雷神なのに、何だか蜘蛛のイメージが付きそうだな。


「じゃあコイツ等の事は姐さんに任せて、俺の御礼はどうしようかな?」

「困った時にでも助けてやれば良かろう」

「う~ん。そもそも姐さんの世界で困る事ってあるの?」

「ないの」

「………………」

「そう睨むでない。もしもの時のための保険だと思えとゆうとるのじゃ」

「はぁ、そうですか。そうですね。そうしますよ」


 よし、じゃあそうしよ。

 キララやセフィー達は捕まえた子猫をもみくちゃにしとる。傍にヴィクトリアと飛竜達が寄り添っているな。

 さて、そろそろ帰還いたしますか。あの居心地の良い牢屋に!







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