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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
ヴァンチトーレ帝国の脅威
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見送り

 スクディアと黒騎士が出会う少し前のこと、フヅキが牢へと再び収監された。


「うぃ~す。戻ったよ~ん」

「何だそれは。真面目にやれ!」


 エナスにいきなり突っ込まれた!

 牢には俺の帰りを待つエナスとセフィーの二人、それとセフィーの護衛役の燿子が待っていた。

 エナスは相も変わらず虫型カメラをチェックし、セフィーは燿子とじゃれている。この姫さん、牢屋に入浸ってるけどパパさんママさん大丈夫ですか?


 俺を連れて来た兵は驚き(当たり前)慌てて連れて行こうとしたが、姫さん自身が断固拒否して今に至る。あの兵隊さん、王様にチクりそうだな。


「お帰りなさい!ミネルヴァはどうでしたか?」


 セフィーは燿子をもふる手を止め、俺の顔を見上げて訊いてくる。「キュウ」と燿子が俺に挨拶に来た。


「ああ、どうにか勇者を撃退出来たよ。流石は団長さんだね、一人で勇者を倒してた!」


 一度死亡したことは黙っていようと思う。


「凄いです!さすがインペラートルが誇る最強の一翼を担うミネルヴァです!まさか勇者を単独で退けるなんて、ほんとに凄いです!」


 セフィーは両手を打ち鳴らして喜んでいる。

 実質勇者を退けたのは大きい。帝国がこれを知れば士気はダダ落ち、逆に王国は爆上がり間違いなしだ。


「ふん、本当にマーズ殿を単独撃破出来る者がこの国に居たとはな。だが、勇者は戦えば戦う程強さを増すもの、次はどうなるか分からんぞ」


 エナスの言葉にセフィーが頬を膨らませている。ちょっとかわいい。


「そんなことは有りません。ミネルヴァなら次も必ず勇者を退けてくれる事でしょう。ヴィクトリアだっているんです大丈夫です!」


 うん、ミネルヴァは神魂器になると同時にレベルが備わったから次は死ぬ事無くマーズを倒せるだろうな。レベル1のミネルヴァは高レベルのマーズと違いレベルが上がりやすい。現段階で互角なら次は圧勝しても可笑しくはないだろう。

 更に神魂化したことで俺の力が流れているから既にパワーアップしている筈だしな。


「そうだな、次も必ず勝つさ」

「適当な事を……。しかし、マーズ殿とて勇者だ、只では破れなかった筈。ミネルヴァは無事だったのか?」


 余計な事をいうエナス。どう説明しようか悩むだろうが!ここは誤魔化しの一択か。


「あ、ああ、問題ない。彼女はそのまま部下達の援護に向かったよ。誰も死なせたくないってさ」

「今は灼熱谷を北上し平原地帯で戦闘中のようだな。よくやっているが時間の問題だろう。帝国兵の数は増える一方だが、王国兵は増えることはない。全勢力を投入しているのだからな」


 コダユーリオンが動かない限り増援は見込まれない。

 これは精神的に王国兵を悩ませていることだろう。


「ちっ、カメラの数が減って見づらいな。おい、カメラをもっと寄越せ!これでは状況が良く見えん!」


 元々渡すつもりだったが、こうも高圧的態度だと渋りたくなるな。

 まぁ良いか。有るだけ渡しちゃおう。


「あ~、はいはい。ほれ、これだけ有れば問題無いだろ?やるよ」


 俺は手持ちの自立式小型カメラを全てエナスに渡した。

 どうせこれから暇になるだろうからな、カメラを作る時間はいくらでも有るだろう。そう思い全てのカメラをくれてやった。

 エナスは早速それを外へとばら撒く。自立したそれらは一斉に散らばり外を目指して飛び立っていった。


「よし、今度こそジャックの奴を見つけ出してやる。首を洗ってまっているがいい暗殺王め!」


 俺は燿子をもしゃっているセフィーの頭を、燿子の代わりにもしゃもしゃしておいた。


「わっ、わわっ!う~、うう~~、わっ、む~~」


 顔を赤らめるセフィーを見ているのも楽しいな。


「おい、そこの幼児趣味!いちゃつくのは後にしろ。スクディア殿下が動き出したぞ!」


 誰が幼児趣味の変態だ!いちゃついとらんわぁどあほぉ~。


 っと、それはさておき、どうやら本格的に作戦が開始されたようだな。

 ハッキリ言ってこの作戦は緻密さの欠片もない作戦だ。引っ掛かる方がアホだが大丈夫だろうか?単純に相手を巻き込むだけだからな。

 が、成功すれば成果は大きい、単純に考えれば戦力が倍になるのだから。

 勿論、コダユーリオンが敵に回らねければの話だけどね。


 それから暫くの間エナスはカメラに釘付けになっていた。俺はカメラの量産や魔道具造りを勤しみ、セフィーはヴィクトリアのお迎えが来て帰って行った。

 その際、「近いうちにお母様に紹介したい」などと言っていたが……、気にしない事にしよう。


 更に時間が経過し、スクディアはコダユーリオンの都市目前まで来たようだ。

 部下達が敵の足留めの為に反転したようだ。あのままだと目的地に着く前に一戦交える事になるから、犠牲を許容するなら良い判断だ。


「黒騎士が出て来ているな。間違いない、奴こそがジャックだ!」

「何で分かんの?全身を鎧で覆われてるじゃん」


 見る限り全身真っ黒な鎧で覆われている人物を、画像越しに特定するのは難しい。気配が無いし普通の者には鑑定が出来ない。特殊な眼を持つ者なら可能だろうが、エナスにそんなものは無い。


「見誤るものか!動きだ。奴の動き方を俺が忘れる訳がない!奴は暗殺者特有の気配殺しの動きを自然とやっているのだ。その動きは、素人目では気付けない微々たる違和感を与えてくる」


 相当昔の話だろうによく覚えているな。恨み骨髄のエナス君には忘れられないイヤな思い出と言う訳か。

 エナスのステータスに反映されない経験された能力とでも言おうか、エナスの言は正しい。黒騎士、奴こそが暗殺王ジャックで間違いがない。

 何故分かるのかって?それは俺のリミット(限界)スキル【自動知(ウィズダム・)識収集(コレクション)】が教えてくれているからだ。意識した瞬間から情報を提供してくれるのだ。


「くそっ、視えているのに手が出せんとは!このままではイナンナに仇を奪われてしまうではないかっ!」


 手の届かぬ相手に苛立ちを募らせるエナス。この場に居ない黒騎士がイナンナ・ナイツに横取りされることを恐れて拳を床に叩き付けている。


「そこまで送ってやろうか?」


 見かねて提案してやる。


「ちっ、今からでは間に合わん!此処からアルカーヌムまでどれ程の距離が在ると思っている!駿馬を駆っても数ヶ月は掛かるんだぞ」


 疑問に思った人も多いと思うが、インペラートル軍が数日の内に最北端から最南端のミッシーナ海まで行けたのは転移門を使ったからだ。

 普通に行軍すれば数ヶ月は掛かる道のりだそうだ。が、この転移門を使えば一瞬で距離を縮めることが出来る。

 この世界の戦争は、先ず最初に相手の転移門を利用することを考えるそうだ。確かに転移が可能なら戦略の幅がぐぅんと広がる。


 転移門は数ヶ所に設けられ、行き来は割かし自由らしい。使用料は取られるが、商隊なんかがよく使っているそうだ。

 だが、この門は自国の物しか機能せず、他国の転移門には干渉出来ないらしいんだ。その為、ここからアルカーヌムまでどんなに急いでも数ヶ月掛かるらしい。逆に使えたらヤバイからな。


「ちっ、コダユーリオンの転移門が使えればアルカーヌムまで一瞬だと言うのに!」


 ……エナス君、君は忘れてませんかね?

 わたくしがセフィーに渡した指輪の効果を!

 アレは想い人の場所まで転移する指輪だ。それはつまり、俺には転移する魔道具が作れると言う事。それも、場所に拘らず、知人の場所へレッツらゴー出来る代物をだ。


「暫し待て、君用に転移魔道具を作ってあげようではないか」

「は、はあぁ!貴様転移の魔道具が作れるのか、国宝級の魔道具だぞ!」

「悪用されても困るからな、使用回数を一度切りにさせてもらう。それを行と退避用に二つ呉れてやるから、そう慌てるな。ちょっと待ってろよ直ぐに作ってやるよ」


 こうして俺は転移の杖を二つ作ってエナスに渡してやった。指輪を奴に渡すのはキモイので20cm程の杖にした。

 他にも色々と使い切りの道具を渡してやったりもした。どれも格上との戦闘に役に立つだろう。

 一度は敗れた相手だ、準備するに越したことはない。


「貴様はどうなってるのだ!まるで国宝製造機ではないか!この袋も収納量が可笑しな事になっているではないか!」

「ああ、ちょいと空間を広げてある。って言っても少し広げただけだからな、デカい物は入らないぞ」

「……、貴様が帝国に来た時は俺を訪ねろ、皇帝陛下へ紹介してやる。貴様は一人で国のパワーバランスを崩す、貴様を制御できるとしたらジュピター陛下だけだろう」

「ああ、行く気はないが、もし行く時があったらそうするよ」


 尤も既に知り合ってる訳だが、それはエナスも知っていることだ。

 エナスはゼウスに俺を紹介して取り込もうとしているのだろう。

 残念だが南に行く気は無い。俺が行くとすれば北になるだろうからな。


「そうだ、転移先は出来れば帝国兵の所にしてくれ。黒騎士の所へ行ってしまうとスクディアの計画に支障が出かねんからな。それで帝国兵とコダユーリオン兵を争わせてくれれば助かる」


 スクディアの仲間と見なされると厄介だからな。


「ふむ、成程な。イナンナ・ナイツと行けば、俺はヴァンチトーレの兵と見なされる。黒騎士とやり合えばコダユーリオンは帝国を敵と見なす。逆に、イナンナと合流する前に行けば俺はインペラートルの兵としてスクディア殿下の援軍と見なされる訳か」

「そういう事、どうせコダユーリオンも後で攻める気だったんだろ?」

「良かろう。ティデスの元へ転移しよう」

「おう、そうしてくれ」


 ……暫しの沈黙、破ったのはエナスだった。


「では俺は行くぞ。何だかんだで世話になった。俺は黒騎士を倒した後も帝国と共に行く。次に会う時は敵同士かもしれんな」

「お前はとっとと帝国へ戻れ。ミネルヴァやキララとやり合えば殺されるぞ」

「それは出来んな。陛下の為にも、俺はこの国を落とさねばならん」


 その陛下は余りやる気がなさそうだったけどな。

 目的の一つは達成され、テュポーンの監視は俺が居るからな。


「俺はスクディアとの約束が有るからな。護るべき者を護る。出来ればお前とは遣り合いたくはないな」

「それは俺のセリフだ」

「余り無茶するなよ。駄目だと思ったら杖を使ってとっとと逃げな」

「ふん、俺が逃げる訳なかろう。……さて、そろそろ行くぞ。じゃぁな、さらばだ!」


 そう言い呆気なく消えてしまうエナス。

 新たに作ったカメラを使い様子でも見ていようかな。




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