決死の攻防
ミッシーナ海岸を北に向かって数㎞地点、薄暗くなってきた平原にて歩兵同士の戦が行われていた。
南に帝国兵、北に王国兵と互いが向かい合った形で鬩ぎ合っている。
争いは苛烈を極め、両軍共に出し惜しみ無く大魔術の応酬となり、凄惨な光景が繰り広げられていた。
ある者は大地を割り敵の歩を遮り、またある者は紫電と化し駆け巡り触れた者を灰へと帰す。
また、巨岩や樹木の巨人を喚び出し敵を薙ぎ倒していく者まで現れた。
踏み躙られ、最早原型を留めない肉の残骸、高熱により余すことなく黒焦げとなった人の亡骸、元の形が想像出来ない程きり刻まれた肉の塊が、辺り一面を埋め尽くす。
大地は血と肉で月の光を黒々と反射し、風は血煙を押し流し鉄の臭いをバラまいていた。
そこには策も戦略も無く、只々力のぶつかり合いだった。
「撤退————!総員、防衛線まで撤退しろ!撤退だ————!」
これまでの戦いで両国の損害は大きく、元々帝国兵よりも圧倒的に人数の少なかった王国兵は甚大な損失を被っていた。
このまま闇雲に戦い続けても勝ち目が無いと判断した王国第三兵団団長エペウスが撤退の指示を出す。
防衛線は、小山を超高温で真っ二つにしたような形の、両側を硝子肌の壁に阻まれた谷間になった場所だ。名を灼熱谷と言う。狭い通路の様な一本道、防衛に適した立地になっている。
一斉に後退を始める王国兵に追撃を仕掛ける帝国兵。
王国兵は追撃を阻止しようと脇から騎馬隊が突撃を仕掛けた。
「伏兵だ!騎馬を薙ぎ払え!」
巨人を動かし騎馬を討とうとするが、機動力に優れた騎馬隊は鈍重な巨人の足元をスルリと掻い潜り敵の中っ腹へと食い込んでいく。
単純な命令しか組み込めない人工の巨人達は、敵味方の区別もつかずに王国兵を狙い帝国兵の群へと巨大な腕を伸ばす。
「バ、バカ者が!巨人の制御を誤るでないわぁー!」
同士討ちの形になってしまた帝国兵が浮足立ち、王国兵に撤退の時間を与えてしまった。
灼熱谷まで退いた王国兵は反転し、陣を張り敵を待ち構える。
此処は狭く一度に襲い掛かれる人数はしれているが、この世界には魔術が存在する。故に王国はこの灼熱谷にあらゆる魔道具を使って魔術封じを施したのだ。
如何な勇者であろうと、この魔術防御結界の中で魔術を扱う事は出来ないと言われている。
「何をもたついている!さっさと魔術で谷毎吹き飛ばさんかっ!毒を持って燻り出せ!」
この騎士、先陣を切る部隊長である。彼が声を張り上げ指示を出すが、周りからは「おかしい!」「魔術が発動しないぞ!」などといった声が上がってくる。
「くそっ、結界か!構わん総員抜剣せよ、突撃ぃ————!」
無策な騎士の号令で大勢の兵が突撃をする。この時すでに召還した巨人達は騎兵により駆逐されていたが、騎兵は既に全滅したようだ。
捨て駒となった騎兵達には申し訳ないが、お陰で王国兵本体は無事に灼熱谷に入ることが出来た。この事を活かさねば無駄死にしてしまう。
エペウスは谷の中で帝国兵を睨みつけ、視線だけで人を殺せるのではないか?と思う程の殺気を発した。
味方さえ怯みかねない殺気をその身に受けた帝国兵の動きが乱れ、エペウスを筆頭にした王国兵に次々に倒されていく。
防衛に徹し列をなす王国兵、先頭の兵士達は疲弊した者から後退し、後衛の者と入れ替わり休憩を取る。また、交代した者が怪我をすれば更に後衛の者と交代し生存率を高めながら敵の数を減らしていった。
追撃の先陣を切った部隊の大半を返り討ちにした頃には、灼熱谷の入口には帝国兵の屍の山が出来上がる程になっていた。
味方の遺体が攻めの邪魔となり、次第に勢いを失っていく帝国兵。後続に続々と列が連なっていき、突き進むことが出来なくなっている。
エペウスは、好機と見なした味方が油断しない様に檄を飛ばす。
「よし、このまま状態を維持だ!総員、気を引き締め直せ!飛び出すんじゃないぞ!」
それを耳にした先陣を切る部隊の帝国騎士隊長は激怒し単身で飛び出して来る。
「王国兵如きに何を手間取っとるか!俺が殺る、貴様等は下がっていろ!」
たった一人で王国兵数名の前に出る騎士隊長は、銀色に輝く剣を抜き走り出す。
先ずは一人と定め、一番隅に居る兵に剣を振るう。王国兵は咄嗟に盾で剣を防ぐも、勢いを殺しきれず数歩押されてしまう。
透かさず周りの兵がフォローに入るが騎士は強かった。
突き出した剣は腕ごと斬り落とされ、盾で防ぐものは後方に吹き飛ばされていった。
王国兵はこれに物量で対抗するが、まるで歯が立たず犠牲者が増えるばかりだった。
そこへ、第四兵団の団長ヘルロスが前に出た。
「私が相手です。これ以上我が兵を殺めることは許しません!」
ヘルロスが敵騎士隊長の一撃を盾で受け流し、透かさずに剣を突き付ける。
流石兵団長と言うべきか、ヘルロスの強さは部隊長と比べれば格別する強さを持っていた。
「馬鹿な!騎士隊長が殺られたぞっ!退け、退けぇー!」
ヘルロスの活躍と騎士隊長の無策により、取り敢えず灼熱谷での戦いは王国兵の勝利となった。が、これで終わりではない。これからが本当の戦いなのだと、この場に残る王国兵は理解していた。
一方その頃イクテュスでは、マルスが街に入り込んだ敵兵を討伐していた。
「どれ程の帝国兵が入り込んだのだ!索敵を急がせろ、何としても住人に被害を出させるな。」
ある程度入り込んだ帝国兵は倒したが、これで全てとは言い切れず徹底した索敵を行っていた。
入口付近の家屋は既に何軒か燃やされていたが、それ以上の被害報告はこれまでには無かった。
「殿下、ご安心下さい。どうやら全ての帝国兵の討伐に成功した模様です!残念ながら数名の住民が犠牲になりましたが、これ以上の被害は出ません」
「よし、良くやってくれた。城門を警護する者以外警邏に回し、私は城へ行き城主に会ってくる。お前は皆に指示を出し纏めてくれ。ああ、それと捕虜への尋問も頼んでも良いか?」
ある程度の捕虜は確保済みだ。
「ははっ」
捕虜から聞き出さなければならない事は多い。兵の構成に指揮官の思考傾向、進路に作戦と色々と聞き出さなくてはならない。
しかし、時間も限られた中でどれ程の情報が引き出せるのか?……あまり期待は出来ないだろう。
マルスは城へと向かい、城主であるイクテュス領主に会う。
「殿下、この度は衷心よりお礼申し上げます」
「よい、気にすることはない」
「ご厚情、痛み入ります」
「それよりも、貴殿の私兵はどれ程残っている?我々は直ぐにでも出撃せねばならない。ある程度の自衛は可能か?」
「……街門を閉め、籠城に徹すれば数日は持ちこたえれるかと。ですが、それ以上の自衛は不可能です。打って出れば即全滅、数週間の籠城で城門は破られることとなるでしょう。正直、イクテュスを捨て王都へ民を逃がしたく思っております」
「そうか。我々は明日、灼熱谷へと向かう。貴殿に騎兵を残していこう、道中の護衛に使うと良い」
「並々ならぬ御高誼、誠に、誠に感謝申し上げます」
領主との会談を終え、マルスは晴れぬ心を無理やりに奮い立たせ城を出て行く。
翌日、マルスたち第一兵団と第二兵団は南へ、イクテュスの住民達は北へと向かったのだった。
そしてスクディアだが、彼は待っていた、第三第四兵団が北上しながら撤退してくるのを。
勝てば良し、が、これは有り得ない事だと考えている。必ず灼熱谷は破られると。
魔術防御結界とて完璧ではない。内部での発動は防ぎ、外部から放たれる火や風などのマナを帯びたものなら受け止めてくれる。しかし、マナを帯びない巨岩でも投げ込まれればそれまでだ。王国兵は自衛の為の魔術を使う事が出来ない。
マルス率いる第一第二兵団が合流したとしても勝ちはないと踏んでいる。何故なら絶対的に兵力が足りないからだ。
補給路の面では王国軍が有利だが、相手には勇者が、英雄が居る。もし、相手側に収納系のスキル持ちが多数存在していれば、補給の有利も覆されかねない。
スクディアは思う、この局面に関しては、いっその事スキルや魔術など無い方がよほど戦いやすいと。たった一人で戦況を覆してしまう程強力なスキルや魔術、もしも帝国兵にそんな人物が複数人存在すれば勝ち目はない。
王国には、それ程の英雄がミネルヴァとヴィクトリアの二名しか居ない。次点でユピテル、マルス、スクディア、エナスだろう。が、エナスは裏切りユピテルは王都を離れられない。
手遅れになる前にコダユーリオンの兵を引っ張り出さなくてはならない。だが、引っ張り出すには時期を見定める必要がある。王国兵だけで入国してしまえば敵に回られてしまうからだ。
必ず這う這うの体で、帝国兵を引き連れ国土に侵入しなくてはならない。
コダユーリオンの国土で帝国兵に暴れさせる必要もあるかもしれない。更に王国兵でこれを収めなければ味方にはならないだろう。難易度は高いがやるしかない。
何時来るかも分からない両軍を心労を抱えながら待つスクディアだった。
更に王都上空にマーズの姿があった。マーズは一人抜け駆け敵本拠地へと飛んで足を運んでいたのだ。
しかし、侵入者を見逃す程王都はぬるくはなかった。
「そこで何をしているのですかマーズ殿?」
不意に声を掛けられ振り向くマーズが見たものは、10mはあろうかという古竜に跨る師とも呼べる女性だった。
「久しぶりだなミネルヴァ」
ミネルヴァは、ヴァラカスの遺体を家族へ引き渡した後にプロセルピナと会い、異様な気配を感じ取りこの場にやって来たのだ。
「ええ、久しぶりですねマーズ殿。まさかこの様な形で相まみえるとは思ってもいませんでした」
「俺もだ。まさかこんな形でお前と決着をつける事になるとはな」
マーズが背負う大剣を抜き構えを取る。その大剣、マーズとほぼ同じ大きさの剣で無骨ながら見事な出来の名剣である。
「どうしても戦わなければなりませんか?」
「ああ」
「致し方ありませんね。昔の様に剣を交えましょうか」
「いや、昔とは違う。これから始まるは殺し合い、稽古だと考えれば死ぬのはお前だぞ、ミネルヴァ!」
マーズは巨大な剣を構えながら空を駆け、ミネルヴァに迫る。ミネルヴァはテルピュネを大きく下降させそれを避けた。
ミネルヴァは素早く加護の叡智を使いマーズの鑑定を試みる。
《種族:人
名前:マーズ・グルダン 加護:漸増
ランク:A レベル:235
称号:勇者(+レベル)
称号Ⅱ:城壁の破壊者(+城壁破壊)
称号Ⅲ:無慈悲なる虐殺者(+早熟)
信仰魔法:軍神アレス
魔術適性:火、炎、地、大地、空間、回復
固有スキル:【飛華落葉】
上級スキル:【天剣の才】【才能強化】
スキル:【肉体強化】【魔力多重障壁】【魔力付与】【見切り】【思考加速】【熱変動耐性】【毒耐性】》
ミネルヴァは内心焦りを覚える。
嘗て見知ったマーズのレベルは30そこそこ、可成り上がっているだろう事は予想していたが、まさか200を超えてくるとは思っていなかったからだ。
余りにも早いレベルの上昇は、無慈悲なる虐殺者の称号を得た時点で加速的に上昇したのだろう。
歴代の勇者で最大のレベルが100を少し超えた程度のものだ、200を超えるのは異常だと言える。
ミネルヴァは知らないが、フヅキの持つレヴァンのレベル999がどれだけ異常なのかが分かる。
加えて、ユニークスキルの存在だ。昔から上級スキルは保有していたマーズだが、レベルを上げユニークスキルの取得に成功していた。
【飛華落葉】は飛翔に特化したスキルで、その権能は《変則飛翔》《加速》《重力操作》の三つだ。
加護の【漸増】は、戦闘中に受けたダメージに比例して全能力が上昇していくというものだ。上昇率に関しては負った傷の深さに由る。つまりマーズは傷つけば傷つく程強化されることになる。
ミネルヴァは想像以上の強敵にすぐさま神槍を顕現させる。
「ほう、それが噂に名高い戦女神の劾槍テア・パラスか。見事な槍だ、戦場を駆けるお前には良く似合う」
「貴方の大剣も見事なものです。軍神の異名『城壁の破壊者』を受け継ぐ貴方に相応しい美々しい剣です」
両名は言い終わるや互いに武器を振りかざす。
「行くぞミネルヴァ、今こそお前を超える」
「来なさいマーズ、そう簡単には超えさせません」
マーズがミネルヴァに向かって真直ぐ飛翔してくる。
眼前に迫るマーズをテルピュネがブレスで迎撃するが、マーズは直前に軌道を変えブレスを上手く避けた。
そのままマーズは不規則な動きで飛翔しながら照準から逃れつつ、ミネルヴァに接近する。
右に左に、上に下に真直ぐではなく曲線を描きながら移動を続けるマーズに対し、ミネルヴァは常にマーズを正面に捉えるようにその場で移動を繰り返している。
お互いに接近出来ずに空を駆ける。そうなると接近戦ではなく遠距離攻撃が必要になってくる。
「流石に素早いなミネルヴァ!だが、これで落ちろ『バースト・フレア』!」
ミネルヴァを背に乗せるテルピュネの周りに、幾つもの大規模爆発が起きる。一つの爆発がテルピュネを呑み込む程の規模だ。そんな爆発が何重にも重なりマーズの視界を奪ってしまうが構わずに突撃する。
爆発の余韻の中に突入し、大剣を大上段から振り下ろすが手応えがない。その瞬間には背後に気配を感じ取り素早く移動する。
「遅いですよ!『バースト・ロンド』!」
転移でマーズの背後を取ったミネルヴァの魔術、マーズの大規模爆発よりも遥かに小さな爆発、だがその数が桁違いだった。
マーズの移動する先々で小規模爆発が何十と発生し続け動きを阻害する。
今は夕暮れ、まだ外を出歩く人も多く、大空で起きる爆発の数々に空を見上げる王都の人々。結界の外側とはいえその胸中は穏やかではない。
慌てて屋内に避難する人、興味本位で見上げ続けている者、この世の終わりと神殿に逃げ込む者と様々な人々が空の戦に反応を示していた。無関心な者など一人も居らず、皆が皆、何らかの行動をしていたのだ。
そしてここにも危機感を覚えた者達が居た、ユピテル達だ。
ゼウスが去り隔離領域が解かれ、ユーノも無事で気を緩めた矢先の事だった。
「何事だ!近くで戦闘が行われているのか?」
響き渡る爆音にユピテルが声を張り上げる。
「あなた、ミネルヴァが結界の外上空で帝国の勇者と戦闘中のようです」
クロノスの神眼の能力を失わず保持していたユーノが、天井を見上げて状況を報告した。
ユピテルは直ぐに他の竜騎士に号令を掛けようとするも、主だった人員はゼウスの奇襲により亡くなってしまっていた。
「アレは他の者では相手になるまい。出撃させるならプルートしか居まいな」
クロノスが口を開いた。
「あ奴か。ですが、あ奴……彼はユーノと御父上の恩人でもあります。彼を巻き込んで良いものか……?」
ユピテルにとってプルートはユーノとその父親の恩人。だが、幼い娘に婚約を勝手にしやがった不届き者でもあった。
表向きには恩義を受けたとし、だが内心では複雑な心境でもあった。
そのプルートも今はこの場には居ない。
「でしたらあなた、ヴィクトリアを向かわせるのは如何でしょう?お父様、ヴィクトリアなら勇者と互角に渡り合えると思います。如何でしょうか?」
「いや、少し様子を見た方が良いだろう。力では帝国の勇者が一歩先を行くが、戦術でミネルヴァが圧倒している。この先どう転ぶか分からない、助けは様子を見よう。ヴィクトリアでも足を引っ張りかねない微妙な均衡を保っている」
クロノス自身は、ゼウスによって戦いを禁じられている。この地に存在する絶対的強者である神に連なる者はプルートしかいない。呪いを受けていようと、ミネルヴァやヴィクトリアと比べ格別した力を持っているからだ。故に、出来ればプルートに事を収めてほしいとクロノスは思っている。
そのプルートだが、地下牢に戻って来ていた。ちゃっかりセフィーまでついて来ていたが。
「あの、もう牢に入る必要は無いと思いますが?」
「ああ、いいのいいの。ここが何だか落ち着くって言うか、住めば都的な?」
「フフフッ、何ですかそれ?」
「キュッ」
そこで、何事もないような二人と一匹の会話に割って入る者がいた。エナスだ。
「おい!何なんだこの爆発音は!?虫型カメラが軒並みやられたぞ!」
「あ、エナスか、それは残念だったな。後で追加のカメラをやるよ」
「あっ、こんばんはエナスさん」
「あ、はい、こんばんは……、ではありません殿下。フヅキ、お前は何をやってきたんだ?一体全体外で何が起きている?」
エナスは謁見の間での出来事も、外での戦闘の事も分かってはいないため当然の疑問だった。
「おう、帝国のジュピターが来てたんだよ。もう帰ったけどな。外の事は知らん。さて、セフィー、指輪を貸してくれ、ルーンを刻み直すから」
「はい!お願いします」
フヅキはセフィーから指輪を受け取り早速ルーンを刻み直す。
「なっ、ジュピター皇帝陛下が来ていただと!?陛下は?ユピテル陛下は無事なのか?もう帰ったとはどういう事だ!詳しく話せ!」
「ああ、話すと面倒なんだが、仕方がない……」
フヅキはこれまでの経緯をエナスに大まかに話して聞かせた。
「なる程、まさかジュピター皇帝陛下がゼウス神だったとは……。では、いま外で暴れているのは誰なんだ?」
「んん?……あれはどうやら、…帝国の勇者らしいな。団長さんが相手をしてるようだ」
「団長?……ああ、ミネルヴァの事か。ややこしい奴だ、ミネルヴァと呼べ」
そこまで黙ってルーン文字を刻むフヅキを見ていたセフィーが不安そうに声を掛けた。
「ミネルヴァは勇者に勝てますか?」
「ん?……今のところは互角かな?良くやってるよ」
「貴様、何故ここから分かるんだ!適当な事を言っているのではないのか!?」
「気配で分かるだろ?気配を察知出来れば鑑定も簡単だしな。よし、出来た!ほいセフィー、もう簡単に使うなよ。いざって時の切り札だからな」
「わぁー!有難う御座います。はい、勿論一生大切にします」
「いや、必要な時には躊躇わず使ってくれ。何度だって刻んでやるから」
「はい!」
元気よく指輪を受け取るセフィーを優しく見守るフヅキ。
「さて、ほんなら次は団長さんの手助けにでも行こうかな?……ん?んん?少し様子見てからにするか。随分と善戦してるようだからな」
「ミネルヴァはマーズ殿相手に善戦しているのか?」
「ああ、下手に手を出せば不利になりかねない程拮抗してるがな。ま、何時でも手助けできるように準備だけはしておくか」
こうして皆がミネルヴァとマーズとの一騎討の様子見を決めたのだった。
それだけミネルヴァが勇者との戦を有利に進めているように見えるのだ。だが、決してマーズが負けている訳ではない。極めて微妙な均衡を保った戦いなのだ。




