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何もしてないのに神になった俺! ……何でだ?  作者: やまと
ヴァンチトーレ帝国の脅威
27/66

ジュピター vs フヅキ

「しょうもない理由で戦争なんておっぱじめるんじゃねぇよぉ!」

「しょうもなくないだろうが!男が女を求めて戦うなんざ当たり前のことじゃねぇか」


 ダメだコイツ本気っぽい!

 いや、まぁ確かに争い事に異性の影が……、ってのはよくある話かもしれないけども、ダメでしょソレ、やってることマルスより酷いじゃないか!

 マルスもどうかしてるぜぇって感じだけど、コイツそれ以上じゃん。いや、どっこいどっこいか?

 だが、本気を出さなくては相手にもされない格上相手、気合を入れよう。

 俺はヴァッテレソードを抜いて正眼に構える。正直どれだけやれるか分からんが、やれるだけの事はしよう。


「男が過ぎたことをウジウジ言ってねぇで、とっとと掛かって来い!」

「うっせーよ!」


 イラっとする言われようだな。

 剣を振り上げ、一気に距離を詰めそのまま振り下ろす。

 ガツッ!と音がして振られた剣が弾かれた。しかし、何に阻まれたのかが分からなかった。


「はんっ、まだ甘ぇな。その程度の剣戟ならマーズでも出来るぞ!おらっ、気合入れて来い!」


 他人と比べられるとイラつくからヤメて欲しい。

 お望みとあらば次は強くいく!


 スキル【身体強化】【思考加速】をフル活用する。

 神にスキルは効かないと言っても自身に作用するスキルがキャンセルされる訳ではない。

 弾かれ乱れた剣筋を強引に元の軌道に戻し、奴の脳天目掛けて振り下ろす。

 が、


「おっ、今のはなかなかだったぞ。それ次だ次」


 くそっ、まるで相手にならない。


 続けて剣を不規則な軌道で何度も振るう。

 これら全てガツッガツッ、と弾かれてしまう。だが、大体のカラクリは見えた。 

 奴は障壁を張っていた訳ではない。魔術でも魔法でもなく、魔道具を使ってる訳でもなかった。

 奴は只、己が拳で迎撃していただけ、素手で弾かれたのはショックがデカい。

 俺の攻撃は奴の素手の防御力を突破出来ていないことになる。


 奴の攻撃速度も速い、余りの速さに視認が難しい。音速を優に超えているのは確かだな。

 なら、此方も速度を調節し工夫する必要がある。


 速く、更に速く、だが時々遅く、尚遅く。リズムを崩すように攻撃を繰り返す。

 実はこれ、可成りの高等テクニックと言える。

 相手に悟られない様に攻撃するのは基本だが、威力を保ちながら自らのリズムを崩し攻撃し続けるというのは、殊更に難しいことなのだ。

 逆に言うと、相手のリズムを崩す事にも繋がり、効果は覿面(てきめん)である。


「お?っお!」


 ジュピターがたたらを踏んだ!

 追い打ちとばかりに蹴りを放つ。が、反応され奴の蹴りで相殺さてしまった。


「ちっ、ガードが堅いな!」

「攻められてんだ、ガードするに決まってんだろ」


 くそっ、こんなことならタラレバを装備しとけば良かった!

 ここぞと言う時の瞬発力が足りない。ガードを崩したところで次が続けられないでいる。

 タラレバは使う必要がないと思って大蔵大臣の中、手元にないのだよ。

 本体と接続出来ていれば召喚出来るが、今のままだと出来ない。

 レヴァンの様に自我があれば呼び掛けに応じてくれるが、タラレバに自我はない。


「そっちからは来ないのかよ————!」

「何だ、攻めて欲しいのか?お前、さてはMだな!」

「んな訳あるか————!!!」


 ヴァッテレソードは全て弾かれる、ならカウンター狙いで攻めようと思っただけだ。

 何で、俺が、マゾ呼ばわりされにゃぁならんのじゃ!


「じゃ、遠慮なく行くぞ!」


 言った途端に姿を見失った!

 俺は奴の気配を掴もうと集中する。

 カツンッ、と背後で音が聞こえ振り返ると、そこにはユピテルが所在なさげに立っているだけだった。

 しまった!

 背後に殺気を感じ慌てて飛び退くも、ジュピターの蹴りを真面(まとも)に喰らってしまう。カウンターを取る処の話ではなかった。


 複製領域の壁まで吹き飛ばされて、ぶち当たり少なくないダメージを負ってしまった。

 只の蹴りだけでこれ程のダメージを負うとは思わんかった!なんちゅう脚力してやがるんだ。


「つぅ~」

「おいおい、大丈夫か?それでアイツの相手が出来るのかよ?マジで不安になってきたんだけど?」


 やっかましい!コイツマジコロス!


「兄貴が役立たずを送るとは思えん、本気で来いよ!」


 ええい、仕方がない。こうなったら女神(おみながみ)流を使うしかない!


「ああ、んじゃ遠慮なく行くぞ!」


 女神(おみながみ)流歩法、神行歩!

 神の如き一歩、ではなく神の一歩。縮地を遥かに上回る、正に千里を駆ける一歩。

 今の俺でもこの距離なら瞬間移動と見紛う速度を出せる。

 俺は既にジュピターの眼前に立っている。


「!!!」


 今更驚いても遅い!

 女神(おみながみ)流剣術、硬断之豪剣(アストライア・ソード)

 真横に振るわれるヴァッテレソード。

 神気が使えないので、代わりに剣気をこれでもかって位に込めた一撃。

 剣気は剣の器に納まらず溢れ出し、一筋の炎剣の様なエフェクトを伴い薙ぎ払われる。

 本来の能力は、どんな硬度を誇る護りでも砕き割る。そんな力技の防御力無視攻撃の一振り。


 ジュピターは慌てて迎撃の為に腰の剣を抜く。

 コイツ、剣まで金ピカじゃん。ここまでくると一貫してて良いのかも知れないな。


 ぶつかり合う剣と剣。互いに一歩も引かずに火花を散らす!

 流石と言うべきか、よく迎撃が間に合ったな。

 弾かれ飛び散る剣気が凄い事になってる。

 次第に威力が削がれ、お互いに距離を取ることになった。


 うぞだろ!防御力を無視ってるのに弾かれた!奴の攻撃力に押された形になるのか!


「あっぶねぇ、今のマジで危なかったじゃねぇか!」

「お前が本気を出せっつったんだろうが!」


 ふぅ~と、わざとらしく額の汗を拭う仕草をするジュピター。いちいち大袈裟なんだよ!


「お前、ひょっとして女神(おみながみ)流の使い手か?」

「知ってんのか?確かに俺は女神(おみながみ)流の後継者だ、それが何だよ?」

「すげぇじゃねぇか。これまでにどれだけの神が女神(おみながみ)(あざな)に弟子入りしたと思う?結果、女神(おみながみ)流を扱える者は終ぞ出なかったんだぞ」


 あの修行は神からしても地獄だったからなぁ。でも、褒められるのは素直に嬉しい!


「アレはあざみと同質な魂の持ち主でなければ扱えないらしい。お前は彼女と同質の魂の持ち主ってことだ。まさか俺の雷鳴之剣が弾かれるとはな」


 あの黄金剣は雷鳴之剣と言うらしい。

 ゼウスの武器は雷霆だからだろうか?使い慣れた武器に似通った物を選んだのかな?


「ははっ、俺も少々本気を出すとするかねぇ」


 奴の闘気が膨れ上がった。

 

「これが闘気闘法というものだ!」


 奴の体から金色の光が靄の様に吹き出てくる。

 マナともオドとも違う、戦う意志が力を生む、それが闘気だ。

 因みに、斬ることに特化した力、斬る意志が具現化したものを剣気と呼ぶ。


 神はフとした行動が災害に繋がる。ため息を吐くと突風が吹いたり、大地に寝ころべば地震を起こしたりと……。その為、神は常に力をセーブする。

 闘気や剣気はそのセーブした力を、ほんの少し解放したものなんだ。

 つまり、闘気や剣気は神魂を持つ者の無自覚な力の一旦で、神にも通じる力なのだよ。


 さて、奴の放った闘気だが、自身の姿を数倍に膨れ上がらせたかのように形作られた。奴は今や巨人の如く巨体をした、正に巨神を背負った男となった。


「行くぜぇ!」

 

 ヤバい!奴の拳が俺の等身大程にも見える!

 その拳が無数に、それも洒落にならない威力と速度を伴って視界を埋め尽くして来る!


「ちっ!」


 兎に角、神行歩で距離を取り躱そうとするが、奴の拳は何処までも追ってくる。

 最後は領域の壁に阻まれ無数の拳を喰らってしまう。


「かはっ!」


 数発はヴァッテレソードで弾き返したが限界があった!

 全身の骨が軋む、いや、所々砕けた感覚がある。

 欠けた骨が肺に突き刺さり、吐血をを繰り返す。

 俺は床をゴロゴロと転がりながら赤く床を染め、しかし、【再生】に前意識を注ぎ込み回復を試みる。

 お陰で意識を失わずに済んだが、ジュピターの追撃には対応できるかっ?


「とっとと起きねぇと次行くぞ!次ぃ!」


 くっ、本当に容赦ねぇなぁ!

 動けるだけ再生したら即その場を飛び退く。

 今の今まで居た場所に馬鹿でかい拳が飛んでくる。

 再生速度が速くて、ギリギリで回避が間に合った!


「おい、大丈夫なのか!」


 ユピテルから声が掛けられるが答えている暇がない!

 次から次へと飛んでくる拳を躱すので手一杯だ!

 だからと言ってこのまま手を子招いている訳にはいかない。

 再生による回復が済次第反撃に転じなければ、勝てるもんも勝てなくなってしまう。

 俺は魔術により闇の球体を作り出し、剣術や体術を織り交ぜながら攻めていく。


「くそ!何だ、あの闘気で出来た巨体は!反撃の余地がないじゃねぇか!」


 ジュピターの背後にデンッと構える闘気で出来た巨体が俺の攻めを悉く遮ってくれる!

 剣は弾かれ、蹴りをいなされ、魔術なんかは無視された。

 それだけ奴の闘気の体が頑丈でしなやかな、完成度の高い出来なのだろう。 

 アレは城壁であり兵器だ。

 城壁を破り本丸へ攻めたいが、その城壁が分厚く、大火力な砲弾を撃ちまくってくる。

 これでは斬り込めない。先ず、あの城壁を破壊する必要がある。

 しかし、このままではあの分厚い城壁を破るのは難しい。

 近付けば砲弾の餌食にされ、近付けたとしても分厚い城壁はビクともしない。

 しかもアレは只の闘気でしかない。

 破壊したところで、ジュピターの闘志がある限り即座に再生されると見ていい。

 こうなると、もう、極大火力で本丸ごと吹き飛ばすのが手っ取り早い!


 が、その前に床に散らばる遺体を亜空に回収しておこう。

 家族に引き渡してやりたいからな。殉職しました、遺体はありませんでは可哀想だ。

 俺はそそくさと回収を終え大技を放つ!


女神(おみながみ)流剣術!」


 ってことで、やってやるぜぇ!


流星裂弾(メテオ・シェル・テア)!」


 神気の代わりに大量のマナを打ち出す。

 放たれたマナの斬弾が軌道上の空間を破裂させながらジュピターに迫る。


「おおぉ、これは凄まじい!やりゃ出来るじゃねぇか」


 着弾と共に領域を埋め尽くす大爆発を起こし、柱や壁を粉砕していく。

 ジュピターの声は爆発音により掻き消され聞こえない。

 ユピテルが心配だが、魔力で打ち出した爆発だ、アンキレーの護りがある問題はないだろう。


 爆発が収まると、そこは大きく抉られ、消し飛ばされ陥没する床、また綺麗に消滅した柱、床には一切の瓦礫もなく消滅、玉座の間は何の装飾もない只のダダ広い空間へと変貌していた。


 そして、その広間に一人、自らを結界で覆い身を護るジュピターの姿が……。


 ジュピターにダメージは無い様だが、闘気の巨体は綺麗に消し飛んでいた。

 俺は透かさず乱舞の斬撃を繰り出す。闘気の巨人を復活させる前に叩かなくてはならない。


 女神(おみながみ)流剣術奥義、阿修羅(アスラ)————

 硬断之豪剣(アストライア・ソード)を、距離を無視して無数に放つ荒業だ。

 距離を無視し、防御を無視し、手数を増やす。


 放たれる剣撃を結界で防ごうとするジュピターだが、防御を無視する阿修羅には意味がない!

 その身に幾つもの斬撃を喰らうジュピター、その身体に無数の決して小さくない傷を負っていく。

 飛び散る血液、傷つきながら奴は笑っていた。


「くくっ、ははははっ、はッはッはっはっ!」


 どうした?気でも触れたか?と思わなくもないが、そんな訳が無い!

 不気味に思い距離を取る。


「流石だ!流石兄貴が送り込んできた奴だ!これ程、これ程の力を持ってるたぁ凄ぇ、すげぇじゃねぇか!いい、いいぞ、自慢してもいい、この俺に痛みを教えてくれるたぁ————。この数百年間、俺を傷つけられる者など只の一人もいなかったってぇのに!くくくっ、あはははっ」


 やべぇ、コイツマジでイっちゃった?


「そうだな、そうだよな!これ程の力の持ち主に手加減なんざぁ失礼ってもんだ!」


 奴の闘気が再び膨れ上がっていく。いや、それだけじゃない、闘気に混じって神気を感じる!

 ヤバい!奴が再び作り出した闘気の巨体は、先程のとは比べ物にならない程のプレッシャーを放っている。

 ただでさえ厄介なこと極まりない巨神だというのに、神気で強化されてしまった!

 こうなると、此方も神気を使って打ち破るしかないが、今の体で神気は扱えない。


「参ったな、少しは加減してくれよ!」


 泣き言を言ってもしょうがない、対策を考えなくてはならない。

 あの巨神を突破するには神気を扱う必要がある。が、この呪いを受けた体では神気を扱えない。

 では、呪いを解かなくてはならない。でも、出来ない。どうすりゃいいんだよ!


「おい、大丈夫なのか!?奴は更に強くなってないか?」


 言われんでも分かっとるわぁ!ユピテルが不安を口にするが、構っている暇がない。


「アンタは下がってろ!護りながらじゃ勝てない」


 俺が師から教わったのは攻めでしかない。勿論身を護る方法も教わってはいるが、それは相手が規格内の強さの場合だ。

 奴の強さは規格外で、他人を護りながら戦えない。


 剣術の最秘奥を使って奴の技術を盗むか?

 いや、流石に神気もなく刃沙螺(バサラ)は使えない。

 使えたとしても奴の過去に入り込めないだろうな。


「おら、どうした?掛かってこないのか?」


 くそっ、ニヤニヤしやがって!

 仕方がない、玉砕覚悟でやってみるか?


女神(おみながみ)流剣術」

「させん!」


 ぬおぉ!さっきとは別次元の攻撃速度で攻めてきた!

 躱しきれずに吹き飛ばされたんですけど!


「ぐっ」


 ん?誰かに受け止められた。吹き飛ぶ俺を、領域の壁に激突する寸前のところで抱き留められた。

 見上げるとそこにはユピテルの姿があった。

 俺と壁に挟まれて何処か傷を負ったのか口の端に血が付いていた。


「おいおい、無茶するなよ。助けてくれたことには感謝するが、護衛対象に護られては立つ瀬がない」

「このままでは勝てまい。此処は力を合わせる必要があると俺は思うがな」


 言ってる事は分かるが、ハッキリ言って戦力外だ。

 正直に言ってユピテルではアレには対処できない。下手したらそのままお陀仏ってこともあり得る。

 どう断ろうと考える暇もなく追撃が飛んでくる。


「ちっ!」

「くつ!」


 二人して大きく飛び退き、拳を躱す。


「気持ちは嬉しいが、アンタじゃ無理だ!大人しく下がって自分の身を護っていてくれ」

「そうも言っていられん!奴の狙いはこの俺だ。お前が倒れればどの道この国は終わる!」


 一つ手が無い訳ではない。

 女神(おみながみ)()()、これは技事態に神気が宿る。

 これなら城壁をぶち抜き、本丸毎消滅させうる威力がある。

 本来は己の神気で制御して使うものだが、それ単体でも使用可能だ。

 代わりに術の難易度が爆上がりし、制御を誤ればこの場は混沌の渦へと巻き込まれる。下手コケば地上にブラックホールを造り、この惑星を滅ぼしかねない危険性がある。

 やはり使えないか、そんな危険は冒せない。

 本来は星間での超々遠距離攻撃用の技なのだ。


「おいおい、この程度の事で打つ手なしか?」

「うっせぇな。今考え中だから黙って待ってろ!」


 どうする?攻撃力も防御力も奴の方が圧倒的に上だ。

 そこでユピテルが口を挟む。


「では、俺が提案しよう。俺がこのアンキレーで全ての攻撃を防ごう。その隙にお前はジュピターを直接狙え!」


 無茶な提案だ。だが、それに賭けてみるのもいいかもしれない。

 アンキレーは只の神器でしかない。神魂器なら今の奴の巨神ですら防ぐだろうが、神器では心もとない。

 神器の力を100%引き出せれば何とかなるだろうが、それは難しいだろうと思われる。

 しかし、ジュピター本体に攻撃を当てるにはいい手でもある。


 どの道俺が敗れれば次はユピテルだ。この際命を懸けて貰おうか。

 コイツのカミさんが狙われてる訳だしな。


「良いのか?下手したら死ぬことになるぞ!」

「見縊るな!もとより覚悟の上だ!」


 心外とばかりに声を荒げるユピテル。


「じゃぁ、アンタの息子の剣を渡しておくよ。これには【鉄壁】【身体強化】のスキルが備わっているから少しは役にたつかもしれない」

「しかし、それではお前の攻撃手段が無くなるではないか?」

「それは問題ないから安心してくれ、それよりも優れた物を持っているから」


 女神(おみながみ)流には勿論無手での体術も存在するが、攻撃力の高いレヴァンを呼ぼう。

 出来ればそっとしておいてやりたいが、そうも言ってられない状況だ。


 レヴァン、来てくれるか?少し手を焼いているんだ。出来れば装備一式持ってきてくれると嬉しいな。

 すると『うん!』と元気よく頭の中に直接返事が返って来た。


 次の瞬間に俺の右手に握られるレヴァン。『来たよ!』と嬉しそうに声を掛けてくれた。

 透かさず装備一式を換装する。

 黒蝶の衣服、玉龍鬣(ぎょくりゅうりょう)の外套、タラレバ、燭台切光忠だ。

 これで防御力、速力、攻撃力が跳ね上がる。光忠は予備として腰に差しておく。


 すると、俺の前に出て盾を構えるユピテルから声が掛けられた。


「おい、ソレは何だ!木刀で奴の相手をする気かっ!?腰の剣は飾りか!」


 一見レヴァンは木刀なので驚くのも無理はない。

 だが、その実、うちの自慢の娘は神器に迫る高性能兵器なのだよ。

 褒められて嬉しいのか『えへへっ』とレヴァンが照れていた。


 レヴァンの凄さを証明するよに、ジュピターの顔色が変わった。


「ほう、それはなかなか面白い、知性持(インテリジェン)つ武具(ス・ウェポン)とは珍しいじゃねぇか!」


 バレているが関係ない。俺とレヴァンが揃えば無敵だかんな。


「準備は良いか?なら、行くぞ!」


 俺はユピテルに声を掛け攻勢にでる。

 俺がユピテルの後ろから前に出てレヴァンを構える。

 透かさず迫る巨大な拳の乱舞を、今度はユピテルが前に出て防ぎに掛かる。

 拳はアンキレーに当たり弾かれ、再び振るわれまた弾かれる。を、繰り返し行い。

 俺はその隙に神行歩を使いジュピターに接近しレヴァンを振るう。

 即座に巨神の腕でガードされ、そのまま殴りに掛かる。が、流石レヴァン、腕の動きを阻害し速度を落としているな。

 速度の落ちた拳をユピテルが間に入り防いでみせた。


 そんなことを何度も繰り返しユピテルが限界に近付いた頃、巨神の腕をレヴァンで切り落とすことに成功。

 チャンスとばかりに技を放つ。


 女神(おみながみ)流刀術、澎攻守法(ほうこうしゅほう)の太刀!

 片腕となった巨神の攻撃は全てユピテルが防いでくれる。

 だが、ジュピター本人の攻撃まで防ぐ余裕はないようだ。

 俺に向けて振るわれる雷鳴之剣を、流水の動きで躱しながら奴の死角に入る様に移動し刀を振るう。

 奴の剣はまるで俺の体を透過するように、すり抜けるように見え、死角からレヴァンがジュピターを撃つ。

 レヴァンは百万オーバーの攻撃力と【大物喰い】【神打】のスキルがある。

 幾ら神とは言えこれだけの攻撃力とスキルだ、多少の効果がある筈だ!そう信じたい!


 しかし、俺達が距離を取ると平然と立つジュピターが言った。


「流石じゃねぇか、これ程とは思わなかったぞ。これならマーズとアポロ、ディアナの三人掛りでも相手にならねぇな」


 当たり前だ!勇者などレヴァンの一撃でミンチに出来る。

 それにしても、あの攻撃を受けて平然としてるとは信じがたい。


 マーズが勇者だと知っているが、アポロとディアナは初耳だな。誰だソイツ等!


「ぬ!はぁはぁ、や、奴等も来ているのか」


 反応したのはユピテルだった。随分と息が上がっているが大丈夫なのか?


「ああ、来てるぜ。今頃海を渡り切った頃じゃぁねぇか?」


 ユピテルが「くっ」と苦い顔をしている。相当な実力者なのだろうか?

 今海岸に到着したのなら、南に向かっている第三、第四兵団がぶつかりそうだな。

 あの名前も知らないおっさんの実力が分からんが、勇者以上ってことは無い筈だ。

 だとしたらこの戦、負けが濃厚だ。ま、始まる前から分かってたけどな!


 第一、第二兵団がとっととディアマンの団体さんを倒して、迂回して第三、第四と挟撃する形を取らないと厳しいだろう。


 人の事言ってる場合じゃなかった!コイツしぶといどうしよう?




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