お隣さん現る
はぁ、燿子をセフィーの護衛につかせてからは暇な時間が多くなってしまった。
俺はその時間を使って物造りに励んでいる。何せ暇だからな。
今造っているものはテレビだ。
只、テレビを造ったところで見れるわけじゃないだろ?だからカメラも同時に造っている。
カメラは自立式虫型ロボットや獣型ロボットだ。このロボット達が見た物をそのままテレビ画面に中継してくれる訳なのだよ。
テレビと言ってもブラウン管や液晶テレビ等じゃない。指輪型にして携帯でき、マナを流すと立体映像を流してくれる代物だ。
試作機は完成している。今、俺の目の前にはミッシーナ海の戦いが繰り広げられていた。
まだ、試作段階の為、拾える音声にムラがあり乱れているな、改善しなくては。
海岸での戦いは惨敗。海上では引き分けといったところか?
援軍に向かうべき第一から第四兵団がまだ海岸に到着していない為、上陸した敵兵達が北上を始めている。
気の早い奴等だな。海岸にはまだまだ船が上陸するようだが、それを待たずしての北上、何か急ぐ理由でもあるのだろうか?
ところで話は変わるが実は、俺は衛星を保有していたりする。
ぶっちゃけ、並みの人工衛星とは訳が違う代物だ。名を万能衛星アリシアといい、俺の神魂器の一つだったりする。
アリシアは修行中に出会った少女の魂から成るもので、今はペティ・シオンに居る。
ペティ・シオンってのは俺の創世した桃源郷のことな。実はペティ・シオン、今は擬人化を果たし2才位の女の子の姿をしているんだ。彼女も地母神だから擬人化は標準装備らしい。
ペティ・シオンは自らの世界で皆に可愛がられている。その中にアリシアも居る訳だ。だからあまり此方に呼びたくないんだよ。向こうで楽しくやってるからね。
万能衛星アリシア、正に万能な能力を持つ神魂器で、自らの子機を量産し、姿形を自在に操ることが出来、世界の情報を網羅できる。尋常ならざる計算能力を持ち、ピンポイント攻撃も極大攻撃も可能で、気象すら操り、俺が死なない限り死ぬことはない。ホント味方で良かったと心底思う。
彼女のエネルギー源は俺だが、実は宇宙から暗黒物質と暗黒エネルギーを取り込むことが可能で、それらを使って機械類限定であるが創造の真似事が出来るのだ。
主と神魂器は魂が半ば融合しているような物だから、彼女の力は俺にも使える。彼女以上には使いこなせないけど、テレビやカメラ位なら本体との接続が切れている状態でも創造可能なのだ。
暇を潰すに丁度良かったから作っただけなんだけどね。完成品には録画機能を付けようと思っている。
俺がテレビを見ていると、コツコツと足音が聞こえてきた。
またセフィーが来たのかな?あれからあの娘はちょくちょく遊びに来るんだ。
……違った、エナスだった。そういやぁ捕まってたなこの人。
「とっとと入れ!」
看守さんに無理やり牢屋に入れられているな。因みに俺の隣の牢だ。
看守さんはエナスを放り込むと、さっさと行ってしまった。
エナスは随分とみすぼらしくなったもんだな、最初にここに来た時とはえらい違いだ。
「よお、大丈夫か新入りぃ」
「だまれ小僧!くそっ、ヴァラカスの奴が裏切りさえしなければ今頃は帝国へ渡っていたものをお!」
怒り心頭といった感じで床を殴っているな。人望なさそうだからな、よく今まで騎士総長なんて務まったもんだ。
「おいおい、ここは寂しい所だぜ、話し相手になってやるから何があったか話してみろよ」
「黙れと言っている!貴様に話すことなどないわ!」
やれやれ、まぁ俺は何があったかテレビで見て知ってんだけどな。
「そう言わずに話してみろよ。気が晴れるかも知れないぞ」
「うるさい、だまれっ!」
ドンッと壁を殴る音がした。
「やれやれ」
少しからかってやろうかと思ったけど止めとくか。
それから暫くして再び誰かの足音が聞こえてきた。エナスに尋問でもするのかな?と思ったがこれも違った。今度はセフィーが俺に会いに来たらしい。
「フヅキさん、また来ちゃった。燿子ちゃんが会いたいって」
「それは嬉しいが、あまり姫さんが来るような場所じゃないぞ。と、まぁ言うんだろうけど、燿子をモフらせてくれ」
お~、よしよし。
「キュゥキュ」
いやぁ~、久しぶりの燿子は気持ち良いなぁ~可愛いなぁ~。
「ふふふ、燿子ちゃんは人気者ですね」
「ところで今日は姉ちゃんは居ないの?」
護衛なしで動き回るのは如何なものでしょう?
「燿子ちゃんがいるから大丈夫って言ってました。でも、他の人の前だと姿を消しちゃうんです。可愛いのに勿体ないよ」
「いやいや、燿子は九尾の狐だから見つかったら大騒ぎになるぞ」
「そうかなあ?可愛いは正義だと思う」
可愛いで争いが無くなるなら世の中平和だ。
「おい、貴様!プロセルピナ殿下に魔物を付けているのか!?」
エナスが話かけてきた。
「護衛にな。燿子はこう見えてSランクだからな、護衛には最適だろ?」
!!!
「なっ!Sランクだと!ふざけるな、そんな化け物を森から連れ出したのか!」
「燿子ちゃん、そんなに強かったんですか!?」
驚く二人に「そうだよ」と軽く返すと絶句していた。
そんなに驚くことないのにねぇ燿子。キュウ~。
「ふん、馬鹿な男だ。その化け物が殿下を傷つけるとは思わなかったのか!?」
「無いな、燿子はいい子だもんね~」
「エナス、燿子ちゃんはそんなことしませんよ」
「…………、お前達は分かっているのか?その化け物一匹にこの戦の命運が掛かっていることに!」
Sランクとは一体を倒すのに、名を馳せた英雄が複数人、国の兵を率いて挑む必要のある相手だ。それも命懸けで生き残れる保証はなく、下手をすればそれでも勝てない相手だとされている。故に天災級などと呼ばれている階級になる。
「悪いが、燿子を積極的に戦わせる気は一切無い。この娘は皆にモフられてる方がいい。正直この国よりも燿子の方が大事だからな」
「そうですよ!こんなにも可愛いのに、戦わせるなんてあり得ません!」
いやいや、それでも護衛で付けている訳だから、君がピンチの時には確りと戦ってもらうよ。だが、その時は俺も傍に行くからな。
「あれ?アレは何ですか?ミッシーナ海ですか?」
セフィーが牢の奥に付けっパにしてあるテレビの立体映像に気付いたようだ。消し忘れには気をつけましょう。
「アレは遠くの映像を映し出しているんだよ。この戦争をコイツで見ていたところだ」
「え、ここから海が見えるの?凄い!見せてもらえますか?」
「どうぞどうぞ」
俺はテレビ映像をセフィーに近付けると、わぁ~と歓声を上げ見入っていた。
「おい貴様!映像とは何だ、遠見の魔術か何かか!?」
「ん?魔術ではないな。コレは小型の魔道具を量産してばら撒き、その魔道具が写した映像を此方に転送してんだよ。まだ未完成品だけどなかなか便利だろ?」
正確には魔道具じゃなくて機械だけどな。ん?電波の代わりにマナを使ってるから魔道具であってんのか?
「な、……国宝級の魔道具じゃないか。貴様は事の重大さに気付いているのかっ!それ一つで相手の情報が筒抜けになるんだぞ!」
「大袈裟だなぁ。遠見のスキルや魔術があるんだから驚く程の事じゃないだろ?」
「馬鹿がっ!スキルの遠見は個人の実力にもよるがそれ程遠くは見れない。あのミネルヴァの加護でさえ何百㎞もは見通せないんだぞ!魔術は気取られる恐れが高く使い物にはならん。だが、魔道具は違う、魔道具には気配が無いからな」
そういうもんか?魔道具だってマナを使用して起動してんだから分かりそうだが。
「あ!そろそろ戻らなきゃ。お母様に見つかると心配させちゃうから」
「おっ、戻るのか?ほら、燿子を連れってってくれ」
俺は燿子を彼女に託し、ついでに暇つぶしの一環で作った指輪を手渡す。
「えっ?こ、これは?」
「これは強力な護符、アミュレットの様なものだよ。付けてるだけで邪を払ってくれる。だが、本領はそこじゃない。それは一度きりだが、想い人の所まで転移させてくれるものだ。心の中で会いたい人の姿と名前を強く思い描くと発動する。マナも必要としないから便利だぞ。只、一度きり、無暗に使うなよ」
機械ではないが、これ位なら作れる。
一見、何の変哲もない銀の指輪だが、その実ルーン文字とやらをこれでもかってくらい刻んである。
ルーン文字には一文字一文字に意味があり、文字その物に力が宿るという代物だ。
一文字刻むのも大変なんだがもう慣れた。
「わ、私で良いんですか?」
ん、私で?妙な言い方だな。
「ああ、君に渡そうと思っていたものだからね。持っててくれると嬉しい」
「わぁ、有難うございます!一生大切にしますね」
大袈裟な娘だな。でも、大事にしてくれるなら作ったかいあったかな。
セフィーは嬉しそうに指輪を左手の薬指に嵌めると、燿子を抱いて「また来ます」と言って駆けて行った。
元気があって宜しい。だが、嵌める指には気をつけましょう。
「く、くはははははっ!」
エナスの奴、急に何を笑ってんだ?気でも違えたか?
「お前は愉快な奴だな。まさか幼児趣味だったとは!それも一国の王女に、くくくっ」
何言ってんのコイツ、失礼なやっちゃな!
「誰が幼児趣味だ、誰がっ!」
「お前だ、お前!この国では異性から指輪を渡されるという事は、即婚約を意味する。貴様はプロセルピナ殿下に結婚を申し込んだことになるのだ。殿下もそれを受け入れた」
な、なんですと!そんなん知らんかったし!
「知らないでは通らんぞ。殿下が指輪を受け取った以上、婚約は受理された。お前はユピテル陛下に処刑されてもおかしくないな。だが、安心しろ、殿下が護って下さるだろう。くくく、はっはははっ!」
しまった。ネックレスかブレスレットにしときゃ良かった。まさかこんなにエナスの野郎に笑われるとは屈辱だ!




