古竜騎士団調査隊
私はミネルヴァ・ニケ・スリアンヴォス。
インペラートル王国が誇る女性だけで構成された飛翔騎士部隊、古竜騎士団の団長を務める者です。
逆に男性だけで構成された飛翔騎士団は飛翔する獣を操るグリフォン騎士団になります。
え、私の容姿ですか?至って普通だと思いますよ。
紅瞳の赤髪ボブショートヘア、背は170cmと女性としては少し高めかな?
スラっとした体形で力の割には筋肉が無く、女性らしい滑らかな線を描いています。
胸は大きくはありませんが形には自信があります。みせませんよ!因みに巨乳は敵です!もぎます!
無数に傷跡の残る赤い軽鎧を愛用し、武器は戦女神様から直接頂いた【神槍・女神の劾槍】と、情報収集用の神器【神鳥・グラウクス】です。
さて、先日突如として瘴気に襲われたこの首都インペラルは、至る所から被害報告が上がってきています。
瘴気そのものの被害ではなく、混乱した人々の暴走からなる被害ばかりです。混乱はいまだ収まらず情報が錯綜しています。
混乱した住民が我先に王城や神殿に押し寄せ順番の奪い合いが始まったのです。城には魔法師が、神殿には浄化の作用があるからです。
瘴気の恐怖から他者に暴力を振るうものが後を絶たず、多くのケガ人が出ました。その為、治療所までも混雑し治療の方もままならなかったそうです。
我らが国王ユピテル陛下は、直ちに緊急会議を開き対処にあたりました。
国内最速を誇る古竜騎士団に元凶たる森、あらゆる生物が生息すると言われる強狂怖大森林の調査を。
ヴィクトリア率いる近衛騎士団は城内での被害調査。
グリフォン騎士団には、ここ王都インペラルとその周辺の調査。
エナス・ダ・イボコミス騎士総長殿と残りの騎士達で今起きている問題の対処を。
結果、我々古竜騎士団が一番の貧乏くじを引く羽目になりました。
翌朝、まだお日様が完全に顔を出す前に調査のため強狂怖へ飛び立ちます。
ですが招集した部下達から、「あの森に行くのですか?」「え、大丈夫なんですか?」「正気ですか!」「勘弁してくださいよ~」などと不安やボヤキの声が上がるのは仕方のないことなのかもしれません。
強狂怖大森林は、この大陸を南北に両断する巨大過ぎるほど広大な大森林です。
その面積は1200万㎢を超えると言われています。実際に測った人はいませんので真偽は定かではありませんが、偉大なる大錬金術師の言によればそうなります。
この森の広さは、インペラートル王国と隣国であるコダユーリオン王国を合わせた国土の大凡20倍もの広さがあります。
そして何よりも、世界の魔物の種族全てが生息しているといわれています。
最弱のFランクから上位のA、上にS、SS、SSS、更に総てを超越する神話級のTランクまでも生息しているそうです。
そんな危険な魔物達を森の内部に封じ込めている結界が存在します。我々の任務はその結界に異常がないか調べることなのです。
広大で危険な森に部下達を連れて行かなければなりません。出来ることなら行かせたくはありません。しかしながら、国王陛下の勅命を受けた以上拒否することも出来ません。皆無事に帰還できることを祈るばかりです。
「ミネルヴァ様、全ての準備が整いました」
「分かりました。ご苦労様ですセシャト」
セシャトは古竜騎士団の副団長を務める16歳の女性です。
セミロングの蒼い髪、翠緑の瞳は大きく、肌は白く肌理細かく潤いを保ち滑らか。真面目で努力家、物静かな雰囲気な娘ですが、少し頑固なところもあります。
いざ戦ともなれば頼もしく、剣術や槍術よりも魔術を得意とし、その魔力操作の腕は騎士達の中でもトップクラスと言えるでしょう。
彼女ならいずれ魔法も習得出来ると私は思っています。
「ミネルヴァ様、人跡未踏の地です。何があるか分かりませんので、万全の準備で参りましょう」
「ええ、強狂怖は神話級の神獣も存在しているといいます。気を引き締めて行きましょう」
「はい!」
「いやー、まさかあの魔の森に行くことになるとは思ってなかったなぁ」
マァートです。
マァートは意思の強さを感じさせ榛榛色の瞳に、赤銅色のショートカットの髪型をした活発な女の子でセシャトの同僚。勝気で活発な性格に合う豪快な笑いが人気の娘です。
剣術と炎系魔術を得意とし、一発の破壊力は古竜騎士団の中でも随一のアタッカーです。
「マァートぉ~、回復はわたしに任せてねぇ~」
「おっ、おう。ルナはこんな時でも相変わらずのんびりした口調だな」
ルナはマァートの親友で可愛らしい娘です。
美しい銀のロングストレートの髪、金のつぶらな瞳で間延びした話し方をする女の子です。
エルフのように整った顔、スラリとした肢体、豊満な胸はもぎたくなりますね。
古竜騎士団のマスコット的な娘で、我が騎士団の癒しとなって皆に愛されています。実際に回復系魔術を得意とし、武器は弓矢で凄腕の名手です。後方支援のエキスパートですね。
「そもそも、森に行くならグリフォン騎士団が行けばいいのになっ!女に行かすか?普通さぁ」
マァートのボヤキにトモエが応えます。
「彼等には荷が重いと思いますよ。彼等はガサツですから調査には向かないと思われます」
男所帯ですからね。
「うんうん、そうだよねぇ~、ヴァラカス副団長なんて特にそうだよねぇ。いっつも怒ってるんだもん。目の敵にするのやめてほしいぃ~」
私はトモエとルナの苦情を聞き流し、サッサとテルピュネの背に跨ります。
今のテルピュネは普段と違い、皆の飛竜並みの大きさになっています。大体6m位ですかね。
「自分の事は棚に上げてぇ文句ばかりでさぁ~、イヤになるよねぇ」
「だよなぁ、奴等少し図に乗ってないか?」
「彼等は男尊女卑を地で行く未だ矮小な存在ですから」
「こらっ!マァートもルナもそんなこと言ってはいけません。トモエまで言うなんて。もし誰かに聞かれたらどうするのですか⁉」
セシャトが三人娘を窘めています。
トモエの話になりますが、少し訳ありの女性です。
その話はまた今度にしましょう。本人の了承が必要な話になりますからね。
彼女の容姿なら話せます。
お尻にまで届く黒く艶のあるストレート、黒い瞳、細身の長身美女です。胸は大きく(ムッ!)、サラシというもので巻いてコンパクトにしています。
黒を基調とした着物を好み、美しい帯で巻いています。
薙刀と魔術を得意とし、私を除けば唯一魔法を扱える団員になります。古竜騎士団No2の実力を持つ女性です。
「それに我々古竜騎士団は、他の騎士団と比べ精鋭揃いです。おの大森林に立ち入るには我らしかあり得ません!」
一般の騎士達はEランク~Dランクが一般。Cランクになれば一流、Bランクに至れば英雄扱いに。
ですが、古竜騎士団はCランクが殆どで、Bランクが三人、Aランクが私を含め二人います。
ミネルヴァ・ニケ・スリアンヴォス ランクA
トモエ・ナカハラ ランクA
セシャト、マァート、ルナ ランクB
「申し訳ありません。つい思ったことが口に出てしまいました」
「あっははは、そうそう。ついねっ!」
「はははっ、口に出ちゃったよぉ」
「はぁ~、貴女達は~」
ほっといても面白そうですが、
「さぁ、皆そろそろ行きますよ。飛竜に騎乗なさい」
そうもいきませんね。
私の指示に「は~い」と元気よく返事を返し、それぞれ己の愛竜の背に跨っていきます。
セシャトを置いてとっとと自身の騎竜に乗ってしまう三人娘。セシャトも「待ってよぉ~」と、慌てて騎乗しています。
セシャトの騎竜の名はキオナティ、マァートはアギオス、ルナはリェナ、トモエはピートゥリアと名付けられています。
「では、出発!」
「「「はっ!」」」
森の結界に竜が出入り出来るのは私達が触れているからです。この結界、人が触れている魔物は通過出来るのです。そうでなければ魔物という資源を持ち帰ることが出来ませんからね。
飛び立つ騎士を乗せた飛竜の群れが、登り始めた日の光を真横に受け、眩しそうに目を細める。総勢40名、何が待ち受けているのか?不安を胸に宿しつつ、彼の森へと飛行するのでした。
上空から見える強狂怖大森林は壮観の一言です。穏やかな風に揺らめく彩られた緑が地平の果てまで続いています。
地平の先に進めば微かに見える連鋭鋒。その中でも雲を肩に纏う一際高く鋭く聳え立つのが、竜種の住まう通称竜の巣です。
この連なる鋭鋒はこの広い森に東西に延び南北を両断する壁のようなものです。南北の行き来は容易には出来ません。
その先端は剣の切先のように鋭角でとても生き物が住める場所とは思えません。ですが、言い伝えによれば、竜の巣には神竜を頂点とした竜の系譜が住まう神聖な土地なのだそうです。
渡ろうとする者たちは竜の洗礼を受けることとなるでしょう。竜の許しがない者は決して渡ることの出来ない山脈だそうです。
森と山に遮られた大陸、名をムルサン大陸と言い、森より南は、インペラートル王国とコダユーリオン王国の二国存在しています。
この二国は、北に渡ることが出来ず南の海を渡ったヴァンチトーレ帝国との貿易に頼ったところがあります。その為、ヴァンチトーレ帝国には強く出ることが出来ず、我が国の王太子が使者として出向いています。帝国はかなり強引な取引を持ち掛けているそうですが、強く出れない我が国は要件を緩和させるためにも王太子を派遣しているのです。何事も無ければいいのですが。
強狂怖は見た目の美しさとは裏腹に、とても恐ろしい所です。中心に近付くに連れて魔物の危険度が増していくのです。竜の巣周辺には神獣のような神話級が存在し、外に向かって弱くなっていきます。
森の中心部分に神話級の魔物を、その外周に幻想級を、更にその外周に天災級をと徐々に危険度を落として封じ込めているのです。森の始まり付近ではFクラスの魔物しか出ないくらいです。
え?神話級や幻想級の違いが判らない?
仕方ありませんね。目的の地に着くまでの間に説明しておきましょう。
魔物の階級と種についてです。
【神話級】、ランクはTです。Tと言えば神話級のことです。
神話の怪物、又はそれに準ずる力を持った個体を指します。
曲がりなりにも神と渡り合える力の持ち主、或は神そのものとも言われています。その為か性格は穏やかなものが多いとか。
一度敵対してしまえば、人類に対抗手段は無く、襲われたなら神に祈ることしか出来ない存在。いえ、祈る暇さえ与えてくれない存在、それが神話級です。
バファムート、フェンリル、クラーケンやケロべロス等々神話の通りです。
神話から、ある程度の情報が知り得ますが、実際には極々稀な個体しか確認されていません。
【幻想級】、SS~SSSランクを指します。
神話級の影響を受けた者、眷属、或は劣化した分身体等。
神話級の影響を受けるだけの実力があり、人類が対抗するには一体に対し全英雄が手を組み、幾つもの国の兵を総動員し、それでも数か国の犠牲を覚悟して漸く勝てるか?とゆう実力の持ち主。
一撃で国が滅ぼされかねない存在で、数か国が滅ぶことを前提に戦う必要がある相手になります。
我々人類からしたら神話級も幻想級も大差ありませんが、幻想級には辛うじて勝つ可能性が残されています。
上位竜、巨人族、上位悪魔に上位鬼族、聖獣等といった正に幻想種。
人類に敵対するものでは在りませんが上位精霊もこの階級に入り、私のテルピュネも今は子供ですが力を付けたならばこの階級に属します。
【天災級】、Sクラス。
天災を引き起こす程の力を持ち、現れれば多大な被害がでます。
英雄の中でも上位の加護持ちが複数人犠牲の下に兵を動かし、倒せるかどうかといった実力を持つ者たちのことです。決して抗えない相手ではありませんが、出会いたくはない相手です。
中位の竜、悪魔、鬼、精霊といった低位の幻想級と思っても良いでしょう。
トモエの飛龍ピートゥリアがこの階級になります。
【厄災級】、B~Aランクの魔物。
英雄であっても複数人で挑むのが無難。ですが加護持ちの英雄なら単体で相手が可能。
英雄でなくても、多くの犠牲を前提に多人数の上位冒険者なら勝利が出来る相手。
低位悪魔、鬼、妖精族に低位の竜、不死者や魔獣等が存在します。
私やトモエ以外の竜騎士達の飛竜はこの階級になります。
【脅威級】、Ⅾ~Cランクの魔物。
人並みの知能の持ち主、数名の冒険者で対処出来ます。英雄なら一人で複数の相手が可能です。
人工生命体、通常種、魔獣、魔蟲や凡俗の枠を超えて力を持つ者達。
【凡俗級】、F~Eランク。
極々平凡な魔物、冒険者が主に相手をしている相手。
次は種族です。
【人口種】
人の怨念や強い想い、また、実験や魔術等で生み出された魔物です。
知能は低いものから高いものまで幅広く存在し、対処するには、先ず見極める必要があるでしょう。
キメラや悪霊、人工生命体、金属生命体、無機物生命体がいる。
【通常種】
小型の魔物で人より小さい者を言います。駆け出し冒険者の的。
スライム等の無形生命体、妖魔、小悪魔、小型の魔獣や魔蟲。
【魔獣種、魔蟲種】
獣、虫タイプの魔物。自然動物が魔力を得て魔物化した存在で最も数の多い種。
実力はピンからキリで駆け出し冒険者でも楽に倒せるものから、ベテランの英雄でも倒せないものまでいます。
【亜人】
人に似て人でないもの。
エルフ、ドワーフ、獣人などです。
【英雄】
ランクAに届いた人や亜人をいいます。
特に脅威級以上を討伐した者達への称号のようなものです。ランクでは推し量れない実力を持った者達の象徴となっています。
これ等はあくまでも目安ですけどね。いまだ解明されていないことも多々あります。
人類は太古の昔より極力魔物を刺激したいように強狂怖大森林の深部には踏み入れないようにしてきました。いざ、という時のために護りの力を磨いてもきました。しかし、それでも足りないと遥かな昔に老驥の錬金術師と呼ばれる大英雄が、世界中から魔法師を搔き集め大森林全域に強力な結界を張ったのです。それが【メルクリウス大結界】なのです。
この結界はありとあらゆる神を起源とした魔法を組み合わせた結界で、神話級と雖も、そう簡単には抜け出せない人類最高の結界となっています。
力の強い魔物程中心部から抜け出せず、力が弱くなるに連れ行動範囲が広がっていくのです。
結界のおかげで国家滅亡の危機は免れましたが、近年徐々にではありますが効果が弱まりつつあります。
そして、昨日の瘴気です。
可能性としては結界に綻びが生じているというものです。その調査のために派遣されたのが我々なのです。あの、怪物犇めく魔の森へ。
さあ、鬼が出るか蛇が出るか。もしくは両方でるかもしれませんね。
出来るだけ早く調査を終えたいものですね。




